高騰する“トレカ” 新たな手口で窃盗が相次ぐ どう防ぐ?

「トレーディングカード」、通称“トレカ”はイラストや写真が印刷されたカードで、収集して楽しんだり、対戦ゲームとして遊んだり、幅広い世代で人気です。

そのトレカには希少性から数百万円にのぼるものもあり、窃盗被害がたびたび起きています。

ことしに入ってからは「販売店の営業時間中にショーケースの鍵を開けてそっと盗まれる」という衝撃的な手口が相次いでいます。

まさか!営業時間中に堂々と…

渋谷区のトレカ販売店。ことし10月、窃盗の被害に遭いました。

1枚150万円以上する高額なカードを含め、販売価格でおよそ540万円相当が盗まれたのです。

その手口は…。

防犯カメラの映像

店内に入ってきた帽子にマスク姿の人物。

監視カメラや客がいる店内を見回し、この店で一番高額なカードの前で立ち止まりました。

そして、カードが飾ってあるショーケースの鍵を開け、上からカードを盗んでいきました。

ティアワン渋谷店 店長
「犯行時間でいうと5分くらいの話です。営業時間中に堂々と取っていかれるとは想定していなかったですね。正直、めちゃめちゃ怖かったです。あまりに堂々と取ってるんで。僕も含めてスタッフは気付いていたんですが、かなり客もいて、凶器を持っていると客に危害が加わってしまうと思って、カードは諦めようとなりました」

同じ手口でのトレカ窃盗は、ほかの店でも。

防犯カメラの映像

ことし10月、新宿駅すぐそばの販売店では、2人組の男がショーケースの鍵を開け、営業時間中に堂々とカードを抜き取っていきました。

被害は販売価格でおよそ300万円。

合わせて90点ほどが盗まれたといいます。

店内に並ぶ“高額”トレカ

合鍵のようなものが使われた同様の手口の窃盗事件は、ことしに入り都内で少なくとも6件起きていることが警視庁への取材でわかりました。

都内で去年確認されたトレカの窃盗は少なくとも8件ありましたが、すべて深夜に鍵やショーケースが壊されるなどしたものだったことから新たな手口とみられています。

窃盗の被害に遭った店の店内には高価なカードが並んでいます。

盗まれたのは人気の「ポケットモンスター」のカードでした。

300万円近いものも

ティアワン渋谷店 店長
「日本と中国はポケモンのイラストよりも、人間のキャラクターを描いたカードが高い印象があります。盗まれたのは高いカードで158万円ほど、安いものでも7、8万円するカードでした」

でも なぜ高騰?

もともとは数百円程度で売られていたカードですが、なぜこれほど高騰しているのでしょうか。

トレカの市場規模は拡大中

日本玩具協会によりますと、トレカの国内市場規模は急拡大しています。

2022年度は過去最高の2349億円で前の年より573億円伸ばしました。

3年前と比べても2倍以上に拡大しています。

おもちゃ全体の市場規模は現在の形で調査を始めた2001年度以来、過去最高を記録して9525億円となりましたが、その4分の1以上がトレカなどのカードゲームによって占められているのです。

10年以上 トレカ販売に携わるアドバイザー「異常な伸び方」

10年以上この業界に携わり、トレーディングカード販売店のセールス支援やアドバイス業を広く手がけている菊地正樹さんは特にこの数年のトレカ価格は「異常な伸び方」だったとしています。

その大きなきっかけがコロナ禍での“巣ごもり需要”だったといいます。

菊地正樹さん
「コロナで外出制限がある中、家に眠っていたカードがフリマアプリで高く売れたり、今も遊べると気付いた人たちがどんどん入ってきました。その中で1枚のカードに数十万、数百万、中には一千万とそれまでなかった値がつくものが出てきて、“投資”の対象にもなっていきました。長年この業界にいますが、トレカが投機・投資の対象になるのは予想外でした」

価格高騰はこの数か月、落ち着いてきたところもあるということですが『トレカ高騰』のニュースに接した人が新たに参入してきたり、コロナが明けて海外ユーザーによるカードの大量購入の動きが秋葉原を筆頭に始まっていて「人気が衰える様子はまだまだみられない」と話していました。

トレカ人気は幅広い世代に

都内のトレカ専門店で開かれたポケモンのトレカで対戦するイベントです。

子どもや若い世代だけでなく、子どものころにカードを集めていたという世代もイベントに参加しています。

数年前から参加しているという40代の夫婦は、カードの取り引き価格高騰に驚いているといいます。

40代の夫婦
「カードで遊んでいた高校生時代を懐かしんで夫婦で始めました。カードで対戦して遊ぶために2000枚ほど集めていますが、最近は手が出ないほど高額なカードも多く、価格の高騰に驚きます」

窃盗の手口が変化した理由は

価格が高騰し、幅広い客層を集めるトレカの販売店。

合鍵を使って盗む手口にはトレカの販売店が抱える“ある事情”を悪用したものでした。

店には客がひっきりなしに訪れるため、一日にショーケースを開ける回数が50回から100回にもなります。

開け閉めの手間を少なくするため、1つの鍵ですべてのショーケースが開くようになっている店が狙われたとみられます。

ティアワン渋谷店 店長
「何個も鍵を付けているとほかのお客さんが簡単に商品を買いづらくなってしまう。過度な防犯はしづらい印象はあります。カードゲームはカードで遊ぶことをメインに据えているので、宝石店のようなレイアウトにしてしまうと入りづらいし、簡単に気軽にカードで遊びづらい印象を与えてしまいます。お客さんはショーケース越しでカードの状態を確認して買う決心をする。本当に小さな傷でも価値が落ちてしまうものなので、どうしても実際に陳列していないと買いづらい印象を与えてしまいます」

トレーディングカードの専用のショーケースを販売するメーカーによりますと、販売店からは共通の鍵にしてほしいという要望がほとんどで、簡易な鍵は種類が限られることから、多くの店で同じ鍵が使われているのが現状だということです。

メーカーでは、店から防犯対策について助言を求められた際には、鍵はあくまで犯罪の抑止として備え付けているもので、補助錠を付けるなどの複数の対策を組み合わせるよう伝えているということです。

警察も防犯強化を呼びかけ

合鍵を使った新たな手口への対策強化のため、警視庁はカード販売店を実際に回って指導しています。

都内のすべての販売店に対して、補助の鍵を使って二重ロックにすることや高額なカードは本物を陳列するのではなくダミーに置き換えたり、スタッフの目に付きやすいレジの前に置いたりといった防犯対策を行って欲しいと呼びかけています。

ただ、急騰するカードに比べ、対策が追いついていない現実があります。

被害に遭った店の店長も「売る物がなくなってはしかたがない。なるべくレイアウトで高価なカードを死角に置かない、ダミーにする、電子錠を付けるという対策を1つでもしてリスクは減らしたい」と話していました。

“業界全体で対策に取り組む必要性”

多くの店舗でアドバイス業を行っている菊地さんも、市場が急拡大する中、窃盗などの防犯対策に業界全体で取り組む必要性があるとしています。

菊地正樹さん
「対策としてカードに保険をかけようとしても、『ただの絵が描かれた紙』とみなされて、数十円にしかカウントされないといった現状もあります。また、中古ブランド品を扱う店ではコピー品や盗品対策で警察との連携も進んでいますが、トレカの業界ではそうした連携がまだ十分ではありません。鍵を厳重にするなど個々の店での対策だけでなく、警察との連携をより強固にしていくなど業界全体として本格的に対策に取り組む必要があると思います」