“憧れるのはやめましょう” 大谷翔平 ことばで振り返る2023年

WBC優勝に始まり、日本選手初のホームラン王獲得、そして2回目のシーズンMVPと今シーズンも次々と歴史を塗り替える活躍を見せた大谷選手。

2023年の歩みを印象的だったことばとともに振り返ります。

2月 “去年よりもさらにいい”

キャンプ初日(2月15日撮影)

大リーグ6年目を迎えた大谷選手はアリゾナ州のキャンプ地で行ったシーズン最初の会見で自身の状態を聞かれ「去年よりもさらにいいし、今までの中でも今のところ、いちばんいいかなと思う」と自信を見せました。

今シーズンからバットのメーカーを変更し、素材をより反発の強い固い木材にした上で、およそ2.5センチ長くしました。

一般的にはバットが長くなるとボールをより強く打つことができる代わりに操作が難しくなると言われますが、大谷選手は「より自分が振りやすいように変化させた」と変更の意図を説明しました。

結果的に今シーズンは打球の速度も飛距離も向上し、ホームランの平均飛距離は128.5メートルで大リーグトップ。

新しいバットを見事に使いこなして見せました。

3月 “ 憧れるのはやめましょう”

WBC決勝(3月21日撮影)

今なお記憶に新しいWBCでの大活躍。

投打の活躍で大会MVPを受賞し、日本を3大会ぶりの優勝に導きました。

決勝のアメリカ戦の前にチームメートに語りかけた「憧れるのはやめましょう」は今大会を象徴することばになりましたが、優勝後の会見では「最高の形で終わることができた。間違いなく今までの中でベストの瞬間だと思う」と喜びをかみしめました。

4月 “スイーパーを同じように投げるピッチャーは見たことない”

今シーズン初勝利(4月5日撮影)

迎えた大リーグのレギュラーシーズン。

開幕直後はピッチャーとしての活躍が目立ちましたが、それを支えたのが、スイーパーと呼ばれる変化球でした。

スイーパーはスライダーの1種で、横に滑るように大きく曲がることから名付けられ、特に大谷選手のスイーパーはホームベースの端から端まで曲がるほどの“魔球”でした。

大谷選手は「僕が投げているスイーパーを同じように投げるピッチャーは(打席で)あまり見たことがない。『恐らくこういうスイーパーが打てないんじゃないかな』というものは持っていて、そこにアプローチしながら投げている」と表現し、二刀流ならではの視点で魔球を完成させた経緯を明かしました。

6月 “逆方向に勝手に行っている感じがいちばんいい”

23号ソロホームランで大リーグ通算150号達成(6月17日撮影)

地区首位を走るレンジャーズとの4連戦でホームラン4本を打ち、ホームラン数でリーグ単独トップに立ちます。

月間ホームラン15本と打ちまくった絶好調のバッティングについて「構えの段階で見え方がいいし、なるべくしてなっている。(打球が)逆方向に勝手に行っている感じなので、それがいちばんいいんじゃないか」と手応えを話し、2年ぶりに月間MVPを受賞しました。

7月 “最後までこのチームでプレーオフを目指したい”

完封勝利で9勝目(7月27日撮影)

7月に入ってもバッティングの勢いは衰えず、2か月連続で月間MVPを受賞。

しかし、この時期、エンジェルスは大黒柱のトラウト選手の骨折などことしもけが人が相次ぎました。

大谷選手自身も右手中指の爪が割れた影響で思うようなピッチングができない試合が続き、「指先というのは繊細で、最後の指の引っかかりですべてが台なしになってしまうのがピッチャー。やっぱり負けが込んでくると、人間誰しもそういう感情(フラストレーション)は出るんじゃないかと思う」と苦しい胸の内を話す場面もありました。

それでも「最後までこのチームでプレーオフを目指して、またその先を目指して頑張りたい」と前を向き、チームリーダーとしての決意も見せていました。

8月 “行ける時は全部もちろん行く”

10勝目で「ふた桁勝利ふた桁ホームラン」達成(8月9日撮影)

8月に入ると指のけいれんなど疲労から来る体の異変が見られるようになりますが、大谷選手は「まだまだ十分に(プレーオフを)狙えるポジションだし、本当に1試合1試合がそういうゲームに匹敵するくらい大事な試合。みんな、いっぱいいっぱいの状態でプレーしているし、休むような試合はもう本当にないと思う」と試合に出続ける道を選びました。

最後に試合後の囲み取材に応じたのは投打で出場し、10勝目をあげた8月9日。

報道陣からフォアボールで出塁した後、後続のライトフライで二塁にタッチアップした場面で「体の状態を考えるとためらいはなかったのか?」と聞かれ、「(二塁に)行けるか行けないかのちゅうちょはあったが、行ける時は全部もちろん行くというのはどのランナーも一緒」とまっすぐな目で答えました。

その後、その次の登板となった8月23日の試合で右ひじの異変を訴え、ピッチャーとしてのシーズンを終えました。

右ひじのじん帯を損傷後わき腹を痛め 終盤の25試合を欠場

(9月16日撮影)

右ひじのじん帯を損傷した後も指名打者として出場を続けた大谷選手でしたが、9月にはわき腹を痛めてバッターとしても結果的にシーズン終盤の25試合を欠場しました。

それでも日々出場出来るか模索を続け、9月11日のマリナーズ戦ではいったん先発メンバーに名を連ねたものの、スイングした際に痛みがあるとして試合直前にメンバーから外れました。

そして、その8日後に自身2回目となる右ひじの手術を受け、激動のシーズンを終えました。