NY市場 1ドル=151円台まで値下がり 去年10月以来約1年ぶり

31日のニューヨーク外国為替市場では、日銀が決めた金融政策の運用の柔軟化は大きな修正ではなかったとの受け止めから日米の金利差が意識されて円売りドル買いが加速し、円相場はおよそ1年ぶりに一時、1ドル=151円台後半まで値下がりしました。

31日のニューヨーク外国為替市場では円安が加速し、円相場は一時、1ドル=151円74銭まで値下がりしました。

1ドル=151円台をつけるのは、去年10月以来、およそ1年ぶりです。

日銀は31日、金融政策の運用をより柔軟化することを決めましたが、ニューヨーク市場でも大きな修正ではなく、金融緩和は続くとの見方が広がりました。

また、この日、発表された、アメリカの消費者が景気をどう見ているかを表す指数など、経済指標が市場予想を上回り、アメリカ経済の堅調さが改めて示されたことから、日米の金利差が意識され、円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが強まりました。

市場関係者は「日銀がマイナス金利を解除するには時間がかかるという見方から円を売る投資家が多い。日本政府・日銀が市場介入に踏み切ることへの警戒感も後退していて、円安に歯止めがかからない状況となっている」と話しています。

円安ドル高が進んだ背景は

外国為替市場で急速に円安ドル高が進んだ背景には、日銀の金融政策や、市場介入に対する市場の観測や思惑があります。

日銀が金融政策決定会合の結果を発表する前日、30日のニューヨーク市場では日銀が「イールドカーブ・コントロール=長短金利操作」と呼ばれる金利操作の枠組みを再び修正するのではないかとの情報が伝わって政策変更への期待が高まり、円を買う動きが強まりました。

市場の関心は日銀が「イールドカーブ・コントロール」を撤廃するかどうか、そしてマイナス金利政策を解除する時期を日銀が示唆するかどうかに集まっていました。

31日、日銀は金融政策の運用をより柔軟化することを決めました。

しかし、市場では大きな修正ではなかったとの受け止めが広がりました。

また、この日の記者会見で日銀の植田総裁は「粘り強く金融緩和を継続することで経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針だ」と述べたことで金融緩和が続くとの見方が出ました。

政策変更を予想し、円を買っていた投資家は、一転して円を売る動きを強め、円安に拍車がかかったものとみられています。

また、政府・日銀による市場介入がなかったと判明したことも、一部の投資家のあいだで円を売るにあたっての警戒感が和らぎました。

日本の財務省は31日、9月28日から10月27日の介入実績がゼロだったことを公表しました。

先月3日に円相場が1ドル=150円台をつけた直後、3円近く急速に円が買い戻されたときには市場介入があったのではないかとの観測が出ていましたが、これが否定されることになりました。

円安が進んでも市場介入がないと見た投資家が、円売りドル買いを加速させた面があるとみられています。

米専門家「円安が進んでいるのは意外だ」

外国為替市場で急速に進んだ円安ドル高について、日米の金融政策に詳しいボストン大学のウィリアム・グライムス教授に話を聞きました。

このなかでグライムス教授は「為替相場は日米の金利差に左右されるため、金利差に大きな変化が出ていないにもかかわらず円安が進んでいるのは少し意外だ。長期金利の動向には不透明感があるが、日銀の金融政策の修正を受けて今後、日本の長期金利が上昇していき、日本経済に悪影響を及ぼさないことが確認できれば円高方向にすぐに反応するだろう」と述べました。

また、円安の要因として政府・日銀が市場介入を実施しなかったことが指摘されていますが、グライムス教授は「市場介入は極めて短期的な効果しかもたらさない傾向があり、有効ではない」としています。

一方、日銀が31日に発表した政策の運用の柔軟化についてはグライムス教授は「大方の予想通りでアメリカの長期金利が上昇して日本の長期金利にも上昇圧力が掛かるなか、長期金利の上限を1%に厳格に抑えるとしてきたこれまでの運用を修正するのは理にかなっている」と述べました。

そのうえで今後について「日銀はとても慎重にデータを見極めながら量的緩和を少しずつ縮小していき、最終的にはマイナス金利やゼロ金利からの脱却に向かうことになるだろう」と指摘しました。