Jリーグカップ アビスパ福岡 初優勝 クラブ史上初タイトル

サッカーの国内3大タイトルの1つ、Jリーグカップの決勝が国立競技場で行われ、アビスパ福岡が浦和レッズに2対1で勝って初めての優勝を果たしました。アビスパはクラブ史上初のタイトル獲得です。

Jリーグカップは、リーグ戦、天皇杯と並ぶサッカーの国内3大タイトルの1つです。

国立競技場で行われた4日の決勝は、初めての優勝を目指すアビスパと7年ぶり3回目の優勝を目指すレッズが対戦し、6万1000人を超えるサポーターが詰めかけました。

アビスパは、前半5分、ゴール前に走り込んできた前 寛之選手が右サイドからの鋭いパスを押し込んで先制すると、前半終了間際には左サイドからのパスを宮 大樹選手が左足で冷静に流し込んで2点リードで試合を折り返しました。

後半はレッズの攻勢を受け、22分にゴール前でロングパスを受けた途中出場の明本考浩選手に左足を振り抜かれて1点差に迫られました。

それでもレッズの猛攻を最後まで体を張って守り抜いたアビスパが2対1で勝ち初めての優勝を果たしました。

アビスパはクラブ史上初のタイトル獲得です。

一方、レッズはアビスパより長くボールを支配してゴール前に攻め込みましたがチャンスを決めきれず、逆に持ち味の堅い守りを崩されて7年ぶり3回目の優勝はなりませんでした。

アビスパ福岡 選手 監督の談話

MVP 前寛之「クロスは意識していた」

先制ゴールを決めてMVPを獲得したアビスパ福岡の前寛之選手は「たくさんの方に笑顔を届けることができてよかった。本当に多くのサポーターが来てくれて、選手を後押ししてくれた」と話しました。

先制ゴールについては「紺野選手からのクロスは意識していた。いいボールが来たし、あのタイミングで走り込んで合わせることができてよかった。大舞台で浦和レッズを相手に早い時間で先制点がとれたことは大きい意味があった」と振り返りました。

その上で初優勝については「大きな1歩だと思うし、これから多くのタイトルを重ねていくクラブになれる1歩だと思う」と話していました。

2アシスト 紺野和也 「イメージどおり」

2つのアシストをマークしたアビスパ福岡の紺野和也 選手は「多くのサポーターが後押しをしてくれて、優勝が決まったあとは一緒に喜ぶことができて自分も泣いてしまった。それくらいうれしかった」と笑顔で話していました。

2つのアシストについては「仕掛けていくことが自分の特徴なので、浦和レッズの堅いディフェンスを少しずつ崩してチャンスを作っていこうと思っていて、イメージどおりになった。練習どおりのプレーだった」と振り返りました。

その上で今後に向けては「リーグ戦では8位以上を目標にしていて、レッズとも今後戦うので、いい順位で終わりたいし、アシストやゴールでもっと貢献したい」と抱負を述べました。

1ゴール 宮大樹「練習してきたこと出せた」

アビスパ福岡の宮 大樹選手は、前半終了間際コーナーキックからの一連のプレーで挙げたみずからのゴールについて「今シーズン、僕自身がセットプレーから点をとれていなかったが、練習してきたことをこの大きな舞台で出せた。多くのサポーターが来てくれたのでそのサポーターの前で優勝することができてうれしい」と喜びを語っていました。

キャプテン 奈良竜樹「ここまで頑張ってきてよかった」

アビスパ福岡のキャプテン奈良竜樹選手は、試合直後のインタビューで「仲間に恵まれて、サポーターに恵まれて、みんなで喜べる瞬間を味わえた。ここまで頑張ってきてよかったと思う。上手でもなく華麗でもなかったが、全員が体を張って最後の最後までアビスパらしい戦いができた。優勝できてうれしい」と感慨深げに振り返りました。

長谷部監督「歴史は変わった」

アビスパ福岡の長谷部茂利監督は「ここまで来るのに時間はかかったが、優勝を勝ちとる力をつけられたのをうれしく思う。やってきたことが間違いではなかった。信じてついてきてくれた選手やスタッフ、サポーターを含めて福岡のみなさまにお礼が言いたい」と喜びを語りました。

また、浦和レッズのサポーターの大声援の中での試合になったことについては「レッズのサポーターが盛り上げて本気のレッズに自分たちが真っ向勝負で戦うことができた。強くてうまい相手に自分たちがひるまずに挑み続けることができたと思う」と振り返りました。

そしてクラブ史上初のタイトル獲得については「何年もずっとタイトルを取れないというチームになるか、ここで取って“これからも取るんだ”というチームになるかのライン上だったと思う。きょうは取れたので、歴史は変わった。クラブは上を目指す方向に変わったと思う」と充実した表情で話していました。

浦和レッズ 選手 監督の談話

キャプテン 酒井宏樹「悔しさしかない」

浦和レッズのキャプテン、酒井宏樹選手は「悔しさしかない。決勝で負けるというのはそういうこと。それでもプロとして切り替えなければいけない。次の試合に向けていい準備をしていきたい」と悔しさをにじませながら話していました。

マチェイ・スコルジャ監督「通常しないような失点」

マチェイ・スコルジャ監督は「試合の立ち上がりがひどいものになってしまい、通常しないような失点をしてしまった」と序盤で先制ゴールを許したシーンを振り返りました。

そのうえで「アビスパ福岡にはおめでとうと言いたい。きょうは悲しい1日になってしまったが、立ち上がって次に向かわないといけない」と話していました。

浦和レッズ攻略の鍵は “低く速いクロス”

Jリーグ加盟から28年目で悲願のクラブ初のタイトルを手にしたアビスパ福岡。

堅い守りが持ち味の浦和レッズ攻略の鍵は一瞬の隙を突く“低く速いクロス”でした。

レッズは今シーズン、J1のリーグ戦での失点が第31節までで「22」と最も少ないチームです。

決勝の大舞台、アビスパは堅守を誇るレッズから2つのゴールをもぎ取りました。

前半5分にはゴール前に走り込んできた前寛之選手が、前半終了間際にはコーナーキックからの一連のプレーで宮大樹選手がゴールネットを揺らしました。

この2つのゴールを生んだのは、いずれも紺野和也選手からの“低く速いクロス”でした。

2つのアシストをマークした紺野選手は、試合後「相手のディフェンス陣はヘディングが強いので、間に速いボールを入れて触るというのが自分たちの戦い方だった」と狙いを明かしました。

レッズのディフェンダーには日本代表として去年のワールドカップに出場した酒井宏樹選手を中心に1メートル85センチ以上の選手が多くいます。

このためゴール前は高さではなく、“低く速いクロス”を入れて勝負するというのがチームの共通認識でした。

アビスパの長谷部茂利監督は「リーグ戦でもう1回対戦するので」と多くを語りませんでしたが、狙いどおりのゴールに確かな手応えを感じている様子でした。

“低く速いクロス”で、リーグ屈指の堅守を誇るチームから2点を奪い、後半は全員が体を張った守りで勝ちきったアビスパ。

キャプテンの奈良竜樹選手が「上手でもなく華麗でもないが、最後の最後までアビスパらしい戦いができた」と胸を張った戦いぶりでチームの歴史に新たな1ページを刻みました。

アビスパ福岡とは

アビスパ福岡は福岡市をホームタウンとするクラブで、1982年創部の中央防犯サッカー部を前身としています。

1993年にJリーグが始まって以降、静岡県藤枝市で「中央防犯FC藤枝ブルックス」としてJリーグ参入を目指して活動していましたが、1995年サッカークラブの誘致を進めていた福岡市の要請でホームタウンを移し、「福岡ブルックス」となりました。

その後、わずか1年で「アビスパ福岡」としてJリーグに加盟しましたが成績は振るわず、2001年のシーズンにJ2降格が決まり、以降はJ1に昇格しても1年で降格するシーズンが続きました。

2020年に現在の長谷部茂利監督が就任し、1年でJ1昇格を果たすと、2021年のシーズンはクラブとして最高の8位となりました。

今シーズンは、リーグ戦の第31節を終えて8位につけているほか、天皇杯ではクラブとして初めてベスト4に入りました。

ここまで国内3大タイトルを獲得したことはなく、今回のJリーグカップが初めてのタイトルとなりました。