岸田首相 日韓両国で水素やアンモニア供給網の創設の考え示す

アメリカを訪れている岸田総理大臣は、現地の大学で韓国のユン・ソンニョル大統領と共に討論会に臨み、脱炭素化に向け、両国が連携して水素やアンモニアの供給網を創設する考えを示しました。

岸田総理大臣は日本時間の18日朝、スタンフォード大学を訪れ、韓国のユン・ソンニョル大統領とともにスタートアップ企業との対話に参加したあと、先端技術がテーマの討論会に臨みました。

この中で岸田総理大臣は日韓関係について「ことし初めまで日韓関係は厳しい状況だったが、ユン大統領と私でシャトル外交を再開する決断をした。われわれトップどうしの決断が日韓関係を大きく変化させた」と強調しました。

そして脱炭素化をめぐり「日韓両国には、電力、輸送、産業などの幅広い分野で、水素やアンモニアの利活用を推進していく大きな可能性がある。日韓が中心となり『水素・アンモニア・グローバルバリューチェーン』の構築を提唱したい」と述べ、両国で水素やアンモニアの供給網を創設して、調達力を強化する考えを示しました。

また日米韓3か国が連携して、半導体分野のサプライチェーンを構築していく考えを示しました。

このほか、量子技術をめぐり日韓両国の国立研究所どうしが協力に向けた覚え書きを結ぶことや、東京大学、ソウル大学、シカゴ大学の連携強化で合意したことを明らかにしました。

ユン大統領 “日米韓がAIやデジタル規範で主導を”

韓国のユン・ソンニョル大統領は討論会の中で、アメリカを含む3か国で協力すべき科学技術分野の課題として▼AIやデジタルを活用する上での規範づくり、▼量子技術など先端技術の共同研究、▼クリーンエネルギーの技術協力を挙げました。

このうち、AIやデジタルについてユン大統領は「生成AIによって私たちの暮らしがますます便利になっている一方で、フェイクニュースの増加で民主主義や自由が脅かされているほか、深刻なデジタル格差によって人間の尊厳が損なわれるのではないかという懸念が高まっている」と指摘しました。

その上で、日米韓がAIやデジタルの規範をめぐる国際的な議論を主導していくと強調しました。

また、ユン大統領は、量子技術について、安全保障で最も重要な技術だとした上で「安全保障で重要な技術は同盟国や価値を共有する国以外の国と共有するのは現実的に非常に難しい。われわれとアメリカ、日本の3か国の研究者たちが持つそれぞれの強みが互いにどう役立つか確認できるよう政府が支援すべきだ」と述べました。

日米韓の連携強化に抗議する集会も

日韓の首脳による討論会が行われた会場の外では、日本、アメリカ、韓国の3か国が安全保障面での連携を強化していることに抗議する集会が開かれました。

集会には、スタンフォード大学に通うアジア系の学生などおよそ50人が参加しました。

日米韓の3か国は、ことし8月、ワシントン郊外にある大統領専用の山荘キャンプ・デービッドで行われた首脳会談をきっかけに、核・ミサイル開発を進める北朝鮮や、海洋進出を強める中国を念頭に安全保障面での連携を強化しています。

集まった学生たちは、こうした連携が中国や北朝鮮などの反発を招き、地域の緊張を高めていると批判しました。

その上で岸田総理大臣やユン・ソンニョル大統領に対して「平和憲法を守れ」とか「アメリカ軍に基地の使用を認めるな」などとシュプレヒコールをあげていました。

主催者の1人は「アメリカ、日本、韓国による軍事演習や軍事面での協力がかえって地域の平和を脅かしている」と話していました。