静岡 化学工場付近の水から国の暫定目標値超える有害物質

静岡市清水区の化学工場で、有機フッ素化合物の「PFAS」のうち有害性が指摘されている物質が10年前まで使われていたことを受けて、静岡市が10月、工場付近の水路で行った水質検査で、国の暫定目標値の5.4倍にあたる濃度が検出されたことが分かりました。

アメリカの化学メーカー「デュポン」社が出資する会社が静岡市清水区で運営していた化学工場では、フッ素樹脂を製造する過程で「PFAS」のうち発がん性などの影響が指摘されている「PFOA」が2013年まで使われていて、静岡市は10月から工場周辺の水質検査を進めています。

静岡市の難波市長は11月1日、臨時の記者会見を開いて、検査結果の速報値を公表しました。

それによりますと、工場近くの水路で10月10日に採取した水からは、PFOAが1リットル当たり270ナノグラム検出され、国の暫定目標値の5.4倍の濃度に達していたということです。

また、難波市長は、現在工場を運営している「三井・ケマーズフロロプロダクツ」から10月31日にデータの提供を受けた、会社側の水質検査の結果についても公表しました。

それによりますと、会社側がことし2月から8月にかけて工場の外部の水路につながる排水を調べた結果、国の値の2倍から10倍の濃度のPFOAが検出されたということです。

会社側が原因を推定して対策をとったところ、9月と10月の検査では国の値を超える回数が減ったということです。

さらに難波市長は、工場周辺で個人が所有する5か所の井戸で行った地下水の検査結果については、11月6日以降に速報値を公表し、仮に国の値を超えた場合、会社側と協議して対策を進める考えを示しました。

難波市長は工場の排水について、「国の目標値を上回っていることが確認され、危機感を持って対応したい。直ちに健康被害は出ないと理解しているが、適切に対応していく」と述べました。

そのうえで、会社に対しては、「工場の敷地内で実施している地下水の検査結果のデータも出してほしいと要望している。濃度を下げるための協議を継続的に行っていきたい」と話していました。

「三井・ケマーズフロロプロダクツ」 地元会長ら向けに説明会

この問題をめぐって、工場を運営している「三井・ケマーズフロロプロダクツ」は先月30日に地元の自治会長らを対象にした説明会を開き、静岡市の担当者も出席しました。

出席者によりますと会社側の提案で、市と地元の自治会の三者による連絡会を設置することが決まり、近く、自治会側に検査結果を説明することや、今後の対応を協議していくことなどを確認したということです。

自治会長「原因を調べ対策を」

工場付近の水路の水から国の暫定目標値の5倍を超える濃度のPFOAが検出されたことについて、静岡市清水区の三保地区連合自治会の櫻田芳宏会長は、「数字だけ言われても素人的にはあまりピンとこないし、判断のしようがない。地域の人たちへの健康に影響があるのかどうか、早急に状況を説明してほしい」と話していました。

そのうえで、「工場では10年前に使用をやめたのに、なぜPFOAが検出されるのか原因を調べてほしい。物質を取り除くなど、対策としてできることはしっかりしてもらいたい」と話していました。

専門家「詳細に調査することが重要」

静岡市の検査結果について、PFASの環境省専門家会議のメンバーでもある京都大学大学院の原田浩二准教授は「水路に限っていえば、飲料水の水源にはなっていないので、直接健康に影響することはないと思う」としたうえで、「直接の排水だけなのか、工場周辺からしみ出してきているのかなど、詳細に調査することが重要だ」と述べました。

そのうえで、静岡市が工場周辺で行っている井戸水の検査については、「仮に国の暫定目標値を超えるようであれば、飲用には適切ではないので、摂取を避けるよう周知する必要がある。今後は周辺の土壌への影響も調べて住民と共有する必要がある」と話していました。