戦闘機が民間空港で離着陸訓練 大分空港・徳之島空港で初

有事の際に自衛隊の基地が攻撃を受けて使えなくなったことを想定して、大分県と鹿児島県の空港で戦闘機の離着陸訓練が初めて行われました。

大分空港での給油

自衛隊は、日本の防衛を想定した2年に1度の大規模演習を、11月10日から日本各地で行っています。

13日は、自衛隊の基地が攻撃を受けて使えなくなったことを想定して大分空港で戦闘機の離着陸訓練が行われ、午後1時ごろ福岡県の築城基地に所属するF2戦闘機4機が相次いで着陸しました。

戦闘機は駐機場まで移動し、民間のタンクローリーから旅客機と同じ燃料を給油したあと午後3時すぎに離陸しました。

自衛隊の戦闘機が有事を想定して空港で離着陸訓練を行うのは、民間機と共同使用している空港以外では初めてです。

徳之島空港での訓練

13日は鹿児島県の徳之島空港でも戦闘機の離着陸訓練が初めて行われ、那覇基地に所属するF15戦闘機4機が滑走路に着陸したあと、すぐに離陸する「タッチアンドゴー」を行いました。

去年策定された「国家安全保障戦略」などでは、有事に対応するためとして、空港や港の利用を拡大する方針が示されていて、今回の訓練はこうした方針を反映したものとなっています。

戦闘機の離着陸訓練は15日も大分空港と徳之島空港、それに岡山空港で行われるほか、鹿児島県の奄美空港でも今週行われる予定です。

北朝鮮・中国めぐる有事を想定

大分空港での訓練

今回の戦闘機の訓練は、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返し、中国が軍事力の増強を進める中、有事を念頭に、使える空港を1つでも増やしたいというねらいがあるとみられます。

自衛隊の戦闘機は北海道と青森県、茨城県、石川県、福岡県、宮崎県、沖縄県の合わせて7つの基地に配備されていますが、有事ではミサイル攻撃を受け滑走路が破壊されるなどして、離着陸できなくなる可能性があります。

一方、国内には民間機が利用する空港がおよそ100あり、このうち戦闘機が安全に離着陸できる長さ2000メートル以上の滑走路を持った空港はおよそ60あります。

有事の際には自衛隊がこうした空港を使用する可能性がありますが、防衛省関係者は、「離着陸したことがない空港を使用するのは難しい」と話し、訓練で経験を重ねることが重要だとしています。

防衛省によりますと今回、大分空港や岡山空港、徳之島空港などで訓練を行うのは関係自治体の理解が得られたためとしていて、ほかの空港についても理解が得られれば、訓練を行いたい考えです。

一方で、住民からは懸念の声も上がっていて、岡山空港の訓練をめぐっては、市民団体などが「地域住民の安全を脅かす」などとして県に対し、国に中止を要請するよう申し入れを行っています。

戦闘機訓練にさまざまな声

大分空港で戦闘機の訓練が行われたことについて、空港を訪れた人や周辺に住む人たちからはさまざまな声が聞かれました。

大分市に住む75歳の男性は、「平和が一番だが、世界の情勢が不安定な中でもし有事が起きて日本で基地がねらわれたら、民間の空港も使わざるをえないと思うので、こうした訓練を行うことも必要なのではないか」と話していました。

大分空港の近くに住む28歳の女性は、「ニュースをみて戦闘機が来ると知りましたが、4機もきて、民間機と音も違って、びっくりしました。見慣れない光景なのでものものしいなと思いました。事前にもうちょっと安心感のある説明が住民にあったらよかったです。何を始めるんだろうという不安もありつつ、訓練ならしかたないという思いです」と話していました。

大分空港の近くにある公園では、訓練に反対する集会が開かれ、参加者たちが「大分空港の軍事利用反対」などといったボードを掲げて、シュプレヒコールをあげていました。

集会に参加した宇佐市に住む66歳の女性は「民間空港に戦闘機が来るなんて怖いです。突然のことなのでやめてほしいと思いました。こういうことが日常的になったらとんでもないと思いました」と話していました。