ウクライナ軍 ロシア占領の南部で領土奪還の作戦展開か

反転攻勢を続けるウクライナ軍は、ロシア側が占領する南部のドニプロ川の東岸に渡って、領土の奪還に向けた作戦を展開しているものとみられます。
一方、ウクライナ政府は、ここ数週間でエネルギー関連のインフラが60回攻撃されたとしていて、本格的な冬の到来を前に警戒を強めています。

領土の奪還を目指すウクライナ軍は、南部のザポリージャ州やヘルソン州で反転攻勢を続けています。

このうちヘルソン州での戦闘について、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は7日、ウクライナ軍が、ロシア側が占領するドニプロ川の東岸まで水陸両用車を使って歩兵戦闘車を移送し、地上作戦を展開しているという見方を示しました。

ウクライナ軍は先月以降、川の東岸に渡って奪還に向けた作戦を行っているものとみられ、ロシア側との間で攻防が続いています。

一方、ロシア軍は無人機などを使ってインフラを標的にした攻撃を続けているものとみられ、ウクライナのエネルギー省によりますと、ここ数週間でエネルギー関連のインフラが60回、攻撃されたということです。

ハルシチェンコ・エネルギー相はアメリカを訪れて国務省の高官などと会談し、エネルギー面での支援について話し合ったということで、本格的な冬の到来を前に警戒を強めています。

こうした中、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は8日、ロシアが占領を続けるウクライナ東部ルハンシク州で車が爆発し、乗っていた親ロシア派の幹部が死亡したとして、テロ事件などとして捜査を始めたと発表しました。

これについてウクライナ国防省情報総局は8日、SNSで「この人物は捕虜や民間人への残忍な拷問を行ってきた」として、地元の抵抗勢力の協力のもとで作戦を実行したものだと発表しました。

ウクライナ軍の総司令官の偽動画拡散で注意喚起

ウクライナ軍の総司令官が兵士たちに対し、直属の指揮官の指示に従わないよう、呼びかけているかのように見せかけた偽の動画がSNSで拡散しているとして、ウクライナ政府が注意を呼びかけています。

これはSNSなどで拡散される偽情報を分析している、ウクライナ政府の「偽情報対策センター」が8日、発表しました。

偽動画は1分ほどで、ウクライナ軍のザルジニー総司令官が「ゼレンスキー大統領は国を引き渡すつもりでいる国家の敵だ。ウクライナ国民はすぐにそれぞれの町の中央広場に集まり、ウクライナ軍の兵士は直属の指揮官の指示に従わず、首都キーウに集まるよう求める」などと呼びかけているように見せかけた内容となっています。

センターは、総司令官はこのようはメッセージは出しておらず、この動画は生成AIを活用し、本物と見分けがつかないほど巧妙な偽の画像や動画などを作成する「ディープフェイク」の技術を使った偽物だとした上で、ハッカー集団が旧ツイッターの「X」や、テレグラムなどのSNSで拡散させていると指摘しています。

センターは、ロシア側がこうした偽の情報を拡散することで政府と軍との関係を悪化させ、国内に混乱を引き起こそうとしているとして注意を呼びかけています。