グミで体調不良 製造会社「遺憾」麻薬取締部 販売店に立ち入り

大阪の会社が製造したグミを食べた人が体調不良を訴えるケースが東京や大阪で相次いでいることを受けて会社が記者会見を開き、グミには法律で規制されていない大麻に近い成分が含まれているとしたうえで「会社のホームページでは未成年者などの使用は控えるよう注意書きをしている。このようなことが起きたのは遺憾だ」と述べました。

一方、厚生労働省の麻薬取締部はこれらのグミに法律で規制された指定薬物と同じような毒性がある疑いがあるとして、東京や大阪の販売店などを立ち入り検査しました。

東京や大阪で同じグミ食べた人の搬送相次ぐ

東京や大阪では、ことしに入ってから大阪の会社が製造している同じグミを食べた人が病院に搬送されるなど体調不良を訴えるケースが相次いでいて、警視庁や大阪府警によりますと、これまでにあわせて20数人に上っています。

グミの袋には「HHCH」と、法律で規制されていない大麻に近い成分の名前が書かれていて、警視庁などが鑑定を進めています。

グミの製造会社「このようなこと起き遺憾」

これを受けて、グミを製造した会社が17日、大阪市内で記者会見を開き、販売の経緯などを説明しました。会社によりますと、グミは気分の向上やリラックス効果などを目的にことし4月から製造を始め、インターネットや一部の店舗で販売しているということです。

グミには「HHCH」という成分が含まれていて、会社は厚生労働省の許可を得て輸入している業者から、仕入れたものだと説明しています。販売する際は、20歳以上であることを確認しているということです。

一方、会社にはグミを食べた人が気分が悪くなり、おう吐するなどの報告がことし4月以降、あわせて10件前後寄せられているということです。

会見で、松本大輔 代表取締役は「会社のホームページでは未成年者などの使用は控えるよう注意書きをしている。それにもかかわらずこのようなことが起きたのは遺憾だ」と述べました。そのうえで「今回、未成年者に配布されるなどしたことは許される行為ではなく、業界全体で注意していきたい」と話していました。

武見厚生労働大臣が、成分が特定されれば類似するものも含めて、指定薬物として流通させることや所持することを禁止する方向で検討する考えを示したことについては「愚策だと思う。規制すればするほど新しい成分が開発されるので、私としては反対だ」と述べました。

グミの販売店に立ち入り検査 厚労省麻薬取締部

厚生労働省の麻薬取締部はこれらのグミに法律で規制された指定薬物と同じような毒性がある疑いがあるとして、17日に東京や大阪の販売店などを立ち入り検査しました。

立ち入り検査を受けたのは▽グミを製造した会社「WWE」が運営する大阪・中央区西心斎橋の販売店や▽東京・豊島区東池袋にある販売店などです。

その結果、東京・渋谷区にある店舗から法律で規制された指定薬物と同じような毒性があるとみられるグミが見つかったことがわかりました。

このため麻薬取締部は医薬品医療機器法に基づき、幻覚などの健康被害を引き起こす成分がグミに含まれていないかどうかの検査結果が出るまでの間は販売を停止するようこの店舗に命令を出したということです。

大阪では十数人が救急搬送

大阪府内ではことしに入ってから病院に搬送された人があわせて十数人に上っていることが警察への取材で分かりました。

このうち大阪市では、9月に20代の男性4人がグミを食べたあとおう吐や体の震えなどの症状を訴えて救急搬送されたということです。

警察が過去のケースをさらに調べたところ、大阪府内ではことしに入ってからほかにも体調不良を訴えた人がいて、病院に搬送されたのはあわせて十数人に上っていることが分かりました。

大阪の会社が製造したグミの袋には「HHCH」と、法律で規制されていない大麻に近い成分の名前が書かれているということで、警察は鑑定を進めています。

都内では新たに2人が病院に搬送

都内では新たに2人が病院に搬送されていたことが警視庁への取材でわかりました。鑑定の結果、法律で規制されていない大麻に近い成分の「HHCH」とみられる化合物が含まれていることが確認されたということです。

先月7日、東京・新橋のレンタルスペースで開かれた男女10人余りが参加していたパーティーで、グミを食べた20代と30代の男性2人が体調不良を訴えて病院に搬送されました。

警視庁によりますと、2人が食べたのは、体調不良を訴えるケースが相次いでいる、大阪の会社が製造したグミと同じものだったということです。

警視庁が残っていたグミの成分を鑑定したところ、法律で規制されていない大麻に近い成分「HHCH」=ヘキサヒドロカンナビヘキソールとみられる化合物が含まれていることが確認されたということです。

警視庁によりますと、これで都内で同じグミを食べて体調不良を訴えた人は、少なくとも14人に上っています。

グミを定期的に食べている男性「多幸感得られる」

大阪の会社が製造したグミを定期的に食べているという兵庫県の20代の男性が取材に応じ、多幸感や酒に酔ったような感覚が得られるなどと話しました。

男性は、3、4か月前から店舗やインターネットでグミを購入するようになり、1回あたり1粒の半分にあたる量を食べているということです。

男性は「食べると多幸感や酒に酔ったような感覚が得られます。私はおう吐など体調が悪くなったことはなく、用量さえ守ればそこまで危なくはないのではないかと個人的には思っています」と話しています。

そのうえで「今後、グミに含まれる成分が規制されたとしても、新しい成分が出てくるのでいたちごっこの状態が続くと思います」と話していました。

問題のグミとは

食べたあとに体調不良を訴える人が相次いでいるグミは、大阪の会社が製造しています。

ホームページによりますと、価格は10粒7000円で法律で規制されていない大麻に近い成分の「HHCH」=ヘキサヒドロカンナビヘキソールが1粒あたり30ミリグラム含まれているとされています。

大阪の製造会社 店内に並べられたグミ

そのうえで、▽20歳未満の摂取は控えるとか、▽体に異常があった場合は使用を中止して医師に相談するといった注意書きが記載されています。

このグミは▽大麻草の「成熟した茎や種子」から抽出・製造されたCBD製品の一部の販売店や▽インターネットのサイトなどで売られているということです。

都内の販売店の関係者は「外国人や海外で大麻を経験した日本人が大麻に近い成分を求めて買う人が多い」とか「20代から50代まで幅広い世代が買っていく。ほかの大麻由来の成分よりも刺激を求める人が買っている印象がある」と話していました。

成分を独自分析 大麻から抽出される成分と構造近いもの含まれる

今回、NHKは大阪の会社が製造したグミについて、大麻関連の成分に詳しい昭和大学の佐藤均教授に依頼して、成分の分析を行いました。

その結果、このグミには大麻から抽出されるTHC=テトラヒドロカンナビノールという成分と構造の近い成分が含まれていることが分かりました。

会社のホームページではTHCに近い成分で、法律で規制されていない「HHCH」=ヘキサヒドロカンナビヘキソールが1粒あたり30ミリグラム含まれているとされていますが、今回の分析結果でも、ホームページの記載と相違はないとみられるということです。

佐藤教授によりますと、1粒あたり30ミリグラムHHCHが含まれていた場合、摂取した人によっては1粒食べると吐き気やめまいなどの症状が出るおそれがあるということです。

佐藤教授は「HHCHは法律で規制されているTHCよりも人体の受容体に影響を及ぼしやすいため、その分、影響が大きいおそれがある」と話していました。

大麻に関連する成分では、HHCHのようにTHCと構造の似ている化合物は無数に存在し、規制のたびに別の物質が市場に流通するため、1つ1つの影響を特定した上での規制が追いついていないのが現状だということです。

佐藤教授は「構造が少し違うだけで、摂取した場合の効果についてはより危険なものもあり、安易にそういった商品に触れないことが重要だ」と話していました。

専門家「グミという形での販売 非常に危険」

違法薬物などに詳しい滋慶医療科学大学の木村文隆教授は「グミという形で販売されることで、子どもなど大麻に近い成分を意図的に摂取しようとする人以外にも広く行き渡る可能性があり、非常に危険だ」と指摘しています。

そのうえで「若い人が大麻やそれに近い成分を摂取すると1回だけでも脳の形が変わってしまうことが知られており、大きな影響がある。規制されている成分と作用が類似している成分については包括的に禁止することも含め、早急に対策を取るべきだ」と話していました。

《大阪の製造会社の会見 主な質疑内容》

グミを製造した会社が17日、大阪市内で開いた会見の主な質疑の内容です。

Q.今回の受け止めは?
A.会社のホームページでは未成年者の使用や他人への譲渡、2次配布を控えるよう注意書きをしている。それにもかかわらずこのようなことが起きたのは遺憾だ。今回、未成年者に配布されたことは許される行為ではない。
商品サイトでも注意事項を記載しているので、われわれとしては用法用量を守って使ってくださいとしか言えない。酒などを飲んで救急搬送されてもメーカーに責任はないと思う。今回は使用したユーザーの責任というか、配った人が原因なので、業界全体で注意喚起していく。

Q.販売されているグミを食べると、どのような作用があるのか?
A.リラックス、高揚感、睡眠改善、ストレス改善の効果があり、顧客には喜ばれている。

Q.大麻に近い成分はどのように入手している?
A.厚生労働省の許可を得て輸入している業者から、仕入れている。

Q.販売の実績は?
A.オンラインと卸の販売を行っている。実績は把握していないが、卸し先は50~60店舗ある。オンラインで購入する場合には、20歳以上かを確認するポップアップが表示されるので、クリックする必要がある。店舗で販売する場合は、本人であることを証明するものの提示を求めている。

Q.健康被害についての受け止めは?
A.健康被害は疾病が出ることを指すので、現時点では健康被害は出ていないと認識している。

Q.これまでに体調不良となったケースを把握しているか?
A.現在把握しているのは、4月に販売開始してからのおよそ7か月間で10件前後、数か月に1~2件。もどしてしまうというケース。私はもどしたことがないので詳しくは分からないが、一時的なものだと考えている。

Q.危険性は認識していたか?
A.半年前から自分たちも摂取しているが、今のところ人体への影響はない。商品化前には耐性のあるスタッフが体感し、問題ないとして販売している。何事も摂取のしすぎは人体に影響が出るので、用法容量を守って摂取してほしい。

Q.厚生労働大臣が、成分が特定されれば類似するものも含めて、指定薬物として流通させることや所持することを禁止する方向で検討するとしているが?
A.愚策だと思う。規制すればするほど新しい成分が開発されるので、私としては反対。

Q.仮に規制された場合はどうする?
A.ほかの成分に切り替え、自分たちで体感をチェックして商品を販売する。

Q.今後の対応は?
A.合法の成分なので継続して販売する。注意喚起はこれまで以上に行って気をつけていこうと思う。20歳未満の人などへの販売は禁止する。

規制対象の大麻成分含まれた食品 押収量過去最多

規制されている大麻の成分が含まれたグミやクッキー、キャンディーなどの「大麻食品」の押収量は近年、増加しています。

警察庁によりますと、全国の警察が押収した規制対象の大麻の成分が含まれた食品はことし、先月末までに4キロに上り、去年の同じ時期に比べて1.2キロ増え統計を取り始めたおととし以降、最も多くなっています。

捜査関係者によりますと、「大麻食品」は大麻草に比べて罪悪感を感じずに手に取りやすいと考える人がいるほか、大麻の成分がどのくらい含まれているかわかりづらく、体調不良を起こして搬送される事案が起きているということです。