岸田首相 “ことしを上回る賃上げに協力を” 政労使会議

政府と経済界、労働界の3者による「政労使会議」が開かれ、岸田総理大臣は、足元の物価動向も踏まえ、来年の春闘に向けて、ことしを上回る水準の賃上げが実現するよう協力を要請しました。

「政労使会議」の開催はことし3月以来で、岸田総理大臣と関係閣僚のほか、経済界からは経団連の十倉会長らが、労働界からは連合の芳野会長らが出席しました。

この中で岸田総理大臣は、政権が推進する政策のもとで、ことしの賃上げは30年ぶりの高水準となるなど経済の好循環が動き出しつつあると指摘しました。

そのうえで「このチャンスをつかみとり、デフレからの完全脱却を実現するため、経済界には足元の物価動向を踏まえ、来年の春闘に向け、ことしを上回る水準の賃上げの協力をお願いしたい」と呼びかけました。

また、労働者の7割が働いているとされる中小企業の賃上げが進むよう、支援するための税制措置を拡充するほか、今月下旬には人件費にあたる「労務費」の適切な価格転嫁に関する指針を公表し、企業側に対応を働きかけていく考えを示しました。

さらに、所得税などの定額減税や、投資の促進、それに非正規労働者の正社員化の支援なども示しつつ、国民の可処分所得を増やすため、政府としても過去に例のない取り組みを進めていくと強調しました。

経団連 十倉会長「官民連携でデフレ脱却を」

政労使会議のあと、経団連の十倉会長は記者団に対し「官民連携でこの今を捉えて完全にデフレから脱却しようと強調した。今起きているのはコストプッシュ型のインフレなので、このいちばん苦しい今を乗り越えるためには官民連携でやるしかない」と述べました。

そのうえで、来年の春闘での賃上げについては「少なくとも今はことし以上の水準を目指そうということで意気込みも、熱も、傾けている」と述べました。

連合 芳野会長「労組ない企業にも賃上げ波及がポイント」

連合の芳野会長は記者団に対し「持続的な賃上げに向けて『政労使』が継続的に議論していく場が必要だと申し上げた。労働組合のない企業にどれだけ賃上げが波及できるかがポイントになるので、政府の力も借りないと機運は醸成できない。来年の春闘でことしを上回る賃上げが実現できるよう、いい心合わせができた」と述べました。

人件費上昇分 価格転嫁へ行動指針とりまとめへ

「政労使会議」では、中小企業での賃上げの実現に向けて、人件費の上昇分を適切に価格転嫁できるよう、発注者と受注者双方に求められる行動指針を公正取引委員会などが今月末に取りまとめることが明らかにされました。

会議の中で明らかにされた指針の骨子によりますと、発注者に求められる行動の例として、人件費の転嫁を受け入れる取り組み方針を経営トップまで上げて決定し社内外に示すことや、受注者からの求めがなくても定期的に人件費の価格転嫁について協議する場を設けることなどが示されています。

一方、受注者に対しては、価格交渉の際、根拠として最低賃金の上昇率や春闘の妥結額など、公表資料を利用することなどを求めています。