【14日詳細】ガザ地区 死者1万1200人超 深刻な燃料不足も

イスラエルが地上侵攻を続けるガザ地区では、人道状況が厳しさを増し、現地で活動する国連機関は、燃料不足によって48時間で活動停止に追い込まれるおそれがあるとして即時の停戦を改めて訴えました。

※11月14日(日本時間)のイスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。

双方の死者 1万2000人超に

ガザ地区の地元当局は13日、一連の衝突でガザ地区ではこれまでに1万1240人が死亡し、このうち4630人が子どもだったと発表しました。

一方、イスラエル側ではこれまでにおよそ1200人が死亡していて、双方の死者は1万2000人を超えています。

早朝から降り続ける冷たい雨が避難生活の厳しさ増す

ガザ地区ではおよそ150万人以上がイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘を逃れて避難所に身を寄せる中、14日早朝から冷たい雨が降り続け、避難生活は厳しさを増しています。

このうち、ガザ地区南部のラファでNHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが撮影した映像では、人々が避難生活を送るテントをあわてて防水シートで覆うなど対応に追われていました。

なかには、テントの中が水浸しになってしまい、ブラシで水を掃き出す人の姿も見られました。

ガザ地区は冬の季節に入る中、多くの住民が着の身着のままで避難所に詰めかけていて、このまま避難生活が長期化した場合、人道危機がさらに深まることが懸念されています。

避難生活を送る男性は「子どもたちをはじめ、家族は雨でずぶぬれです。冬への備えが必要だと訴えてきましたが、なしのつぶてです。どうか助けてください」と支援を訴え、女性は「けさは雨でぬれて目が覚めました。子どもたちも雨でずぶぬれです。戦争で自宅の隣の家が破壊され、子どもはけがをしました。これが私たちが過ごしている恐ろしい日常です」と話していました。

シファ病院 新生児や集中治療室の患者含む179人の遺体を埋葬

ガザ地区の保健当局によりますと、燃料の枯渇で電力不足に陥っている地区最大の病院シファ病院では亡くなった人たちの集団墓地が掘られているということです。

AFP通信は、シファ病院の院長の話としてこれまでに179人の遺体が埋葬され、この中には新生児7人と集中治療室などにいた患者29人が含まれていると伝えています。

また、イギリスの公共放送BBCなど複数のメディアによりますと、WHO=世界保健機関のリンドマイヤー報道官は「病院の周辺には、埋葬も、安置所への搬送もできない遺体がある。病院は機能しておらず、墓場と化している」と述べ、強い危機感を示しています。

ガザ地区南部 車の燃料も不足 食用油を混ぜる苦肉の策も

戦火を逃れて避難した人たちが詰めかけているガザ地区の南部ラファでは、そうした人たちの日常の足としてタクシーの需要が高まっているものの、深刻な燃料不足で営業している車が減り、ロバに引かせる荷車に客を乗せて運ぶ様子もみられます。

そうした中、タクシーの運転手の間では、ディーゼル車の燃料の軽油に食用油を混ぜて不足を補い、なんとかサービスの提供を続ける「苦肉の策」が広まっています。

NHKガザ事務所のサラーム・アブタホン カメラマンが13日午後にラファ市内で撮影した映像では、タクシーの運転手らがディーゼル車の給油口にボトルからひまわり油を注いでいる様子が確認できます。

また、道路脇で車の燃料用に食用油を販売している人たちの姿も見られます。

ただ、人々からは「食用油を燃料に混ぜると排気ガスが増える」などと、健康被害を懸念する声も出ているということです。

国連機関 “水の供給や通信状況 さらに悪化する見通し”

ガザ地区で燃料の搬入がイスラエルから認められず燃料の不足が深刻化する中、国連機関は13日、住民が必要な水や通信状況がさらに悪化する見通しだと発表しました。

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の発表によりますと、ガザ地区では燃料が不足し淡水化装置がまもなく稼働できなくなるため、15日以降、ガザ地区南部であわせて29万人以上が身を寄せる44の避難所への水の供給が困難になるとしています。

このうち、生活用水の供給は停止し、飲み水として提供される水資源の主要部分が失われるとしています。

一方、通信状況ついても燃料不足で関連装置が稼働できなくなるため16日以降、ガザ地区各地で通信状況が悪化する見通しだとしています。

イスラエル軍 “シファ病院へ保育器と人工呼吸器の提供を準備”

イスラエル軍は14日未明、ガザ地区で地上部隊が周囲に展開するシファ病院に対し、必要な保育器と人工呼吸器を提供する準備を進めているとした音声や動画をSNSを通じて発表しました。

イスラエル軍の調整官とシファ病院の責任者との間で交わされたとする電話の会話のなかでイスラエル軍側は「私たちはあなたたちが希望するなら子どもや患者を避難できるよう手伝う」と提案するとともに「私たちは保育器を病院に提供することもできる。病院の入り口に置いておくが助けになるか」と尋ねました。

これに対しシファ病院の責任者は「それは助かる。人工呼吸器が必要な子どもたちも数人いる」と述べ、結局、病院側がイスラエル軍に対し、合わせて37の保育器と4つの人工呼吸器の提供を求める内容となっています。

さらにイスラエル軍はシファ病院に提供するとみられる保育器の動画や写真を公開し、担当者が「われわれの敵はハマスであり、ガザの人々ではない」と述べています。

イスラエル側はガザ地区の住民に寄り添う姿勢を強調することで国際社会の批判を和らげたい思惑もうかがえます。

地区内35病院のうち25病院が稼働できず

イスラエル軍は13日もガザ地区に対する空爆や地上部隊による作戦を続けていて、ガザ地区の保健当局によりますと攻撃や燃料不足によって地区内にある35の病院のうち25の病院が稼働できない状態に追い込まれたということです。

このうち、ガザ地区最大の病院、シファ病院では新生児7人と患者27人のあわせて34人が死亡したとしています。

イスラエル軍 “ハマスが使用したとする病院” 映像公開

イスラエル軍は13日の発表で、ガザ地区北部にあるランティシ病院を特殊部隊が急襲したところ、病院の地下で、イスラム組織ハマスが人質を監禁していたとみられる空間を確認したと主張しました。

作戦のあとに現場で撮影したとする映像では、イスラエル軍の報道官が、病院の近くで見つかったという、ハマスが使っていたトンネルの入り口だとする場所を案内し、このトンネルが病院の地下の空間につながっていると説明しました。

続いて報道官は病院の地下の空間を案内し、「ハマスは病院を拠点として使用していた。この部屋ではハマスの武器が見つかった」と述べ、床に置かれた何丁もの銃やロケットランチャーなどを指し示していました。

また別の部屋では、イスや、その上に置かれた女性の服、それに床に残されたロープなどがうつされていて、報道官は「この場所で人質が監禁されていた疑いがある」と述べ、人質が病院の地下の空間に連れ込まれていた可能性があるという見方を示しました。

この映像について、ハマスは、SNSへの投稿で「明らかなうそであり、矛盾している」と否定した上で、「パレスチナの人民に対する心理的な戦争の一部だ。世論を欺くことはできず、病院への攻撃を正当化できるものではない」とコメントし、イスラエル側を批判しています。

バイデン大統領「病院保護されるべき」イスラエルに懸念伝える

アメリカのバイデン大統領は13日「病院については行き過ぎない行動がとられるべきだ。病院は保護されるべきだ」と述べて懸念を示すとともに、イスラエル側にこうした懸念を伝えていることを明らかにしました。

またホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は記者会見でイスラエル側も懸念は理解しているとしたうえで病院が医療活動を続けられるよう燃料を提供する用意があるとアメリカ側に伝えてきたと明らかにしました。

一方で、イスラエル軍は病院側と連絡が取れていないと説明しているとして、アメリカとして病院が保護されるよう引き続き働きかけていくとしています。

サリバン補佐官はまた「イスラエル軍は市民を盾にとるテロ組織のハマスと対じしているが、だからと言って国際法に従うという責任が小さくなるわけではない」と述べ、イスラエル側にくぎを刺しました。

ハマス側 5日間の停戦と引き換え 70人の人質解放用意

イスラム組織ハマスの軍事部門カッサム旅団の報道官は13日、拘束している人質の解放と一時的な停戦を引き換えにした交渉がカタールの仲介で行われているとSNSで明らかにしました。

それによりますと、拘束している最大で70人の女性と子どもの人質の解放の用意があると仲介者に伝えたとしています。

一方、イスラエル側は女性と子どもの人質100人を解放するように求めてきたということです。

ただ、イスラエル側はこうした交渉の間も攻撃を続け、人質の命を軽視しているなどとして交渉を妨げているとしています。

また、カッサム旅団はイスラエル側の攻撃で人質の女性が今月9日に死亡したとする動画もSNSに投稿し、攻撃により人質の命が危険にさらされているとしています。

この動画についてイスラエル軍は「ハマスが人質の動画や写真を利用し、心理的なテロ行為と非人道的な行為を続けている」として、強く非難しました。

イスラエル軍 ハマスの幹部5人を殺害したと主張

イスラエル軍は13日もガザ地区に対する空爆や地上部隊による作戦を続け、対戦車ミサイル部隊の司令官などハマスの幹部5人を殺害したと主張しています。

イスラエル軍 “ハマスが病院など悪用している新たな証拠”

さらにイスラエル軍は、ガザ市にあるクッズ病院の周辺で撮影したとする映像を公開しました。

イスラエル軍の説明によりますと病院の入り口付近でハマスの戦闘員だとする人物がロケットランチャーで攻撃したあと病院に戻って隠れたなどとしていて「ハマスが病院などの民間施設を悪用している新たな証拠だ」などとしています。

クッズ病院についてパレスチナ赤新月社は今月12日、燃料不足や攻撃による被害のため稼働を停止したと発表していて、イスラエル側が病院の周辺などでの攻撃を正当化するねらいがあるとみられます。

これに対してパレスチナ赤新月社は、「病院内に武装した人物はおらず、いるのは、患者とその家族、そして医療スタッフだ」とイスラエル側の主張を否定しました。

一方、ガザ地区の保健当局はイスラエル軍による攻撃や燃料不足によって地区内にある35の病院のうち25がこれまでに稼働の停止に追い込まれたと発表しました。

また、ガザ地区最大の病院、シファ病院では新生児7人と患者27人が死亡したとしています。

国連機関 “48時間後には支援活動できなくなる”

ガザ地区で支援にあたっているUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のガザ事務所のホワイト所長は13日、エルサレムでの記者会見にオンラインで参加し、燃料不足のため、48時間後には支援活動ができなくなると訴えました。

UNRWAは、ガザ地区で避難民などに対して、水や食料を支給していますが、現地の倉庫は空となったほか、物資を輸送する業者は、トラックの燃料不足のため、物資を届けられなくなったということです。

また、これまでは淡水化装置を使って飲料水を支給していましたが、こちらも燃料不足によって稼働できなくなるということです。

さらに、国連によりますとエジプト側からラファ検問所を通り、ガザ地区に支援物資を届けるトラックも、検問所での検査などに時間がかかるため、現在は1日に40台ほどしか通れていないということです。

ホワイト所長は「飲料水の不足はとりわけ深刻で、たとえ脱水症状の患者が出ても病院も燃料がないため患者を助けられなくなる」と述べ、窮状を訴えました。

また、国連のヘイスティングス人道調整官は、NHKの取材に対し「最も重要なのは人道的停戦だ。継続的な停戦は、一時だけのものより効果的だ」と述べ、必要な支援物資を届けるため、国際社会も働きかけを強めてほしいと訴えました。

シファ病院医師「状況はとても悪く非人道的」

危機的な状況が続いているガザ地区最大のシファ病院に残る国際NGO「国境なき医師団」の医師は、「状況はとても悪く、非人道的だ」と述べた上で、患者の安全な避難が保証されなければ、病院を離れることはできないと訴えています。

国境なき医師団は、現地時間の13日午前に収録されたというシファ病院に残る医師からのメッセージをSNSに投稿しました。

この中で医師は、電気も水も食料もない危機的な状況とともに、病院の前には多くの遺体が残され、けが人もいるものの、そうした人々を搬送しようとした救急車が攻撃され、病院に運ぶことができないと窮状を伝えています。

また、患者を銃撃した狙撃兵もいて、けがをした3人を手術したとも証言しています。

病院には、600人の入院患者と37人の新生児がいて中にはICU=集中治療室での治療が必要な患者もいるとしています。

医師は「患者たちを置いてはいけない。病院を去ろうとした人が爆撃され、狙撃兵に殺されたのを見てきたので、安全に退避できるルートの保証が必要だ。もしそれが保証され、まず患者を避難させるのであれば、私たちも避難する」と訴えています。

ニューヨーク国連本部 スタッフの犠牲者100人超で黙とう

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突以降、ガザ地区で亡くなった国連スタッフを追悼するため、ニューヨークの国連本部では13日朝、国連旗の半旗が掲げられました。

また、このあと国連本部の議場には、グテーレス事務総長と、国連の高官などおよそ100人が集まり、1分間の黙とうをささげました。

世界各地にある国連機関でも半旗が掲げられたり黙とうが行われたりしました。

イスラエル軍とハマスの軍事衝突から1か月余りで国連スタッフの犠牲者は100人を超え、1つの紛争で亡くなった国連スタッフの数としてはこれまでで最も多くなっています。

EU「ガザ地区は即時 戦闘休止を」

ガザ地区をめぐってEU=ヨーロッパ連合は、12日声明を発表し「深刻さを増す人道危機を深く懸念している」として、イスラエルとイスラム組織ハマスに対し、戦闘の即時休止を求めました。

EUは、これまでも双方に戦闘休止を求めてきましたが、13日に会見を開いたEUのボレル上級代表は「ガザ地区の人道状況は戦闘休止を緊急に必要としている」と述べEUとしては即時の休止を求めることでこれまでより呼びかけを強めたとしています。

一方、EUは13日に外相会議を開き、中東情勢をめぐって意見を交わしましたが、加盟国の外相からは人道的な停戦を求める声も聞かれました。

このうちスロベニアのファヨン外相は記者団に対し「病院や子どもたちへの攻撃を強く非難する」と述べて人道的な停戦を求め、アイルランドのマーティン外相も「戦闘休止を求めるEUの声明を歓迎はするが、さらなる措置をとるべきだ。人道的な停戦が必要だ」と述べました。

ただ加盟国の中には「停戦はハマスを利することになる」という意見もあり、EUのなかで依然として立場が割れている実情が浮き彫りになっています。