【2日詳細】ガザ地区難民キャンプで連日イスラエル軍の攻撃

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突で、ガザ地区の保健当局は11月1日、10月7日からの死者が8796人にのぼったと発表しました。イスラエル側の死者は少なくとも1400人で、双方の死者は合わせて1万人を超え、犠牲者が増え続けています。

パレスチナのガザ地区への攻撃を強めるイスラエル軍は、民間人に多くの犠牲者が出ている難民キャンプへの空爆について、「事前の計画と正確なインテリジェンスに基づき行われている」と説明し、攻撃の手を緩めない構えを示しました。

こうした中、ガザ地区では主要な病院のひとつが燃料不足で発電機を止めるなど、人道危機がいっそう深刻になっています。

国境なき医師団 日本人スタッフの避難完了に「まずは安ど」

国境なき医師団日本の村田慎二郎事務局長は、ガザ地区で業務を行っていた日本人スタッフの避難が完了したことについて、2日、東京の事務所からオンラインでNHKの取材に応じました。

この中で村田事務局長は「まずは安どの気持ちで受け止めている。3週間以上にわたる避難生活を耐えたことに敬意を表します。また、ご家族も非常に不安な日々を過ごされたにもかかわらず、私たちを信頼してくださったことに感謝します」と述べました。

その上で、「まずは休んでほしいというのが一番の願いです。エジプト側の当団体のチームに任せて、きちんと休息を取れるようにした上で、心理ケアや健康診断を行う予定だ」と明らかにしました。

一方で、国境なき医師団のパレスチナ人スタッフをはじめ、多くの人道支援関係者が現在もガザ地区で活動を続けているということで、「一刻も早く医療スタッフや物資がガザ地区内に入り、多くの負傷者や患者を治療できる安全な環境が確立されなければならない」と訴えていました。

イスラエル軍 攻撃の手を緩めない構え 人道危機 一層深刻に

イスラエル軍は1日から2日にかけてもガザ地区北部のガザ市周辺で軍事作戦を展開し、人口が集中するジャバリア難民キャンプに対して2日続けて大規模な攻撃を行いました。

ガザ地区の保健省は、一連の攻撃でこれまでに195人の死亡を確認し、120人はがれきの下敷きになるなどして行方がわからないとしています。

イスラエル軍のハガリ報道官は1日、難民キャンプへの攻撃でハマスの対戦車砲部隊のトップを空爆で殺害したと発表し、「地上作戦は事前の計画と具体的なインテリジェンスに基づき、陸と海、そして空からの合同作戦を遂行している」と説明しました。

そのうえで、地上作戦をさらに続けるための計画を承認したとして、攻撃の手を緩めない構えを示しました。

こうした中、ガザ地区の保健省は2日、ジャバリア難民キャンプからのけが人などを受け入れている病院が一部の機能を止めたと発表しました。

病院に電力を供給する主な発電機が燃料の不足で稼働できなくなったためだということです。

保健省によりますと、ガザ地区内の35ある病院のうちほぼ半数が、燃料不足やイスラエル軍の攻撃の影響で稼働できなくなっているということです。

保健省は「患者は極めて危険な状況に置かれている」としていて、人道危機が一層深刻になっています。

イスラエル軍 “ハマスが病院に燃料提供を迫る会話” を公開

ガザ地区で燃料不足が深刻化し、病院の運営にも大きな影響が出るなか、イスラエル軍は1日、ハマスが地区内の病院に燃料の提供を迫っていることを示す内容の電話の会話を傍受したとして、その音声を公開しました。

イスラエル軍はこの会話は主要な病院の院長と住民のものだとしています。

このなかで院長とされる人物は「ハマスの財務省の代表から燃料1000リットルを提供するよう要請があった。こちらには600リットルの備蓄しかないと伝えたところ、そのすべてを提供するよう求められた」と話しています。

これに対して住民とされる人物は「パレスチナのためだ」として提供するよう促しています。

この会話についてイスラエル軍は「ハマスが人々よりもテロリストのニーズを優先させていることを示すものだ」と主張しています。

ガザ地区の燃料不足が深刻化するなか、イスラエル軍は10月にも、ハマスが50万リットルの燃料を備蓄していると主張し、ガザ地区内の燃料タンクの上空からの写真を公開していて、燃料不足をめぐる情報面でのかけひきも活発化しています。

エジプト 外国籍7000人受け入れへ

エジプト外務省は2日、ガザ地区との間のラファ検問所を通じて退避する外国籍の人たちを円滑に受け入れるため、関係する当局が対応を続けていると発表しました。

受け入れるのはおよそ7000人にのぼる見通しだということです。

こうした対応については、エジプトに駐在する各国の大使などに対してすでに説明したとしています。

“ガザ地区の人質は242人” イスラエル軍

イスラエル軍の報道官は2日、ガザ地区で拘束されている人質の人数について、合わせて242人が確認されたと発表しました。

ジャバリア難民キャンプで連日激しい空爆 2日間で195人死亡

イスラエル軍は1日、ガザ地区最大規模のジャバリア難民キャンプに対して前日に続いて激しい空爆を行いました。

ガザ地区の当局は、2日間にわたる空爆で195人が死亡し、およそ120人ががれきの下敷きになるなどして行方がわからないとしています。

ロイター通信が1日に配信したジャバリア難民キャンプの映像には、破壊されたコンクリート製の住居のがれきが散乱して煙が立ちこめる中、住民たちがけが人やがれきの下敷きになった人たちを救出する様子が映っていました。

また、救出した人や負傷者を担架に乗せたり抱きかかえたりして救急車に乗せる様子や、生存者を探す住民たちの様子も確認できます。

攻撃を目撃した住民の男性は「モスクでお祈りをしていて、空爆による爆発音を聞いた。これは大虐殺だ」と憤りをあらわにしていました。

難民キャンプ空爆 各国から懸念・非難の声

イスラエル軍がガザ地区最大規模のジャバリア難民キャンプに行った空爆に対しては、各国から懸念や非難の声が上がっています。

フランス外務省は1日、「パレスチナの住民が多くの犠牲を強いられたことを深く憂慮する。民間人の保護はあらゆる者に課せられた国際法上の義務だ」とする声明を発表し、人道支援を行うための即時停戦を求めました。

また、南米アルゼンチンの外務省は1日、声明で、イスラエルの自衛権を認めるとしながらも、「国際人道法の違反は正当化できない。数百人を死傷させたイスラエル軍によるジャバリア難民キャンプへの攻撃を非難する」として、病院や民間のインフラ施設への攻撃を停止するよう訴えました。

このほかにも、ガザ地区への一連の攻撃で民間人に多くの犠牲者が出ていることを受けて、イスラエルの隣国、ヨルダンの外務省は1日、「前例のない人道上の大惨事だ」として、イスラエルから大使の召還を決定したと発表したほか、南米ボリビアは10月31日、イスラエルとの外交関係を断絶すると発表しました。

UNRWA ガザ地区で死亡した国連スタッフ 合わせて70人に

パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関によりますと、先月7日以降、ガザ地区で亡くなった国連スタッフの数が合わせて70人にのぼったということです。

これについてUNRWAは「これほど短期間に紛争で死亡した国連職員の人数としては最も多くなった」としています。

一連の衝突で少なくとも33人のジャーナリストが死亡 CPJ

ニューヨークに本部があり、報道の自由を守る活動をしている国際的なNPO「CPJ=ジャーナリスト保護委員会」によりますと、先月7日からのイスラム組織ハマスとイスラエル軍との一連の衝突で、今月1日までに少なくとも33人のジャーナリストが死亡したということです。

33人のうち、▼28人がパレスチナ人、▼4人がイスラエル人、▼1人がレバノン人で、この中にはガザ地区の地元メディアのジャーナリストや、レバノン南部の国境付近で取材中だったロイター通信のカメラマンなどが含まれるということです。

また、8人が負傷したほか、9人が行方不明または拘束されたと報告しています。

CPJはコメントで、「この地域全体にいるジャーナリストは悲痛な紛争を取材するために大きな犠牲を払っていて、特にガザにいるジャーナリストは前例のない犠牲を払い続けている。ジャーナリストは危機的な状況の中で重要な仕事をしている民間人であり、紛争当事者に狙われてはならない」と強い危機感を示しています。

イスラエル軍は先月下旬、空爆などガザ地区への攻撃を続けるなか、「ガザ地区で活動するジャーナリストの安全を保証できない」とする書簡をロイター通信などに送っていました。

ガザ地区最大規模の難民キャンプ 攻撃前後の衛星画像

人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」は、イスラエル軍による攻撃があったガザ地区最大規模のジャバリア難民キャンプについて、攻撃の前と後の様子を比較した衛星画像を公開しました。

10月31日の画像では多くの建物がひしめくように密集してたっている様子がわかりますが、11月1日に同じ場所を撮影した画像では、複数の建物が原形をとどめないほど激しく崩れている様子が確認できます。

さらに、その周辺の建物にも広範囲にわたって黒く焼け焦げたようなあとが確認でき、攻撃の激しさがうかがえます。

ハマス 上空からの映像公開 地面に大きな穴

イスラム組織ハマスは1日、ガザ地区でイスラエル軍との戦闘が続く場所を上空から撮影した映像を公開しました。

映像では市街地でいくつもの建物が跡形もなく破壊され、大量のがれきが散らばっている様子のほか、空爆などによって地面に空いたとみられる大きな穴が多数確認できます。

また、すぐそばのイスラエル軍の戦車や兵士が集まっている場所に、上空の無人機から爆弾を投下して攻撃する様子もうつっています。

さらに、別の動画では、ハマスの戦闘員がトンネルのような場所から地上に出て、はうように地面を進んだあと、ロケットランチャーのようなもので攻撃し、イスラエル軍の軍用車両に命中して爆発が起きる様子も記録されています。

ハマスが声明 “無法な組織の行動に終止符打つ”

イスラム組織ハマスは1日、SNSで声明を発表し、「イスラエル軍はジャバリア難民キャンプで24時間以内に2度目の犯罪を行った。権威主義的で無法な組織の行動に終止符を打つべく、私たちは国際社会のメンバーなどに対し、政治的・道徳的責任を果たすよう、緊急に呼びかける」としてイスラエル軍を強く非難しました。

国連 ガザ地区難民キャンプ攻撃「戦争犯罪にも該当」

イスラエル軍によるガザ地区最大規模のジャバリア難民キャンプへの攻撃について、国連人権高等弁務官事務所は1日、「民間人の多大な犠牲と破壊の規模を考えると、これは戦争犯罪にも該当しうる過度な攻撃だと懸念する」とSNSに投稿し、強く非難しました。

バイデン大統領 “退避は数日間続く” 見通し示す

バイデン大統領は1日に行った演説の中で、外国国籍を持つ人々などの退避は今後、数日間、続くという見通しを示しました。バイデン大統領は退避に向けて、イスラエルのネタニヤフ首相やエジプトのシシ大統領などと協議を重ねたほか、カタールからも協力を得たとし、「これはアメリカによる集中的な外交の成果だ」と強調しました。

これに先立ち、アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は会見で、退避する人たちの中に数人のアメリカ人が含まれていると明らかにしています。

国境なき医師団 日本人スタッフ3人がエジプトへ退避

国境なき医師団日本の村田慎二郎事務局長はガザ地区で業務を行っていた日本人スタッフの状況についてNHKの取材に応じました。

それによりますと、ガザ地区から避難してきた日本人スタッフ3人をエジプト側で迎えたということです。

3人の健康状態について、「休息がとれる場所に到着してから健康診断などを受ける。エジプトの首都カイロで休息をとり、心理ケアと健康診断を行う予定だ」としています。

ガザ地区から複数の日本人がエジプト側に退避 日本政府関係者

日本政府関係者によりますと、イスラエルが軍事作戦を続けるガザ地区から1日、複数の日本人がラファ検問所を通ってエジプト側に退避したということです。

ガザ地区で境界管理を担当する当局は1日、ラファ検問所を通過できる外国籍を持つ人のリストを公開していて、この中には医療支援を行う「国境なき医師団」の職員など日本人5人が含まれています。

現地時間の1日午後7時半ごろにエジプト側のラファ検問所のすぐ外で撮影された、NHKが入手した写真には、在エジプト日本大使館の職員とガザ地区から退避してきた日本人とみられる3人が映っているのが確認できます。

大使館の職員が着ているオレンジ色のベストには日の丸のようなものが見え、3人に向かって話しかけているように見えます。

また、現地で撮影された映像には、日本大使館と書かれた車の前で背中に「JAPAN」と「日本国政府」と書かれたオレンジ色のベストを着た日本大使館の職員が誰かを車に誘導しているように見える様子が映し出されています。

“外国籍持つ361人 ガザ地区からエジプト側に退避”

エジプトのメディアは1日、外国籍を持つ361人がガザ地区からエジプト側に退避したと伝えました。

また、エジプト政府は1日、これまでに外国籍を持つ117人がガザ地区からエジプト側に退避し、医師による健康診断を受けたと発表しました。この中には子ども35人が含まれているということです。

ただ、いずれも国籍などは明らかにしておらず、日本人が含まれているかどうかはわかっていません。

イエメン反政府勢力フーシ派 ハマス側への加勢表明

イエメンの反政府勢力フーシ派は先月31日、ガザ地区への軍事作戦を続けるイスラエルに対して弾道ミサイルなどを発射し、イスラム組織ハマス側に加勢すると表明しました。

こうした中、1日、フーシ派のナセルディン・アメル報道官がオンラインでのNHKのインタビューに応じました。

この中でアメル報道官は、イスラエルに対して行われた攻撃はすべてイエメン本土から発射されたものだとした上で、「攻撃は始まったばかりだ。今後、これまでとは比べものにならない強力な攻撃をイスラエルに仕掛ける」と述べ、今後も弾道ミサイルなどを使ってイスラエルを攻撃すると明らかにしました。

そして、「イスラエルが反撃することは想定内だ。それに対する準備も整っている。私たちは4年も5年も前からイスラエルへの攻撃を想定して準備を進めてきた。私たちとイスラエルとでは力の差は大きいが、それでも大きな打撃を与えることができる」と主張しました。

一方で、フーシ派がイスラエルと敵対するイランの支援を受けていることについては「イランからの支援には感謝している。私たちはイランだけではなく、ハマスやヒズボラなど多くの勢力と協力している」として、イランが中東各地で支援する「抵抗の枢軸」と呼ばれるネットワークの一員として、イスラエルに抵抗し続けると強調しました。

バイデン政権 “イスラム教徒に対する偏見なくす対策打ち出す”

アメリカのイスラム教徒の全米規模の組織「アメリカ・イスラム関係評議会」は、アメリカでイスラム教徒に対する偏見や嫌がらせの報告が急増しているとしています。

こうした中、バイデン政権は1日、イスラム教徒に対するあらゆる形態の嫌悪や偏見をなくすための対策を盛り込んだ国家戦略を打ち出すと発表しました。

発表では「アメリカのイスラム教徒などはあまりにも長い間、多くの憎しみに満ちた攻撃や差別的な事件に耐えてきた」と指摘したうえで、先月には、シカゴ郊外でイスラム教徒の母子が襲われ、6歳の男の子が亡くなったことに触れています。

国家戦略は今後、地域社会のリーダーや連邦議会の議員などと協議を重ねて策定する方針で、「すべてのアメリカ人がどのように祈り、何を信じるかを恐れることなく安全に生活できる自由を確保するための取り組みを続ける」としています。