政治
ことしの「秋の叙勲」4075人が受章
ことしの「秋の叙勲」を受章するのは、
「旭日大綬章」が14人、「瑞宝大綬章」が2人です。
また、
「旭日重光章」と「瑞宝重光章」があわせて43人、
「旭日中綬章」と「瑞宝中綬章」があわせて368人、
「旭日小綬章」と「瑞宝小綬章」があわせて842人など、
全体で4075人となっています。
このうち、民間からの受章者は1913人と全体の47％を占め、女性の受章者は411人と全体の10％となっています。
「旭日大綬章」は、
◇元三井物産社長の飯島彰己さん、
◇元兵庫県知事の井戸敏三さん、
◇元大阪ガス会長の尾崎裕さん、
◇元総務大臣の片山虎之助さん、
◇元農林水産大臣の金子原二郎さん、
◇元厚生労働大臣の川崎二郎さん、
◇元行政改革担当大臣の佐田玄一郎さん、
◇元石川県知事の谷本正憲さん、
◇元環境大臣の中川雅治さん、
◇元文部科学大臣の中山成彬さん、
◇元農林水産大臣の西川公也さん、
◇元経済産業大臣の鉢呂吉雄さん、
◇元環境大臣の原田義昭さん、
◇元行政改革担当大臣の渡辺喜美さんの14人が受章します。
「瑞宝大綬章」は、
◇宮内庁の元式部官長の秋元義孝さん、
◇元会計検査院長の河戸光彦さんが受章します。
また「旭日小綬章」は、
◇数多くの映画やテレビドラマに出演し、硬派な役からコミカルな役まで自在な演技力で演じてきた俳優の三浦友和さん、
◇宮崎駿監督や北野武監督の作品をはじめ、数多くの映画音楽を手がけてきた作曲家の久石譲さんらが受章します。
このほか外国人叙勲では、あわせて54の国と地域の103人が受章することになりました。
叙勲の親授式や伝達式などは今月8日から行われます。
元三井物産社長 飯島彰己さん
「旭日大綬章」を受章する飯島彰己さんは神奈川県出身の73歳。
大手商社の三井物産で鉄鋼部門をはじめとした金属や資源などの事業に長年携わり、2009年から社長を、2015年から会長を、それぞれ6年間務めました。
また、経団連の副会長や大手商社などでつくる日本貿易会の副会長も歴任し、諸外国との関係強化などにも尽力しました。
今回の受章について飯島さんは「大変光栄で、感激すると同時に身の引き締まる思いです。一緒に仕事をしてきた国内外の皆様のご指導とご支援のたまものです」と述べました。
飯島さんは社長に就任した前の年にリーマンショックを経験し、資源価格が落ち込む中でも投資を継続する姿勢を打ち出しました。
このころについて、「資源に乏しい日本の経済安全保障の視点で考えたときには資源のビジネスを追求していく必要があるという考え方をしていた」と振り返りました。
また、近年の国際情勢については「先進国と新興国が互いの経済発展のために関係を深めていこうという『求心力』が薄くなり、各国の国益を優先する『遠心力』が強まっていると感じている。こうした中で商社が担ってきた世界中の国と国、企業と企業、人と人をつなぐ仕事の意義はより大きなものになっている」と述べ、商社が担う役割が重要さを増しているという認識を示しました。
一方、日本の経済界や若者へのメッセージとして、「環境問題やAIなどの急速な技術進歩にどう適応していくかが問われていて、課題が山積した状態になっている。これはリスクでもあるが、同時に多くの産業にとって大きなチャンスでもあるので、ぜひ果敢に挑戦して新しい道を開いてほしい。私自身もより豊かな未来の実現のために微力ながら努力していきたい」と述べました。
元大阪ガス会長 尾崎裕さん
「旭日大綬章」を受章する尾崎裕さんは兵庫県宝塚市出身の73歳。
大阪ガスの社長や会長を歴任し、電力の小売り自由化を受けて、天然ガスの発電所の建設を決めるなど電力事業の拡大に乗り出したほか、平成28年の熊本地震の際は日本ガス協会の会長として各社の協力を得てガスの供給再開に尽力しました。
また、大阪商工会議所の会頭として新型コロナで打撃を受けた中小企業の支援にあたったほか、大阪・関西万博の誘致などにも取り組みました。
現在は大阪ガスの相談役を務めています。
尾崎氏は今回の受章について「思いもよらぬことで光栄に思います。環境が変化する中でエネルギー事業やその周辺のサービスを変えなければいけない時で、経営者として悩み、苦しみながら取り組んできました。時代は進んでいるので、次は現役世代が新しいことをやろうとしたときに背中を押すような役目を担っていきたいと思います」と話していました。
元厚労相 川崎二郎さん
「旭日大綬章」を受章する川崎二郎さんは75歳。
三重県伊賀市出身で昭和55年の衆議院選挙で初当選し、通算で12回当選しました。
運輸大臣や厚生労働大臣、それに自民党の国会対策委員長などを歴任し、おととし政界を引退しました。
川崎さんは「働き方改革に先頭になって取り組んだが、自分のことを振り返ると全く違い、土日もないような生活を40年以上やってきた。妻や地元の皆さんのおかげで今日まで来られた」と述べました。
そして、「政治家の仕事は人の話を聞き、困ったら自分が行動する。厚生労働大臣のとき、少子化対策など財源が必要な政策はみずから調整した」と振り返りました。
そのうえで、今の政治状況について、「自民党の若い政治家は政権を取り返したあとに当選した人が多いので、緊張感を欠いている感じがする。新しいことをやっていかなければならないということを忘れないでもらいたい」と述べました。
元経産相 鉢呂吉雄さん
「旭日大綬章」を受章する鉢呂吉雄さんは75歳。
北海道の農協職員を経て、平成2年の衆議院選挙で初当選し、合わせて7回当選。
参議院議員も1期務めました。
民主党政権では党の副代表や国会対策委員長を歴任し、野田内閣で経済産業大臣を務めました。
鉢呂さんは「政治活動を32年続けられたのは、自分の力というより、道民の皆さん一人一人に支えていただいた力だと思っている」と述べました。
そして、「一番大きな思い出は政権交代を成し遂げたことだ。行き詰まった自民党政治に対し、国民からの圧倒的な支持があったが、いざ政権運営に立ったとき、必ずしも十分にやっていける形にはなり得なかった」と振り返りました。
そのうえで、現在の政治状況について、「野党は分裂状態にあるが、政策をきちんと鍛え、国民にもう一度期待されるものを掲げて政権を運営できるもう1つの大きな柱を作っていかなければならない」と述べました。
元行革担当相 渡辺喜美さん
「旭日大綬章」を受章する渡辺喜美さんは71歳。
父親の渡辺美智雄・元外務大臣の後を継いで、平成8年の衆議院選挙で初当選して以降、6回連続で当選しました。
第1次安倍内閣や福田内閣で行政改革担当大臣を務め、公務員の天下り規制などに取り組みました。
その後、自民党を離党して「みんなの党」を結党し、いわゆる第3極として存在感を示しましたが、去年、政界を引退しました。
渡辺さんは受章について「おやじは亡くなったあとに叙勲をいただいており、自分は予想していなかったので驚いた」と述べました。
そして、「行政改革担当大臣として政府内でケンカもしたが、公務員の天下り規制策を盛り込んだ改正国家公務員法などが成立し、頑張れば世の中が動くんだということを思い知った」と振り返りました。
そのうえで、「日本は決断と実行に時間がかかりすぎてきた。決断と実行を即座にできることは、今でも必要なのではないか」と述べました。
俳優 三浦友和さん
旭日小綬章を受章する俳優の三浦友和さんは山梨県出身で71歳。
1972年にテレビドラマで俳優としてデビューしました。
正統派の二枚目俳優として人気を集め、後に妻となる山口百恵さんと共演した映画やドラマが次々にヒットしました。
硬派な役からコミカルな役まで、さまざまな役柄を演じ分ける自在な演技力が高く評価されています。
受章について三浦さんは「古希を過ぎ、これから俳優としてどう生きるか迷いのある中、励ましの光をいただいた気持ちです。映像俳優としてこれから何ができるのか慎重に探りながら精進してまいりたいと思います」というコメントを出しています。
作曲家 久石譲さん
旭日小綬章を受章する作曲家の久石譲さんは長野県出身の72歳。
国立音楽大学に在学中から作曲家の活動を始めて、現代音楽の作品などを手がけ、1984年に宮崎駿監督と組んだアニメーション映画、「風の谷のナウシカ」では雄大で叙情的な音楽で注目されました。
その後もスタジオジブリ作品の「千と千尋の神隠し」や「かぐや姫の物語」、北野武監督の「HANA-BI」などの映画音楽で、作品に寄り添った印象的なメロディーを次々と発表し、海外の映画でも音楽を担当するなど、日本を代表する作曲家の1人として国内外で活躍を続けています。
また、演奏活動も精力的に行い、ピアニストや指揮者として世界中のステージに立ち続けているほか、2010年からは、母校の国立音楽大学で招聘教授に就任し、後進の育成にも力を注いでいます。
受章について久石さんは「このたび、名誉ある勲章を受章いたしました。心から感謝します。私にとって、とても大きな励ましです。今後もより一層、作曲活動にいそしんで参りたいと思います」とコメントしています。