“不法入国者のルワンダ移送計画は違法” 英最高裁 政権に打撃

イギリスで難民認定を申請するため不法に入国した人たちをアフリカのルワンダに移送する政府の計画について、イギリスの最高裁判所は人権上、問題があるとして、違法だと判断しました。不法入国の阻止を主要政策の1つに掲げるスナク政権にとって、大きな打撃となりそうです。

イギリスのスナク政権は、難民認定を申請するためフランスとの間のドーバー海峡をボートで渡るなどして不法に入国した人が去年、4万5000人を超え、こうした人たちへの対応が財政を圧迫しているなどとして、アフリカ東部のルワンダへ資金援助と引き換えに移送する計画を打ち出しました。

これに対し、難民の支援団体などが「非人道的だ」として中止を求めて提訴し、去年12月の1審では合法、ことし6月の2審では逆に違法だという判断が示され、政府が最高裁判所に上告していました。

最高裁判所は15日、人権をめぐるルワンダ政府のこれまでの対応には問題があるとしたうえで「移送された場合、難民申請が適切に判断されず、出身国に強制送還されるおそれがある」などと指摘し、5人の裁判官が全員一致で移送の計画は違法だという判断を示しました。

スナク政権は不法入国の阻止を主要政策の1つに掲げ、ルワンダへの移送は抑止力になるとしていましたが、今回の最高裁判所の判断は支持率が低迷する政権にとってさらなる打撃となりそうです。

英スナク首相「望んでいた結果ではない」

イギリスのスナク首相は「望んでいた結果ではなかったが、われわれはこの数か月間、あらゆる事態に備えてきた」としたうえで「重要なのは、裁判所が不法移民を安全な第三国に移送するのは合法だと認めたことで、これは政府の当初からの見解を裏付けるものだ。不法入国は多くの命を犠牲にし、イギリスの納税者にも年間数百万ポンドの損害を与えている。われわれはそれを終わらせるため、あらゆることをしていく」とする声明を発表し、引き続き不法入国の阻止に取り組むことを強調しました。

一方、ルワンダ政府は「ルワンダが難民申請者にとって安全な第三国ではないという判断に異議を唱える。ルワンダとイギリスは、移送された人たちをルワンダの社会に融合させるための協力を進めてきたし、難民に対するわれわれの模範的な扱いはUNHCR=国連難民高等弁務官事務所をはじめとする国際機関からも認められている」とする声明を発表しました。