【7日詳細】イスラエル ハマス 双方の死者1万1000人超

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パレスチナのイスラム組織ハマスが奇襲攻撃を行い、報復としてイスラエル軍がガザ地区への軍事作戦を開始してから7日で1か月です。双方の死者は1万1000人を超え、今後さらに増えることが懸念されます。

国連のグテーレス事務総長は6日、ニューヨークの国連本部で記者会見し「ガザの悪夢は人類の危機だ」と述べた上で、人道目的での停戦を強く訴えました。

パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの戦闘員が、イスラエル側に越境して民間人を相次いで殺害し、これに報復する形でイスラエル軍が軍事作戦を開始してから7日で1か月となります。

ハマスの壊滅を掲げたイスラエルの軍事作戦は「鉄の剣」と名付けられ、およそ20日間にわたる激しい空爆を経て10月下旬、ネタニヤフ首相が「戦争の第2段階に入った」として地上作戦を拡大しました。

イスラエル軍はガザ地区の住民に南部への退避を通告した上で、地上部隊を進めて最大の都市ガザ市を包囲し、11月5日にはガザ地区を軍事的に南北に分断したと発表しました。

イスラエル軍はハマスの拠点を破壊するためだとして、病院の周辺や人口が特に密集している難民キャンプなどへの攻撃を続け、多くの市民が犠牲になっています。

ガザ地区の当局によりますと、6日にも小児科の病院などに攻撃が行われあわせて8人が死亡したとしています。

双方の死者 1万1000人を超える

地元の保健当局によりますと、一連の衝突でガザ地区の死者は1万22人にのぼり、イスラエル側の死者も少なくとも1400人で、双方の死者は1万1000人を超えています。

このほか、240人以上が人質としてハマスに拘束され、解放をめぐる交渉が続いています。

衛星画像から見えたイスラエル軍 進軍の様子

イスラエル軍はパレスチナのガザ地区への地上侵攻を進め、最大の都市のガザ市を包囲しています。

その進軍の様子が人工衛星を運用するアメリカの企業、「プラネット」が撮影した最新の衛星画像から見えてきました。

イスラエル軍がガザ地区を南北に分断したと発表した翌日の今月6日に撮影された衛星画像からは、戦車や軍用車両が通った跡とみられるわだちが、地区を東西に横切る形ではっきりと確認できます。

わだちは、ガザ地区の中心部を東西に流れるワディ・ガザと呼ばれる川の北側で、地区を完全に横断し、イスラエル側から地中海の海岸線まで到達しています。

その進路を見ると戦車などの地上部隊は市街地を避けて農地を進んでいることがわかります。

建物などに囲まれた市街地での待ち伏せ攻撃などによる被害を避けるためとみられます。

いずれの跡も地上侵攻が行われる前の先月26日の衛星画像では確認できません。

同様のわだちの跡はガザ地区の北の境界から海岸線沿いを南に進んでいるものと、北東部から南進する2つのルートでも確認でき、イスラエル軍はガザ市を取り囲むように合わせて3つのルートで侵攻を進めているとみられます。

イスラエル軍 映像をSNSで公開

イスラエル軍は7日、「民間のインフラ施設で活動するテロリストを攻撃した」として、攻撃の様子だとする映像をSNSで公開しました。

映像は上空から撮影されたとみられ、建物で大きな爆発が起きたあと、そのすぐ近くでも複数の爆発が相次ぎ、爆発した場所が赤い丸で示されています。イスラエル軍はSNSへの投稿の中で、「大きな爆発の次の爆発は民間の区域にハマスの武器庫があったことを示している」と主張しています。

また、ガザ地区の市街地で撮影したとする映像もSNSで公開しています。映像では、外壁がめちゃめちゃに崩れ、骨組みを残すだけとなった建物の間を、イスラエル軍の兵士が歩いて進軍する様子や、建物の影から銃撃する兵士の姿などが確認できます。

建物が激しい爆発によって一瞬で破壊される様子や、重機で地面の土をすくっている様子も写っていますが、目的については明らかにされていません。

ハマス 新たな動画公開

イスラム組織ハマスの軍事部門、カッサム旅団は7日、SNSで、イスラエル軍に対し迫撃砲で攻撃しているとする新たな動画を公開しました。

映像の中で戦闘員は、木々の間や物陰に置かれた発射台を使って攻撃していて、なかには発射直後に上から土埃が降り注いでいる映像もあることから、地面の下から発射している可能性もあります。

“インドネシア病院はハマスの隠れみの”を否定

イスラエル軍の報道官は6日に公開した動画の中で、ガザ地区北部にある「インドネシア病院」が、ハマスの地下の指令拠点の隠れみのになっていると主張しました。

この病院はインドネシアの人道支援団体が資金援助をして2015年から稼働を始め、現在はパレスチナ当局が運営しています。

団体側は6日、ジャカルタで会見してイスラエル軍の主張を否定するとともに、「イスラエルの非難は、インドネシア病院を攻撃する前提条件になりかねない」と懸念を示しました。その上で「国際社会に対し、法律で明確に保護されている機関や施設、病院を保護するよう強く求める」と訴えました。

また、インドネシア外務省も7日に声明を発表し、「インドネシア病院は完全に人道的な目的でパレスチナ人の医療ニーズにこたえるために建設された」と述べ、改めてイスラエル軍側の主張を否定しました。

国民のおよそ8割がイスラム教徒で、世界で最もイスラム教徒の人口が多いと言われるインドネシアは長年、パレスチナを支援し、イスラエルとは外交関係がありません。

ネタニヤフ首相「終結後もガザ地区に責任持つ」

イスラエルのネタニヤフ首相は6日、アメリカのABCテレビのインタビューに応じました。

このなかでネタニヤフ首相は、戦闘終結後のガザ地区について「イスラエルは無期限で、安全保障全般の責任を担うことになる」と述べ、詳しいことは明らかにしなかったものの、イスラエルの安全保障のため関与を続ける考えを示しました。

また、戦闘の一時停止の可能性について「人質が解放されなければ、ガザでの停戦はない」とあらためて述べました。その上で、アメリカ・ホワイトハウスがイスラエル側と協議を行ったと明らかにした人道支援を目的とした「戦術的な戦闘の一時停止」について、ネタニヤフ首相は「ここで1時間行い、あそこで1時間行うというものだ」と述べ、現場の状況に応じて実施する短時間の戦闘の停止だと明らかにしました。

アフガニスタン1年分の爆弾を6日間で使用

イスラエル空軍は10月12日、イスラエル軍がガザ地区への軍事作戦を開始してから最初の6日間の空爆で、およそ6000発の爆弾を投下したと発表しています。この数は、アメリカ軍が2019年の1年間にアフガニスタンで投下した爆弾の数にほぼ匹敵します。

この数字を分析したアメリカの有力紙ワシントン・ポストは、2019年はイスラム主義勢力タリバンの施設などを狙って、最も空爆が多かった年だったとしています。アメリカ中央軍によりますと、2019年にアフガニスタン全土で投下した爆弾はあわせて7423発でした。

これについてワシントン・ポストは専門家の話として、「大勢の人が頻繁に避難場所を変えることを余儀なくされる中、イスラエル軍が軍事作戦を始めた当初と比べて民間人の巻き添え被害を正確に予測できていないおそれがある」という見方を伝えていて、今後、市街地での戦闘が本格化するなか犠牲者がさらに増えることが懸念されます。

安保理の緊急会合 決議案の協議は難航

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの軍事衝突をめぐり、国連の安全保障理事会では再び対応を話し合う緊急会合が開かれました。

事態打開を目指す決議案について協議が続けられていますが、「即時停戦」を求める中国やロシアなどと、イスラエルを擁護するアメリカが対立し、難航しています。

安保理の緊急会合は6日、非公開で行われ、先月に常任理事国のアメリカやロシアの決議案が相次いで否決されたことを受け、非常任理事国がとりまとめを進めている新たな決議案についても協議しました。

会合の後、今回の会合を要請した中国の張軍 国連大使とUAE=アラブ首長国連邦のヌサイベ国連大使がそろって会見し、ガザ地区の民間人を保護するための「人道的な停戦」が必要だと述べました。

一方、アメリカのウッド国連次席大使は記者団に対し、「人道的な戦闘の一時停止について協議した。その点を追求することに関心をもっているが、各国の間で意見の相違がある」と述べ、「停戦」を求めるか「戦闘の一時停止」を求めるかで対立があることを明らかにしました。

安保理では非常任理事国がとりまとめを進めている新たな決議案についても、アメリカと中国やロシアなどの対立によって協議は難航していて、ガザ地区の死者が1万人を超えたとされる中でも、安保理が一致した対応をとることができるかどうかは依然として不透明です。

バイデン大統領がネタニヤフ首相と電話会談

アメリカ・ホワイトハウスは6日、バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談し、人道支援を目的とした「戦術的な戦闘の一時停止」について協議したと明らかにしました。

ホワイトハウスが6日に発表した声明によりますと、バイデン大統領はネタニヤフ首相とガザ地区をめぐる情勢について協議し、人道支援を目的とした「戦術的な戦闘の一時停止」を実現させることについて話し合ったとしています。

バイデン政権はこれまで「人道目的の戦闘の一時停止」ということばを使ってきましたが、今回は「戦術的な戦闘の一時停止」という表現になっています。

表現の違いについて、ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議はNHKの取材に対し「戦術的」ということばを使った意図については触れず、これまでの姿勢と変わらないと説明しています。また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は、両者は数日以内に再び協議することで合意したと明らかにしました。

さらに、イスラエルとイスラム組織ハマスとの間の停戦については「現時点ではハマスを利するものであり、支持しない」と改めて述べ、あくまでも停戦ではなく、比較的短期間とされる戦闘の一時停止を求めていくとしています。

「停戦」と「一時的な戦闘の停止」の違い

国連のグテーレス事務総長やアラブ諸国などが求める「停戦」と、アメリカが求める人道目的での「一時的な戦闘の停止」とでは、対象となる時間や場所の範囲に違いがあります。

OCHA=国連人道問題調整事務所によりますと、「停戦」は多くの場合、戦闘地域の全体で長期間にわたって戦闘を停止することを指します。戦闘の当事者による合意に基づくもので、通常は対話の促進を目的とし、恒久的な政治的解決につながる可能性もあるとしています。

これに対し、人道目的での「一時的な戦闘の停止」は、あくまで人道支援活動のために時間や場所を限定して戦闘を停止することだとしています。アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官も2日、「一般的な『停戦』は、戦線全体における戦闘の停止を指す。『一時的な戦闘の停止』は、人道支援物資を運び込んだり、民間人を避難させたりするための、一時的、局地的な戦闘の停止だ」という見解を示しています。

アメリカは、ガザ地区への必要な物資の搬入や民間人の避難などのために「一時的な戦闘の停止」を求める一方で、「停戦」は現時点ではハマスを利することになるとして反対しています。

ニューヨークで双方の支持者によるデモ

軍事衝突が始まってから1か月となるなか、アメリカ・ニューヨークでは6日、イスラエルとパレスチナのそれぞれの支持者によるデモが行われました。

このうち、パレスチナを支持するデモは、自由の女神像の周りで行われました。おそろいの黒色のTシャツを着た人たちが、「ガザの人たちを生かして」とか「今すぐ停戦を」などと訴えました。主催した団体によりますと、およそ500人が参加したということです。

デモに参加した、自身もユダヤ系だという女性は「ガザで行われていることは大量虐殺であり、私たちユダヤ人の価値観に反しています。ガザやパレスチナの人々への破滅的な暴力をやめるよう、今すぐ停戦を求めます」と話していました。

一方、イスラエルを支持するデモは、セントラルパークの近くで数ブロックを封鎖して行われ、アメリカメディアは、およそ1万人が集まったとみられると伝えています。

参加した人たちは、イスラエルの国旗を手に持ったり身にまとったりして、ハマスに誘拐されたとする人の写真を掲げながら、「彼らを家に帰して」などと訴えていました。

イスラエルに家族がいるという女性は、「ハマスが罪のない女性や子どもを殺害したことを非難し、イスラエルに連帯の姿勢を示すために来ました。すべての人質が家に戻るまで停戦はありえません」と話していました。

ガザ地区 人道危機が深刻化(国連まとめ)

イスラエル軍の激しい攻撃が続くガザ地区では、食料や医薬品、燃料などの物資が不足し、人道危機が深刻化しています。

【食料】
OCHA=国連人道問題調整事務所の5日の発表によりますと、コメや植物油、豆類など必需品となっている食料の備蓄は、3日以内に枯渇する見通しだということです。

エジプト側から搬入されるツナ缶など、すぐに食べられる食料は南部で配られているものの、ガザ市など北部では地上作戦が激しさを増す中、数日間、食料の供給が完全に停止しているということです。

また、ガザ地区の製粉工場は電力や燃料の不足のため、主食のパンの原料の小麦を加工できない状態となっています。一部の店ではパンの提供を続けているものの、住民は空爆の危険にさらされながら、数時間にわたって列を作っているとしています。

【水】
ガザ市など北部では、燃料不足ですべての公設の井戸が稼働を停止したことなどから、数十万人が深刻な水不足に直面しているということです。

南部では、イスラエル側から水を供給する2つのパイプラインは機能しているということですが、すべての公設の井戸が稼働を停止しているうえ、2つある海水を淡水に変える装置のうち1つが停止し、もう1つは最低限の稼働となっています。

ガザ地区では今月に入って下水道の施設なども攻撃で大きな被害を受けていて、衛生環境の悪化が懸念されるとしています。

【支援物資】
ガザ地区には、エジプトとの境界にあるラファ検問所から10月21日以降、断続的に支援物資を積んだトラックが入っていますが、今月4日までの2週間余りの間の総数は451台で、一連の衝突の前の1日平均500台と比べて大幅に少なくなっています。

さらに、燃料の搬入は認められておらず、国連は燃料も含めて、搬入する支援物資の量を増やす必要があると訴えています。

ガザ地区 医療・人的・建物被害

【医療環境】
一連の衝突が始まって以降、ガザ地区では医療従事者の犠牲や被害を受ける医療機関が相次ぎ、医療環境は危機的な状況に陥っています。

OCHA=国連人道問題調整事務所によりますと、今月5日までに、130人の医療従事者が攻撃によって死亡しました。

また
▼入院設備のある医療機関の4割と
▼初期診療を行う医療機関の7割余りが
攻撃による被害や燃料不足のため閉鎖しているということです。

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関などの3日の発表によりますと、ガザ地区には推定で5万人の妊婦がいて、
▼攻撃による心理的なストレスで流産や死産、早産が増えるおそれがあるほか
▼多くの医療機関が攻撃で被害を受けているため十分なケアを受けられず、妊婦が死に至るリスクも高まっているとして、警鐘を鳴らしています。

【国連スタッフの犠牲】
一連の衝突では、国連のスタッフや報道関係者の犠牲も出ています。

OCHAなどの国連機関や国際NGOの代表18人が5日、連名で出した声明によりますと、10月7日以降、亡くなった国連スタッフの数は88人に上ったということです。

これは、ひとつの紛争で亡くなった国連スタッフの数としてはこれまでで最も多くなっているということです。

【ジャーナリストの犠牲】
また、報道関係者が犠牲になるケースも相次いでいて、ニューヨークを拠点に報道の自由を守る活動をしている国際的なNPO「CPJ=ジャーナリスト保護委員会」は11月6日の時点で、ガザ地区やイスラエル、それにレバノンでジャーナリストなど報道関係者が少なくとも36人死亡したとしています。

このうち、
▼31人がパレスチナ人
▼4人がイスラエル人
▼1人がレバノン人 だということです。

【建物被害】
ガザ地区の住宅の被害について、OCHAは5日の発表で、
▼4万棟以上が破壊され
▼22万棟以上が部分的に損傷し
被害を受けた住宅は少なくとも全体の45%に上るとしています。

国連 グテーレス事務総長「ガザの悪夢は人類の危機だ」

パレスチナのガザ地区をめぐる軍事衝突が激しくなる中、国連のグテーレス事務総長は6日、ニューヨークの国連本部で記者会見し「ガザの悪夢は人類の危機だ」と述べた上で人道目的での停戦を強く訴えました。

このなかでグテーレス事務総長は、「ガザの悪夢は人道危機を超えている。人類の危機だ」と指摘したうえで、「イスラエル軍は地上作戦と爆撃で、民間人、病院、難民キャンプ、モスク、教会、国連施設を攻撃し、誰1人として安全ではない」と述べ、ガザ地区で罪のない民間人の犠牲が増えていると非難しました。

一方で、ハマスについても10月7日の攻撃と人質の拘束を改めて非難したうえで、「民間人を人間の盾として使い、イスラエルに向けて無差別にロケット弾を打ち続けている」と述べました。

その上で、グテーレス事務総長は「ガザは子どもたちの墓場になりつつある。進むべき道は明確だ。今すぐ、人道目的での停戦を。今すぐ、ガザの人質の無条件の解放を。今すぐ、民間人、病院、国連施設、避難所の保護を。今すぐ、ガザにより多くの食料、水、医薬品を。そして何よりも燃料を」と訴えました。

南アフリカ政府 「ジェノサイドだ」とイスラエルを強く非難

南アフリカ政府は6日、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃で多数の市民が犠牲になっていることについて「ジェノサイドだ」と強く非難し、イスラエルに派遣している外交団を呼び戻し、関係の見直しについて協議すると発表しました。

南アフリカのラマポーザ大統領は、イスラエル軍とハマスとの軍事衝突以降、パレスチナとの連帯を重視する姿勢を明確にしています。

また、かつての白人政権が行ったアパルトヘイト=人種隔離政策と同じような方法でイスラエル政府はパレスチナの人々を抑圧してきたとも非難していて、イスラエル政府が反発を強めていました。

EU首脳などからイスラエルの対応に批判的な声も

イスラエル軍による軍事作戦でガザ地区での死者が増えるなか、イスラエルには自衛の権利があるとしているEU=ヨーロッパ連合の加盟国の首脳などからは、イスラエルの対応に批判的な声も上がるようになっています。

このうち、ベルギーのデクロー首相は6日記者団に対し「テロリストを排除するなら、攻撃はその目的と釣り合いが取れたものでなければならない。テロリスト1人を排除するために難民キャンプを攻撃し、何十人もの市民が犠牲になるのは釣り合いが取れているとは言えず、容認できない」と述べました。

また、アイルランドのマーティン副首相は11月1日の声明で、「イスラエル軍による難民キャンプへの空爆で、多数の犠牲者が出ていることに強くショックを受けた」などとしたうえで、「人道上の停戦と、市民への人道支援の大幅な強化が早急に必要だ。これ以上待つことはできない」と危機感を示しました。

こうしたなか、EUのフォンデアライエン委員長は6日、ガザ地区への人道支援を2500万ユーロ、日本円でおよそ40億円追加し、総額1億ユーロ規模にすると発表しました。

住民の犠牲が増えるにつれアメリカの姿勢に変化

アメリカのバイデン政権は、イスラエルがイスラム組織ハマスの攻撃を受けた直後からイスラエルを強く支持する立場を鮮明にしていますが、イスラエル軍による攻撃でガザ地区の住民の犠牲が増えるにつれ、その姿勢には変化が生じています。

バイデン大統領はイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を受け、その日(10月7日)のうちに記者会見を開き、ハマスを強く非難しました。その上で「アメリカはイスラエルへの支援を惜しまない」と述べて、イスラエルへの強い支持を打ち出しました。

アメリカの歴代政権は国内で「イスラエル・ロビー」と呼ばれるユダヤ系の団体が政財界に強い影響力を持っていることなどを背景に、党派に関わらず、一貫してイスラエルを支持してきました。

今回のハマスによる攻撃後も「イスラエルは自国を防衛する権利がある」として、迎撃ミサイルシステム「アイアンドーム」で使用するミサイルを供与すると発表するなど、軍事支援を続けています。

一方で、ガザ地区で住民の犠牲が増えるにつれ、アメリカ国内でも停戦を求める声が高まり、政権高官からは人道支援を重視する姿勢を強調する発言が、目立つようになりました。

バイデン大統領が10月18日にイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相との会談後に行った演説では、イスラエルへの連帯を改めて示す一方、「パレスチナの大多数の住民はハマスとは異なる」と述べて、パレスチナに対して1億ドルの人道支援を表明しました。

また、10月24日にはブリンケン国務長官が国連の安全保障理事会の閣僚級会合でガザ地区への人道支援を行うため、「戦闘の一時的な停止」を検討すべきだと打ち出しました。

一方、国連やアラブ諸国などが求める「停戦」については、ハマスを利することになるとして反対しています。ガザ地区へ必要な物資を搬入し、人質を含めた民間人を安全に退避させるためには、時間や場所を限定した「一時的な停止」を行うべきだというのがアメリカの立場です。

ただ、ガザ地区での人道危機がいっそう深刻になる中、「停戦」に否定的な姿勢をとるバイデン政権に対する国内外からの風当たりは、日に日に強まっています。

アメリカ 世論調査 若者が他の世代と比べてパレスチナ寄りの姿勢

アメリカのキニピアック大学が11月2日に発表した世論調査では、「ハマスの攻撃に対するイスラエルの行動を支持するか」という質問に対し、
▽「支持する」と答えた人が50%
▽「支持しない」とした人が35%
と支持するとした人が支持しないとした人を15ポイント、上回っています。

しかし、この回答を18歳から34歳の人たちに限って見てみますと、
▽「支持する」とした人が32%なのに対し
▽「支持しない」とした人が52%にのぼり
若者の間では、支持しないとした人が逆に20ポイント上回っています。

一方「アメリカがイスラエルに対してハマスとの戦闘のために軍事支援を行うことを支持するか」という質問に対しては、「支持する」と答えた人が51%と半数以上にのぼっています。

しかし、このうち18歳から34歳の人たちに限定すれば
▽「支持する」とした人は29%にとどまり
▽「支持しない」とした人が65%にのぼっています。

若者が他の世代と比べてパレスチナ寄りの姿勢を示していることについて、アメリカの世論と選挙に詳しいジョージ・ワシントン大学のトッド・ベルト教授は「若者は差別と人権に対しより敏感で、抑圧される側に共感する傾向が強い」と分析しています。

イランにあるハマス事務所の代表の主張は

ハマスの後ろ盾となってきたイランとのパイプ役を10年以上にわたって担ってきたイランにあるハマス事務所のハレド・カドミ代表がNHKの取材に応じました。

ハマスが仕掛けた奇襲攻撃により始まった衝突で、結果的にパレスチナの市民が多く犠牲になっていることに責任はないのかとの質問には「われわれは占領という歴史上、最もひどい罪から自分たちを守るために対応しているので、10月7日に始めたことを狭い視点で見ないで欲しい。われわれは数十年もの間、自分たちを守ろうとしてきた」と述べ、長年にわたって続くイスラエルによる占領に対抗するための攻撃だったと正当化しました。

拘束している人質について「イスラエル人以外は無条件で、解放する準備がある。しかし、残念なことに、イスラエルによる爆撃が続いているため、安全上、解放できる状況ではない」と述べ、人質の解放が進まない理由はイスラエル側にあると主張しました。

そして、イスラエル側による攻撃の巻き添えとなって死亡した人質が多くいると主張した上で「彼らはほかの住民と同じように殺された。その多くはイスラエル人以外だった。イスラエル人は一部だった」として外国籍を持つ人質が多く死亡していると主張しました。

イランの外交アナリスト「イランの狙いはハマスの存続」

イスラム組織ハマスは、イスラエルとアメリカに抵抗するイラン主導のネットワーク「抵抗の枢軸」を構成する組織の1つです。

イランがハマスを一貫して支援する理由について、イランの外交アナリスト、アフマド・ゼイダバディ氏は「イランは現体制が誕生したときから国際秩序に挑戦し、アメリカやその同盟国などを永遠の脅威とみなすことを原理としてきた。この原理を共有するハマスが存続できないような事態になれば、『抵抗の枢軸』の土台が揺らぎかねない」と指摘しました。

一方、イラン自体がイスラエルを攻撃する可能性については「イスラエルに戦いを挑むことはアメリカやNATO=北大西洋条約機構との破滅的な戦いを意味し、イランにはそんな戦争の用意はない」と否定的な見方を示しました。

その上で「ガザ地区での民間人の犠牲がイスラエルに停戦を求める国際的な圧力になり、停戦が実現すればハマスにとっては勝利を意味する。イランはそれを期待している」として、停戦に持ち込み、ハマスを存続させることがイランの当面の狙いだと指摘しました。

人質のイスラエル平和活動家の息子「安全を最優先に」

1か月前からガザ地区で人質にとられているイスラエルの平和活動家ビビアン・シルバーさんの息子でテルアビブに住むヨナタン・ザイゲンさんは、襲撃から1か月となるのを前にNHKのインタビューに応じました。

ザイゲンさんは「政府が私の母やほかの人質を連れて帰ってきてくれるのか不安になります」と苦しい胸の内を明かしました。

その上で、「ガザ地区での戦闘によって人質に危険が及んだり、ハマスとの交渉の妨げになったりするのではないかと心を痛めています」と話し、軍事行動で圧力をかけるのではなく、人質の安全を最優先にしてほしいという考えを示しました。

検問所を通じたガザ地区からのけが人の搬送など再開

エジプトのメディアによりますと、4日から停止していたラファ検問所を通じたガザ地区からエジプト側へのけが人の搬送と外国籍の人の退避が現地時間の6日午後から再開したということです。

また、エジプト側からガザ地区への支援物資の運び込みも再開したとしています。

ラファ検問所での往来が停止したことについて、エジプトの赤新月社の関係者はガザ地区で3日午後に2台の救急車がミサイル攻撃を受けたあと、ハマス側が外国籍の人の退避を停止させているとの認識を示していました。

エルサレムで警察官が少年に刺され死亡

パレスチナ人が多く住む東エルサレムにある警察署の近くで6日、イスラエルの警察官2人がパレスチナ人の16歳の少年に刃物で刺されました。

地元メディアによりますと、このうち、20歳の女性の警察官は病院に運ばれましたがその後、死亡が確認され、もう1人は軽いけがをしたということです。

パレスチナ人の少年は駆けつけた警察官に射殺されたほか、イスラエルの治安部隊は事件に関与したとして複数の容疑者を逮捕したとしています。

エルサレムでは10月30日にも、イスラエルの警察官がパレスチナ人に刺される事件があったばかりで、イスラム組織ハマスとイスラエル軍との戦闘が激化する中、さらなる治安の悪化が懸念されています。