シファ病院から新生児31人を退避 WHOチーム「医療機能は停止」

イスラエル軍がイスラム組織ハマスの拠点があると主張して突入したガザ地区最大のシファ病院に、18日、WHO=世界保健機関などの専門家チームが入り、医療機能が停止して絶望的な状況だとしています。

一方、ガザ地区北部から多くの人々が退避する南部でも人道状況は悪化していて、事態は深刻さを増しています。

WHOチーム 1時間程度に限って視察

WHO=世界保健機関は、イスラエル軍がイスラム組織ハマスの拠点があると主張して突入したガザ地区最大のシファ病院を、18日、国連機関からなるチームが視察したと発表しました。

チームには、WHOやOCHA=国連人道問題調整事務所などから公衆衛生の専門家や人道支援や安全保障を担当する職員らが参加し、イスラエル軍とルートを調整し、1時間程度に限って視察が行われたということです。

視察では明らかな爆撃や銃撃の痕が確認できたほか、病院の入り口に墓地もあり、80人以上が埋葬されているとの説明を受けたということです。

病院機能停止 感染症のリスク高まる 症状悪化の患者も

病院は、水や燃料、医薬品の不足で医療機関としての機能が失われ、敷地内は医療廃棄物などで埋め尽くされ、感染症のリスクも高まっていると指摘しています。

また視察した時点で、病院内には医療従事者25人と患者291人が残され、ここ数日のうちでも複数の死者が出ているということで、患者の中には危篤状態にある乳幼児32人や、十分な治療が受けられない22人の透析患者などもいたということです。

さらに病院には、戦闘に巻き込まれて骨折したりやけどを負ったりした患者が多くいますが、病院内の衛生対策が不十分で、抗生物質も手に入らないため、症状がひどくなっているということです。

WHO「病院は『死に満ちた場所』で絶望的」

このためWHOは「病院は『死に満ちた場所』で絶望的な状況にある」として、患者らをすぐにほかの施設に避難させるよう訴えています。

ただWHOは、ガザ地区のいずれの病院もすでに受け入れ能力を超えていると懸念を示していて、医療施設への攻撃をやめて即時停戦に応じるよう求めています。

新生児31人を南部ラファの病院に搬送

パレスチナ赤新月社は19日、イスラエル軍がハマスの重要な拠点があると主張して突入したガザ地区北部にあるシファ病院から、低体重などで生まれた新生児31人を退避させたと発表しました。

それによりますと、WHO=世界保健機関やOCHA=国連人道問題調整事務所との連携のもとで行われ、新生児31人は救急車で南部に向かい、ラファにある病院に移送されるということです。

南部でも人道状況悪化が深刻

一方、イスラエル軍が北部の住民に対し南部に退避するよう通告するなか、ハマスの政治部門の幹部は18日、レバノンの首都ベイルートで記者会見し、「現時点でイスラエル軍に殺害された4割以上の人が、南部にいた市民だ」として、イスラエル軍は南部でも市民に対する無差別な攻撃を続けていると非難しました。

南部のラファでは深刻な食料不足が課題となっていて、NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが16日、ラファ市内で撮影した映像では、食料品店の前で多くの人が列をなして開店を待っている様子が映っています。

戦闘の中心となっている北部に加えて、多くの人が退避先として身を寄せている南部でも人道状況が悪化していて、事態は深刻さを増しています。