地下鉄サリン事件で不調訴える人の健康診断 ことしで終了に

1995年に起きた地下鉄サリン事件の影響で今も体や心の不調を訴える人たちを対象に毎年続けてきた無料の健康診断がことしで終了することになり、東京 渋谷区の会場には20年余り通い続けた人たちが最後の問診を受けました。

1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件では、14人が死亡し、およそ6300人が被害を受け、28年たった今も体や心の不調を訴える人がいます。被害者たちの支援を続けているNPO法人「リカバリー・サポート・センター」は、事件発生直後から毎年、無料の健康診断を行ってきましたが、近年は被害者の症状が安定して診断を受ける人数が減少したことなどからことしで終了することを決めました。

最後の健康診断は、東京 渋谷区の会場で18日と19日の2日間行われ、通い続けてきた人たちやその家族などが訪れ、看護師の問診などを受けていました。

NPO法人によりますと、今の形での健康診断が始まった2001年以降去年までの22年間に、延べ2330人に診察を行ってきたということです。

最後の健康診断は、東京・渋谷区の会場で19日までの2日間行われていて、今後は、診察を望む人たちに病院の紹介などを引き続き行い、支援を続けていく方針です。

信者の家族でつくる「オウム真理教家族の会」の代表として信者の脱会を支援し、みずからも猛毒のVXをかけられ一時意識不明になった永岡弘行さん(85)は「サリンなどの影響を分かっている医師や看護師に診ていただいて、『ちょっとおかしいぞ』と気付いてもらえるすばらしい場で、なくなることは残念ですが感謝しかありません」と話していました。

また、霞ケ関駅の構内で被害にあった50代の男性は「身体的なことだけでなく、心のよりどころでもありました。検診は終わってしまいますが、引き続き支援活動を行ってもらいたい」と話していました。

NPO法人「リカバリー・サポート・センター」の木村晋介理事長は「被害者の方のケアや相談を受ける体制は維持して、皆さんに不安をかけないようしていきたい」と話していました。

「リカバリー・サポート・センター」とは

「リカバリー・サポート・センター」は、1995年3月に起きた地下鉄サリン事件の被害に遭った人たちの心や体のケアをするために医師や弁護士などが立ち上げた支援団体で、2002年にはNPO法人としての認証を受けました。

事件直後から毎年健康診断を行い、2001年以降は東京 渋谷区と足立区、埼玉県越谷市の3つの会場で今と同じ形で行っています。

去年までの22年間で、延べ2300人余りの診断にあたり、サリンの後遺症に苦しむ人たちを体の面だけでなく精神面でも支えてきました。

事件を風化させないため、被害者が若い世代に語り継ぐ活動を続けているほか、事件の概要や被害者の声を伝える特設サイトを団体のホームページに設けています。

健康診断はことしで終わりますが、事務局機能は維持され、引き続き被害者の健康面でのケアを行うとしています。