東京証券取引所で上場企業の中間決算ピーク 半数以上が増益に

東京証券取引所では上場企業の今年度の中間決算の発表が、10日、ピークを迎えました。経済活動の正常化や円安によって業績を伸ばす企業が相次ぎ発表した企業の半数以上が増益となっています。

背景は経済活動正常化や円安 価格転嫁の広がりなど

東京証券取引所では、ことし4月から9月までの半年間の中間決算の発表がピークを迎え、この日1日で400社以上が業績を開示しました。

「SMBC日興証券」が旧東証1部に上場していた企業を中心に9日までに発表を終えた全体のおよそ7割にあたる996社の決算を分析したところ、最終利益は52%にあたる527社が増益となりました。

最終損益を合計した金額は、前の年の同じ時期より7.1%増えています。

経済活動の正常化や円安などを背景に、自動車などの「輸送用機器」が大幅な増益となったほか、価格転嫁の動きが広がった「食料品」なども利益を伸ばしました。

一方、最終損益が減益となったのは、45%にあたる449社です。

中国経済の減速の影響などで「海運」が大きく利益を減らしたほか、商社を含む「卸売業」は資源価格の高騰が一服したこともあって減益となりました。

こうした中、今年度1年間の最終利益の見通しを上方修正した企業は270社にのぼり、下方修正した131社の2倍以上となっています。

大手企業経営者から 賃上げ関連の声相次ぐ

中間決算を発表した企業の経営者からは、賃上げに関連した発言が相次ぎました。

ホンダ 青山真二副社長
「今年度のベアあるいは全体の賃上げをやっているが、来年度に向けても積極的に対応していく。政府の指針も踏まえながら賃上げに向けて積極的に考えていきたいと思っている」

日産自動車 内田誠社長
「物価変動に伴う生活への影響などを総合的に勘案しながら賃金改定を行っていて、今後もその考え方は変わりはない。引き続き状況を注視しながら判断していきたい」

キッコーマン 中野祥三郎社長
「経済の好循環を回していきたいということは、企業の責任として重く受け止めている。われわれとしては商品の価格もある程度上げさせていただいたこともあって、全体の賃上げにつながるような形で貢献していきたい」

王子ホールディングス 鎌田和彦専務
「政府の指針として底上げしていこうという流れがあり、業界全体として同じ方向に向いているので、その流れに従うことになる」

エステー 上月洋社長
「賃上げについては考えてはいるが、2023年でも昇給率が5.3%くらいある。状況に応じて対応していきたい」と述べました。

賃上げ検討する中小企業も

中小企業の中には、商品の価格を引き上げたことなどで業績が改善し、来年の賃上げを前向きに検討するところもあります。

東京・墨田区にある老舗の菓子店は、おかきやせんべいの製造に使うしょうゆや食用油などの価格が上昇したほか光熱費の高騰も続いたことから去年、およそ100種類の商品の価格をいずれも1割ほど引き上げました。

値上げの影響も懸念されましたが、新型コロナの5類への移行で土産や贈答用の需要が高まったことで、ことしの売り上げは去年より1割以上増えているということです。

この菓子店では、ことし7月、社員20人あまりの賃金を月額で一律8000円引き上げたということで、来年についても業績を見極めながら賃上げを前向きに検討したいとしています。

「東あられ本舗」の小林正典会長は、「来年以降は売り上げの伸びが落ち着いてくるかもしれないが引き続き経費を抑えて人件費を上げられるよう頑張りたい」と話していました。

専門家 “好調企業は原資十分 賃上げの流れ波及に期待”

企業の決算の動向について、SMBC日興証券の安田光チーフ株式ストラテジストは、「大手企業では原材料価格の上昇を受けた価格転嫁が進んでいることや、円安の進行などがプラスの効果となり、全体として決算は堅調な内容だ。今年度の業績の見通しを引き上げる動きもみられ、今後は製造業を中心にさらなる業績の拡大が期待できる」と述べました。

一方で、「今回の決算でも中国での売上高が多い企業は減益の幅が大きい傾向がみられた。中国経済の減速の動向に加え、今後、為替が円高に過度に振れるような状況となれば業績面でのリスクとなりうる」という見方を示しました。

その上で、企業の賃上げの動きについて、「決算が好調だった企業では賃上げのための原資は十分にあり、賃上げを通じて消費が増えていけば日本経済全体にとって大きくプラスになる。その意味でも、大手企業だけでなく中小企業にも賃上げの流れが波及していくことが望まれる」と指摘しました。