「津波防災の日」 各地で南海トラフ巨大地震を想定した訓練

5日は、東日本大震災を受けて制定された「津波防災の日」です。高知市や宮崎県で、南海トラフ巨大地震の発生を想定した避難訓練などが行われました。

高知市の訓練は、南海トラフ巨大地震によって震度6強の揺れを観測し、津波のおそれがあるという想定で行われ、市中心部の帯屋町商店街の関係者などおよそ50人が参加しました。

このうち、眼鏡の販売店では緊急地震速報が流れると、店主が体をかがめて机の下に入り身を守っていました。

そして、参加者たちはそれぞれ安全を確認したあと、津波から避難する場所として指定されている近くの図書館まで歩いて移動し、階段を使って3階に避難していました。

また、図書館の職員から、館内には3日分の水や食料などが備蓄されていると説明を受けていました。

高知市によりますと、震度6強の地震が起きた場合、この商店街の付近では津波によって早ければ1時間で1メートルから2メートル浸水するとされていて、商店街では今後も定期的に訓練を行い、避難の手順を確認したいとしています。

訓練に参加した男性は「避難経路や避難場所を確認できてよかったです。地震が起きた際には、安全をしっかり確保した上で、避難したいと思います」と話していました。

宮崎 7自治体が総合防災訓練

宮崎県内の各地でも、南海トラフ巨大地震を想定した総合防災訓練が行われました。

訓練は震度7の地震が発生し、大津波警報が発令されたという想定をもとに県内7つの自治体で行われ、各自治体の職員のほか、消防や自衛隊、インフラ関連などあわせて100の機関からおよそ1000人が参加しました。

メイン会場となった高鍋町の小丸川の河川敷では、駆けつけた消防隊員がけが人を担架で運んだり、県の防災ヘリが建物に取り残された人をつり上げたりして、救助の手順を確認しました。

また、遠隔操作が可能な重機を使って崩落した道路の土砂を取り除く作業や、発電装置を積んだトラックを自衛隊のヘリで運ぶ訓練も行われました。

会場には、災害時に緊急の基地局となる携帯電話各社やNHKの特殊車両も展示され、多くの人たちが見学に訪れていました。

このほか、避難所となる体育館では地元の人たちがおにぎりを作って、炊き出しの練習をしました。

宮崎県危機管理課の佐藤恒昭課長補佐は「関係機関との連携を確認し防災能力を向上するとともに、今後さらに県民に対しての防災意識を高めていきたい」と話していました。

徳島 高校生が企画 “防災を考えてもらうイベント”

南海トラフ巨大地震が発生した場合、最大5メートルの津波のおそれがある徳島市では、高校生が中心になって、若い世代に防災を考えてもらおうというイベントが開かれました。

このイベントは、徳島市内の高校生が初めて企画し、親子連れなどおよそ320人が参加しました。

まず南海トラフ巨大地震が発生したという想定で避難訓練が行われ、参加者は高台にある避難場所への経路を確認しました。

避難場所では高校生たちのアイデアで、キッチンカーで使える200円から500円の割引券の抽せん箱が設けられ、参加者は割引券を引いて、料理を買い求めていました。

また、家族で防災について考えるブースでは、子どもたちが津波で浸水が想定される場所を示した地図に、シールを貼るなどして楽しみながら避難場所を学んでいました。

家族で参加した30代の女性は「避難場所までの経路もわかっていなかったので、友達と一緒に参加しました。子どもも楽しめてとてもよかったです」と話していました。

企画した高校生の戎井光来さんは、「若い世代も楽しんで防災について考えてもらえてよかった。今後もイベントを継続して啓発していきたい」と話していました。

津波防災に取り組む住民らがパネルディスカッション

また、内閣府がオンラインでパネルディスカッションを開催し、津波防災に取り組む住民や、専門家らが参加しました。

東日本大震災で、住民の1割が犠牲になった岩手県大槌町の安渡地区で町内会長をしている佐々木慶一さんは、避難誘導にあたっていた住民が津波に巻き込まれて亡くなった教訓を踏まえ、地震が起きてから15分後には、救助を中止して避難する新たなルールを設けたことなどを発表しました。

また、神奈川県横須賀市の海沿いのマンション住民らでつくる協議会で、会長を務めている安部俊一さんは、自力での避難がむずかしい人や、避難生活で支援が必要な人を把握するため、自主防災組織で居住者の台帳を作り、毎年、想定を変えながら訓練を実施していると話しました。

津波工学が専門の東北大学 今村文彦教授は、「防災に取り組む機会が少なかった地域も、津波防災の日をきっかけに取り組みをすすめてほしい」と呼びかけていました。

和歌山 広川町でも訓練

また、11月5日は国連が定めた「世界津波の日」です。その由来となった故事が残る和歌山県広川町では、電車の走行中に南海トラフ巨大地震や津波が発生したという想定で避難訓練が行われました。

この訓練は、広川町とJR西日本が行い、地元の小学生などおよそ250人が参加しました。

訓練は、JRきのくに線の電車が走行中に南海トラフ巨大地震が発生し、緊急停止したという想定で始まり、避難を呼びかける車内アナウンスが流れると、乗客たちは、乗務員の指示に従って、扉から1メートルほど下の線路に降りました。

そして、津波を避けるため、乗務員の誘導で、およそ500メートル離れた高台にある避難場所の神社まで走って避難しました。

「世界津波の日」は江戸時代、「安政南海地震」が起きた旧暦の11月5日に、現在の広川町で商人が稲の束に火をつけて、村人に津波の危険を知らせたという「稲むらの火」の故事が制定の由来となっています。

訓練に参加した小学5年生の女の子は「飛び降りるのは少し怖かったけど、実際に地震が起きたら、こういうことをしないといけないと分かり、勉強になりました」と話していました。

JR西日本近畿統括本部安全推進部の山崎健太課長は「スムーズに避難できていてよかったと思います。こうした訓練を日々、積み重ねることで、安全の確保に取り組んでいきたい」と話していました。