イスラエル軍 ガザ地区の南部でも攻撃強化する可能性示す

パレスチナのガザ地区への地上侵攻を進めるイスラエル軍は、イスラム組織ハマスの重要な拠点があると主張して突入したガザ地区最大の病院での作戦を続ける考えを示しました。イスラエル軍は、多くの住民が退避しているガザ地区の南部でも攻撃を強化する可能性を示していて、市民への一層の被害の拡大が懸念されます。

ガザ地区北部で地上侵攻を進めているイスラエル軍の報道官は17日、重要な拠点があると主張して突入したガザ地区最大のシファ病院について「地下にあるインフラ施設を探し出すため、シファ病院での作戦を続ける」と述べ、引き続き、地下にあると主張する拠点の捜索などを行う考えを示しました。

一方、ハマスは病院は軍事的な拠点ではないなどと繰り返し否定しています。

シファ病院をめぐって中東の衛星テレビ局アルジャジーラは18日、病院内に残る関係者の話としてイスラエル軍が病院にいる患者や医療従事者、それに避難している人たちに対して退避するよう命じたなどと伝えました。

これについてイスラエル軍は退避は命じてはおらず、病院側の求めに応じてシファ病院からの退避を支援しているなどとしています。

一方、今後の軍事作戦についてイスラエル軍の報道官は17日、「われわれはハマスが存在する場所にはガザ地区の南部であっても到達するだろう。それは、軍にとって最善の時間と場所、条件で行われるだろう」と述べ、ガザ地区の南部でも攻撃を強化する可能性を示しました。

イスラエル軍はガザ地区北部の住民に対して、南部に退避するよう繰り返し迫っていましたが、その南部でも空爆を繰り返しています。

ガザ地区の当局は南部のハンユニスでイスラエル軍が集合住宅を空爆し26人が死亡したと18日、明らかにしていて、市民への一層の被害の拡大が懸念されます。

専門家「軍が展開すれば悲惨な状況になるのは明らか」

イスラエル軍がガザ地区最大のシファ病院で進めている作戦について、イスラエル・パレスチナ情勢に詳しい東京大学中東地域研究センターの鈴木啓之特任准教授は、「ガザ地区全体に対して『イスラム組織ハマスに関連していれば、民間施設でも攻撃対象にする』という圧力をかけるものだ。これは実際は住民に対する集団懲罰のような行動だ」と指摘しました。

また、「イスラエル軍は必死にハマスの痕跡を探しているが、実際にシファ病院の地下に司令部があるかどうかは、イスラエル軍の行動に大きな影響はないと言える」としたうえで、「軍事行動がほかの病院や学校施設、場合によっては国連の施設に広がっていく可能性がある」という見方を示しました。

今後の地上侵攻の展開については、「イスラエル側は、国内世論が強く求める人質の解放が実現しない以上、ガザ地区の南部、特に人口が密集するハンユニスなどで軍事行動を継続するだろう」としたうえで、「南部には北部から退避した住民を含め多くの人がいる中、食料や水が不足しており、軍が展開すれば悲惨な状況になるのは明らかだ」と懸念を示しました。

一方、イスラエル側が1日2台、燃料を積んだトラックのガザ地区への搬入を認めることを決定したことについて、鈴木特任准教授は「人質解放の交渉の材料とするにはあまりに少なく、国際世論への配慮を示しているというあくまで象徴的な意味だと捉えられる」としています。