カンボジア拠点に特殊詐欺か 日本人25人を逮捕

カンボジアで身柄を拘束された特殊詐欺グループ25人について、北海道に住む女性から現金をだまし取ったなどとして警察は8日夜、日本に移送中の航空機内で逮捕しました。
このグループは、少なくとも8道府県の特殊詐欺事件に関わっているとみられ、警察は実態解明に向けて本格的に捜査する方針です。

8日にカンボジアから移送され、航空機内で逮捕された20歳から42歳の25人は、午後10時前羽田空港に到着し、埼玉県内の警察署に身柄を移されました。

逮捕されたのは職業不詳の石原寛和容疑者(29)ら25人で、警察によりますと、ことし8月ごろ、北海道に住む70代の女性にうその電話をかけて介護施設の入居トラブルを解決する名目で現金45万円をだまし取ったなどとして、詐欺などの疑いが持たれています。

調べによりますと、ことし3月から8月にかけてカンボジアに順次入国し、現地から日本の被害者に電話をする「かけ子」として拠点にしていたアパートから、高齢者を中心にうその電話をかけていたとみられ、9月に現地の捜査当局に拘束されていました。

警察によりますと、拠点のアパートの一室からは複数のパスポートがまとめられた状態で見つかっていて、逃亡できないよう管理された状況だった疑いがあるということです。

25人は少なくとも8道府県の特殊詐欺事件に関わり、被害額はおよそ2億3000万円にのぼるとみられ、警察はグループの実態解明に向けて本格的に捜査する方針です。

警察は捜査に支障があるとして認否を明らかにしていません。

役割分担し、被害者を追い込む巧妙な手口か

捜査関係者によりますと、警察が逮捕状を取った25人は全員、特殊詐欺でうその電話をかける「かけ子」とみられています。カンボジアの首都プノンペンにある8階建てのアパート1棟を借り上げ、このうちひとつのフロアを、うその電話をかける専用の場所として使用していたということです。

今回のグループは被害者をだます手口と、だましとった現金を回収する方法に巧妙な点が見られます。逮捕状が出ている事件では、介護施設の運営会社の社員を名乗った男が北海道に住む70代の女性に「介護施設の入居権が当たりました」とうその電話をかけていました。

女性は「記憶にない」と答えたということですが、それでは終わらず、介護施設の職員とか顧問弁護士などという男らが次々と電話をかけてきて、「名義貸しで犯罪に当たるおそれがあるので、解決するための金が必要だ」などとたたみかけていたということです。

役割分担しながら、次々とうその電話をかけることで、話を信じるよう被害者を追い込んでいった疑いがあるということです。そして、現金は郵便で都内の空き部屋に送るよう指示されていました。現金を受け取る「受け子」の逮捕を避け、グループの摘発を免れるためだったとみられています。

捜査関係者によりますと、空き部屋を勝手に現金の送り先として指定し、届けられたあとにポストから盗み出すなどして回収するケースがあるということです。特殊詐欺事件では、こうした宅配便や郵便を悪用した「現金送付型」の手口が増えてきているということです。