箱根 にぎわい戻るも人手不足 働き手確保へ川崎で就職説明会

新型コロナウイルスの感染症法上の5類への移行から半年がすぎ、神奈川県箱根町では、にぎわいが戻る一方で人手不足が課題になっています。こうした中、ハローワークと宿泊業者の組合などは働き手を広く確保しようと、初めての就職説明会を川崎市で開きました。

説明会は、ハローワークと箱根町の宿泊施設の組合などが、11月6日から5日間にわたって川崎市内で開きました。

これまでは箱根町に近い小田原市のハローワークで働き手を募ってきましたが、新たな人材を確保しようと、初めて川崎市で開催したもので、ホテルや旅館の人事担当者が、仕事内容や福利厚生などについて、時間をかけて説明していました。

ハローワークによりますと、5日間でおよそ260人が訪れたということです。

旅館の人事担当者は「ブースに来てくれる人が多くてびっくりしました。いい人に就職してもらえたらと思っています」と話していました。

仕事を求めて訪れた40代の女性は「温泉での仕事に興味がありました。大変なイメージはありますが、やってみたいなという気持ちもあります」と話していました。

50代の男性は「説明を受けた会社は、ものすごく魅力的でした。ただ、移住ありきなのが難しいところです。今は選択肢の1つという状況です」と話していました。

箱根町の資料によりますと、入湯税の対象となる宿泊客数は、新型コロナウイルスの感染が拡大した3年前に大きく落ち込みましたが、ことし7月にはコロナ前と同じ水準にまで戻ってきています。

箱根温泉旅館ホテル協同組合の川口將明事務局長は「コロナの5類移行のあとから外国人旅行者を中心に、お客さまが戻ってきています。人手不足が大きな懸念になっているので、対応していかないといけないと思っています」と話していました。

箱根町を管轄する「ハローワーク小田原」の磯崎康一所長は「箱根の周辺エリアだけだと応募する人が限られているので、川崎市で開催しました。多くの方に来てもらえたので、今後も1人でも就職が決まるように取り組んでいきたいです」と話していました。

人手不足見越し 業務の自動化進めるホテルも

人手不足を見越して、業務の自動化を進めているホテルもあります。

「箱根ホテル小涌園」は、老朽化などで全館を建て替え、ことし7月にオープンしました。

その際、人が行っていた業務を自動化することにこだわりました。

フロントに3台の機械を用意して、チェックインやチェックアウトを宿泊客が自分でできるようにしました。

また、画面を操作することでフロントの壁の一部が開き、従業員がいなくても荷物を預けることができる仕組みも取り入れました。

さらに、
▽客室に置かれたモニター画面を使って、客がレストランの空席状況の確認や、宿泊代の精算をできるようにしたほか、
▽ホテル内にある自動販売機やランドリーをすべてキャッシュレスでの運用にして、現金の管理にかかる人手を削減しています。

箱根ホテル小涌園の道本岳人営業担当課長は「今後、日本の人口が減っていく中で、労働力という問題も出てきます。持続可能なホテルとして生き残っていくために、よりお客さまに近いところでサービスなどに力を注げるよう機械化を進めています」と話しています。

人手が足りない日は予約を制限する宿泊施設も

多くの観光客が箱根町を訪れる一方で、宿泊施設の中には人手不足から客室の予約を制限しているところもあります。

旅館「円かの杜」には新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行されたあと、海外からの観光客を中心に多くの宿泊客が訪れています。

しかし、客室係の人数が確保できない日は部屋の予約を制限しています。

16日は出勤できる客室係が5人しかいないため、20室のうち3室は稼働させることができません。

以前は満室になるまで予約を受けていましたが、従業員の健康などを考えて人手が足りない日は制限するようになったといいます。

女将の松坂美智子さんは「ちょっとブレーキをかけて営業している状況で心苦しくもあります。箱根は以前から人手不足でしたが、コロナになってからのいまのほうが人手不足を強く感じています」と話しています。

旅館では海外からのインターンを受け入れるなどして、人材の確保や育成に努めていて、いずれは毎日満室まで受け入れられるような体制にしたいとしています。