今年度補正予算案 衆参審議入り 首相“コロナ禍の税金を還元”

新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案が20日、衆参両院で審議入りしました。所得税などの減税をめぐって野党側が「税収増の還元」という説明は根拠がなく誤りだと追及したのに対し、岸田総理大臣は「コロナ禍の際に納めた税金が戻ってくるという意味で還元そのものだ」と述べ、理解を求めました。

一般会計の総額が13兆1000億円余りとなる今年度の補正予算案は20日、衆参両院で審議入りし、鈴木財務大臣の財政演説と各党の代表質問が行われました。

衆議院本会議で自民党の西銘元復興大臣は「国民が実感できる賃上げ、物価上昇を上回る賃上げに全精力を集中させるべきだ。所得向上や経済の好循環を何が何でも実現するのだという強い決意を聞かせてほしい」とただしました。

これに対し岸田総理大臣は「賃上げは岸田政権の最重要課題であり、物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げが行われる経済を目指していく。賃上げ税制を中小企業が使いやすいよう拡充・強化するとともに、特に労務費の適切な転嫁の強化を強く働きかける観点から今月下旬に価格交渉に関する指針を公表し、全国的に周知・徹底を図っていく」と述べました。

立憲民主党の鎌田さゆり氏は、所得税などの定額減税について「岸田総理大臣は過去2年間の増収分を国民に還元すると表明したが、鈴木財務大臣は『すでに使っている』と答弁した。総理大臣と財務大臣で言っていることが違う。根拠がなく誤りだったと認め、訂正すべきだ」と追及しました。

これに対し岸田総理大臣は「国民から見ればコロナ禍の際に納めた税金が戻ってくるという意味で還元そのものだ。鈴木大臣は国の財政構造について説明したもので、全体を通して見れば、税金の一部を国民にお返ししている」と述べ、理解を求めました。

再来年の大阪・関西万博をめぐり、岸田総理大臣は「会場建設費のさらなる増額は想定していない。会場建設費の執行を厳格に管理・監督し、無用な国民負担を生じさせないよう不断の見直しに努めていく」と述べました。

また岸田総理大臣は、今の国会で3人の政務三役が相次いで交代したことについて「人事は常に適材適所であるよう心がけているところだが、結果として政務三役の辞任が続いたことは任命権者として責任を重く受け止めている」と述べました。

悪質なホストクラブを利用した女性が後から多額の料金を請求されるケースが相次いでいることについて岸田総理大臣は「関係省庁が緊密に連携し、違法行為を取り締まるほか、風俗営業法に基づく立ち入り指導や消費者契約法などの関係法令の周知と相談対応の強化など、対策をしっかり行っていく」と強調しました。

少子化対策の財源確保のため、政府が企業や国民から広く集める支援金をめぐり、岸田総理大臣は、現役世代の負担増への懸念を問われ「現役世代に負担を押しつけるものではなく、むしろ賃上げと歳出改革による実質的な国民負担の軽減と、児童手当などの政策の抜本的強化で子育て世帯の受益増をもたらし全世代型社会保障の構築にも資するものだ」と述べました。

このほか一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を運ぶ「ライドシェア」の導入をめぐり岸田総理大臣は「諸外国の先進的な事例や規制改革推進会議の有志から出された意見書も十二分に勘案しながら年内をめどに方向性を出し、できるものから速やかに実行していきたい」と述べました。

一方、質疑で公明党の赤羽前国土交通大臣は「『聞く力』を標ぼうしてスタートしたのだから、徹して国民の声に耳を傾け続けるべきだ。そして将来の日本の姿や国民の暮らしがどうなるか、その政策ビジョンを堂々と示し、この国の未来のために身命を賭して働く覚悟を今こそ示すべきだ」と指摘しました。

岸田首相「基金の見直し進める」

参議院本会議で岸田総理大臣は、各府省庁が積み立てている基金をめぐり「執行管理について透明性の確保や検証などをしっかり行うことが重要だ。行政事業レビューの結果を踏まえ、私が議長を務めるデジタル行財政改革会議や行政改革推進会議のもとで基金の点検や見直しを進めていく」と述べました。(維新・金子氏への答弁)

岸田首相「収支報告書の訂正は各団体が対応」

自民党の5つの派閥の政治団体が政治資金収支報告書にパーティー券収入を一部記載していなかったとして告発状が提出され、東京地検特捜部が任意の事情聴取を進めていることについて、岸田総理大臣は「一般論として申し上げれば、政治資金収支報告書の訂正があった場合にはまずは各政治団体がそれぞれの責任で原因を点検し、必要な対応を行うべきだと認識している」と述べました。(共産・岩渕氏への答弁)

岸田首相「万博開催には大きな意義」

再来年の大阪・関西万博について、岸田総理大臣は「会場建設費などの必要性について国民の理解が得られるよう丁寧な説明が重要で、コスト抑制に向けた不断の見直しを行っていく。わが国での万博開催には大きな意義があり、中止することは考えておらず、引き続き成功に向けてオールジャパンで着実に進めていく」と述べました。(共産・岩渕氏への答弁)