ボージョレ・ヌーボー きょう解禁 円安でも去年より価格お得に

フランス産のワインの新酒、ボージョレ・ヌーボーの販売が16日解禁されました。

新型コロナの影響などで上昇していた運送コストが削減され、販売価格を去年より3割ほど引き下げた店もあります。

そもそもボージョレ・ヌーボーってどんなワインなのか。
その歴史や注目される理由についてもまとめました。

完熟したぶどうの濃厚な味わいが特徴

東京・銀座にあるワインの販売店では、16日午前0時のボージョレ・ヌーボーの販売解禁に向けてカウントダウンの催しが行われ、集まった愛好家たちおよそ30人が解禁されたばかりのワインの味を楽しみました。

会場にはフランスの生産者も訪れ、ことしは天候に恵まれたことから、完熟したぶどうの濃厚な味わいが特徴だと説明していました。

販売価格は3割引き下げ

この店では、750ミリリットル入りの主力商品の税抜きの販売価格が
▽去年は5000円でしたが、
▽ことしは3580円とおよそ3割引き下げました。

新型コロナの影響などで減っていた輸送に使う旅客機の運航数が去年より増えたことなどにより、輸送コストを削減できたことが主な理由ですが、おととしと比べると円安などの影響で販売価格は200円高くなっています。

催しに参加した50代の女性は「毎年飲んでいますが、特にことしはおいしいです。ワインが大好きな友達を呼んで一緒に楽しみます」と話していました。

大手デパート高島屋の横浜市内の店舗ではボージョレ・ヌーボーの専門コーナーを設け、去年と比べ
▽店頭に並ぶ商品の種類を2倍に増やしたほか、
▽在庫の本数を15%ほど増やしたということです。

また、価格は、去年はロシアによるウクライナ侵攻の影響で空輸による輸送費が上昇し、大幅な値上げとなりましたが、ことしは輸送費が落ち着いたことなどを受け、店頭での販売価格は去年より平均でおよそ6%値下げしているということです。

高島屋横浜店 斎藤謙司さん
「コロナ禍が明けて、パーティー需要も増える中、今回の新酒をたくさんのお客様に楽しんでいただけることを期待しています」

ことしのボージョレ・ヌーボーをめぐっては、大手の輸入元のサントリーや、流通大手のイオンも、去年より仕入れの量を増やし、販売価格については、航空貨物の輸送の枠が回復し空輸のコストが下がったとして、いずれも、去年よりやや値下げしています。

それでも円安などで、輸入コストが全般に高止まりしている影響などから、各社ともおととしに比べると、依然、割高な水準だということです。

ワイン輸入メーカーは円安が懸念

海外から日本に輸入されるワインは、外国為替市場で円安が進むと仕入れ値が上昇するため、価格は値上がりする傾向にあります。

円相場は、ドルだけでなくこのところユーロに対しても大きく下落していて、今月15日には、一時、1ユーロ=164円台と、およそ15年ぶりの円安水準を更新しています。

こうした状況に原材料価格の高騰が重なり、ヨーロッパからワインを輸入している日本の事業者からはその影響を懸念する声も出ています。このうち、フランスなど海外のワイナリーと契約し、広く仕入れを行っているワインメーカーのメルシャンは、去年から3回にわたって一部の商品の販売価格を引き上げてきました。

このメーカーのヨーロッパ事務所長、西村和久さんは今月、ワインの産地、ブルゴーニュ地方を訪れ、現地の老舗ワイナリーとことしのぶどうの出来栄えなどについて意見交換を行いましたが、最近の急速な円安の影響は企業の自助努力だけでは吸収できないと頭を悩ませています。

西村さん
「多くのワインを輸入していて正直、大きな影響がある。このまま円安が続くなら会社としてもさらなる対応が必要になると考えている。円安や原料高はお客さまにおいしいワインを届けるには大きなハードルで頭が痛い」

また、フランスのワイナリーの経営者からも為替による日本のワインの販売価格の上昇が売り上げの減少につながるのではないかという不安の声が聞かれました。

ワイナリー経営 アルベリック・ビショーさん
「日本はとても重要な市場なのに輸出量が減少し続けている。価格の上昇が原因だ」

日本のワイン 輸出には円安が追い風に

一方、円安を日本のワインを海外に売り込むきっかけにしようという動きも出ています。

フランスのワインの産地、ブルゴーニュ地方では今月、日本産のぶどうだけを使い日本で製造された「日本ワイン」の試飲会が開かれ山梨や長野などからおよそ30にのぼるワイナリーが参加しました。

「日本ワイン」は、近年、人気や評価が上昇しているということで、現地の販売店や飲食店から商談をもちかけられた日本のワイナリーもあったということです。

日本の参加者からは円安はワインを輸出する際には価格が割安になることから、海外への展開を積極的に考えたいという声も聞かれました。

長野県でワイナリー経営 楠茂幸さん
「ユーロやドルにすると求めやすい価格になっているはずで、この品質で今の価格なら十分に市場で通用する可能性がある。品質勝負ではあるがこの円安が追い風になると感じている」

奈良県のワイナリー代表 木谷一登さん
「円安は日本では海外ワインが値上がりして競合相手が少なくなる一方、輸出で外国人に買ってもらうメリットがある。日本の消費は厳しく海外市場は大事だと思う」

そもそも「ボージョレ・ヌーボー」って

フランス南部、ブルゴーニュ地方の「ボージョレ」地区で、その年に採れたブドウを使って作られた赤ワインのことです。

フランス

フランス語で「新しい」を意味する「ヌーボー」と合わせて「ボージョレ・ヌーボー」と呼ばれていて、その特徴のひとつが製造期間の短さです。

日本洋酒輸入協会によりますと、手で収穫したぶどうをつぶすことなくまるごとタンクに入れるなどして、時間がかかる工程を削っているため、収穫したあとの、全体の製造期間は2週間ほどだということです。

例年9月上旬から中旬にかけて収穫を行った後、10月上旬には瓶詰めが行われ、その後、各地に出荷されます。

販売には解禁日が設けられていて、毎年11月の第3木曜日となっています。

日本ではいつから人気に?

日本洋酒輸入協会によると、日本に初めてボージョレ・ヌーボーが輸入されたのは1970年代半ば。

80年代になると、時差の関係で「世界で一番早く飲める」とされたことや初物を好む文化、バブル景気などと相まって、人気が高まってきたということです。

ピーク時の2005年にはおよそ1200万本が日本に輸入されました。

しかしそれ以降は、楽しまれる酒の種類が増えたことや、健康志向の高まりで低アルコールやノンアルコール飲料の人気が高まったことから輸入量は減少。

さらに去年は、ロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナによる航空運賃の高騰などの影響を受けて、ピーク時の6分の1の180万本あまりにまで落ち込んだということです。

一方で、ことしは新型コロナウイルスが5類に移行してから初めての解禁となり、輸入や販売を行う大手飲料メーカーでは、需要の拡大に期待を寄せています。

注目されるキャッチコピー

「ボージョレ・ヌーボー」といえば、その年の出来について、メーカーなどがつけるさまざまなキャッチコピーも話題になります。

輸入を行っている会社の1つのサントリーでも、ワインの味のイメージにつなげてもらうため、現地・フランスの製造会社の意見を踏まえたキャッチコピーを作成しています。

ことしのキャッチコピーは「まるで摘みたての赤い果実をそのまま口にほおばったような味わい」です。

(過去4年間に作成したキャッチコピー)
2022年
果肉たっぷりの赤いベリーやいちごの甘酸っぱいジャムを口いっぱいに含んだような味わい

2021年
採れたてのいちごやチェリーに、そのままかじりついたような味わい

2020年
ブラックチェリーのような完熟した黒い果実の香りとともに、心地良い余韻が残る、非常に芳醇な味わい

2019年
いちごやラズベリーなどの赤い果実のピュアなフレッシュさの中に、丸みを帯びたエレガントな味わい

日本の「ヌーボー」も注目

フランスだけでなく、日本の「ヌーボー」も近年、人気や評価が高まっています。

山梨県では、ワイン酒造組合が2008年から日本の固有品種の「甲州」と「マスカット・べーリーA」の2つのぶどうを使ったワインの新酒を「山梨ヌーボー」と名付けて製造しています。

解禁日の毎年11月3日や、その周辺の日には都内や山梨県内でワインの試飲や購入ができる「山梨ヌーボーまつり」を開催し、大勢の人が訪れています。

甲州市でのイベントのようす

今月19日にも、甲府市で「山梨ヌーボーまつり」が行われる予定で、県内にある38のワイナリーの60種類以上の新酒ワインを楽しむことができるということです。

さまざまな種類が楽しめる新酒のワイン。
あなたはどの味を楽しみますか。