ガザ地区最大の都市 ガザ市を「包囲した」イスラエル軍が発表

パレスチナのガザ地区で地上作戦を進めるイスラエル軍は最大の都市、ガザ市の包囲を完了したと発表しました。
一方、イスラエル北部のレバノン国境に近い町にはイスラム教シーア派組織ヒズボラが発射したとみられるロケット弾が着弾し、南のガザ地区に加えて北部でも戦闘が激しくなることが懸念されます。

ガザ地区への空爆や地上部隊による市街地への攻撃を続けているイスラエル軍は2日、最大の都市、ガザ市の包囲を完了したと発表しました。

イスラエル軍のトップ、ハレビ参謀総長は記者会見で、「われわれはガザ市を包囲しているだけでなく、市内の重要な地域で活動している。ハマスの中核となる施設に入り込んで地下と地上の標的を破壊し、テロリストなどを殺害している」と述べ、戦闘がすでにガザ市の市街地に及んでいることを明らかにしました。

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの間では激しい戦闘が続いていて、2日にはジャバリア難民キャンプの大勢の住民が避難する国連機関が運営する学校で爆発があり、地元の保健当局は27人が死亡したと発表しています。

さらに、同じガザ地区北部のシャーティ難民キャンプでも学校の校庭に砲弾が着弾したほか、地元当局はガザ地区中部のブレイジ難民キャンプでも空爆があり、少なくとも15人が死亡したとしています。

ハマスの報道官は現地のテレビ局に、「イスラエル軍によって南北をつなぐ道路が分断され、避難する人のための安全な道路が失われた」と述べ、けが人を南部に運ぶことができないと訴えました。

10月7日から始まったイスラエルとハマスとの衝突による死者はガザ地区側で9061人、イスラエル側で少なくとも1400人に達しています。

一方、イスラエル側ではレバノン国境に近い北部の町、キリヤット・シュモナで、敵対するイスラム教シーア派組織のヒズボラが発射したとみられるロケット弾が市街地に着弾し、2人がけがをしました。

これを受けてイスラエル軍はレバノンにあるヒズボラの軍事施設などを攻撃したということです。

南部で境界を接するガザ地区で大規模な軍事作戦を続けるイスラエルは、北部でもヒズボラへの対応を余儀なくされていて、戦線が拡大して衝突が激しくなることが懸念されます。

「ヒズボラ」とは?レバノン政府の正規軍しのぐと言われる戦力

ヒズボラはイランを後ろ盾として、イスラエルと激しく敵対してきたレバノンのイスラム教シーア派組織です。

イスラエル国家安全保障研究所が10月19日にまとめた報告書によりますと、5万人から10万人の戦闘員を抱えていると推定されています。

射程が300キロあり、テルアビブなどイスラエルの主要都市を攻撃できる短距離弾道ミサイルをはじめ、保有するミサイルやロケット弾は15万発にのぼると指摘されています。

また、攻撃や偵察用に、最大400キロの飛行が可能な無人機も保有しているということです。

ヒズボラはもともと1982年、レバノンに侵攻したイスラエルに抵抗する民兵組織として発足し、国内では政党としても活動して国政に強い影響力を持つほか、戦力はレバノン政府の正規軍をしのぐと言われています。

2006年、ヒズボラがイスラエル兵を拉致したことをきっかけに、イスラエルとの間で1か月余りにわたる大規模な戦闘に発展した際には、レバノン側でおよそ1200人、イスラエル側でおよそ160人が死亡したとされています。

また、隣国シリアでもヒズボラはアサド政権を支援して内戦に介入することで足場を築き、イギリスのシンクタンク、国際戦略研究所が発行する「ミリタリー・バランス」は7000人から8000人の戦闘員が活動すると指摘しています。

このため、ヒズボラはイスラエルに対し、南のハマスと連携しながら、北からたびたび攻撃を加えるとともに、北東のシリアからもにらみをきかせる存在となっています。