政府 今年度補正予算案を閣議決定 一般会計総額 13兆1992億円

政府は物価高への対応などを柱とする新たな経済対策の裏付けとして、一般会計の総額で13兆1000億円余りとなる今年度の補正予算案を閣議決定しました。財源の7割近くにあたる8兆8000億円余りは追加の国債発行で賄うことにしています。

政府は10日の持ち回り閣議で新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案を決定しました。

一般会計の総額は13兆1992億円で、このうち物価高への対応として、
▽住民税が非課税の低所得者世帯に対し地方自治体を通じて7万円を給付する費用に1兆592億円、
▽ガソリン代や電気代・ガス代などの負担軽減措置を来年4月末まで延長するための費用に7948億円を盛り込みました。

また、持続的な賃上げの実現に向けて、
▽中小企業の生産性向上の取り組みを支援する補助金や、
▽介護職員らの処遇を改善し、月額6000円程度賃上げする費用などに
5991億円が計上されました。

さらに、国内への投資を促進するため、
▽先端半導体の国内での量産を支援する基金に6322億円を充てることにしています。

一方、財源は
▽昨年度の剰余金の3兆3911億円と、
▽税外収入の7621億円、
▽今年度の税収で上振れが見込める1710億円を充てた上で、
▽全体の7割近くにあたる8兆8750億円は追加の国債を発行し賄うことにしています。

政府はこの補正予算案を今の臨時国会に提出し、速やかな成立を目指す方針です。

31の「基金」に約4兆3000億円を拠出へ

今回の補正予算案では、半導体の生産拠点の整備や宇宙分野の研究開発などを支援する31の「基金」におよそ4兆3000億円を拠出することになっています。

基金は現在、150程度あり、ことし3月末時点での残高の総額はおよそ16兆6000億円に上っています。

今回の補正予算案では、新たに設けた4つの基金を含む31の基金に対して、一般会計と特別会計の合計でおよそ4兆3000億円を拠出することになっています。

このうち経済産業省が所管する、半導体に関連した3つの基金には、合わせて2兆1000億円余りを積み増します。

経済産業省は、これらの基金を
▽最先端の半導体の国産化を目指す企業「Rapidus」や
▽熊本県で第2工場の建設を検討している台湾の半導体大手のTSMCなどの支援に活用する方針です。

また、今回新たに設けられる「宇宙戦略基金」には、大学や企業が宇宙分野の研究開発を支援する費用などとして3000億円を計上しています。

このほか、全国の小中学校の児童や生徒に配布されているタブレット端末を更新するための基金も今回新設され、2600億円余りが計上されています。

「基金」は複数年度にわたって支出できることから、各年度の支出額が大きく変化しても柔軟に対応できる一方、事業が執行されずに残高が増え続けるケースも指摘されていて、チェック体制の強化が求められています。

鈴木財務相「平時の歳出構造に向け 1つの道筋示すことができた」

鈴木財務大臣は記者会見で「急激な物価高から国民生活を守り、構造的賃上げと投資拡大の流れを強化するために必要な政策を積み上げた。日本経済がコロナ禍の3年間を乗り越え、改善しつつあることを踏まえ、新型コロナや物価高騰対策の予備費を賃上げ促進の環境整備に活用できるようにするなどメリハリのある予算編成を行った。平時の歳出構造に向けた1つの道筋を示すことができたと考えている」と述べました。

一方、来年度予算案に反映される見通しの所得税などの減税について、鈴木大臣は、「いろいろな条件が変わらなければ、減税をすればその分、国債の発行が必要になると考えている。ただ、来年度・令和6年度の予算では歳出改革に徹底して取り組んでいく」と述べました。

松野官房長官「必要な政策を積み上げたもの」

松野官房長官は午後の記者会見で「総合経済対策の裏付けとなる補正予算案で、急激な物価高から国民生活を守り、構造的賃上げと投資拡大の流れを強化するため必要な政策を積み上げたものだ。今後速やかな国会提出に向けて作業を進め、早期成立を図っていく」と述べました。

そのうえで、財源の7割近くを追加の国債発行で賄うことについて「財政のさらなる悪化を招くのではないか」と問われたのに対し「デフレからの脱却を確実なものにすることで、持続的な経済成長を実現し、ひいては財政健全化にもつなげることが重要だと認識している。経済あっての財政という考え方のもと、持続的な経済成長と歳出歳入両面の改革に取り組んでいく」と述べました。