長期金利 一時0.955%に 10年5か月ぶりの水準まで上昇

31日の債券市場では日本国債を売る動きが強まり、長期金利は午前の取り引きで0.955%をつけ、2013年5月以来、10年5か月ぶりの水準まで上昇しました。

国債は、売られると価格が下がって、金利が上昇するという関係にあります。

31日の債券市場では日本国債を売る動きが強まり、長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りが、午前9時すぎに0.955%まで上昇しました。

2013年5月以来、10年5か月ぶりの水準です。

アメリカの長期金利が高い水準で推移していることに加え、日銀が金融政策の運用をより柔軟にし、長期金利が事実上の上限としている1%を超えて上昇しても容認するという観測が広がったことが要因です。

市場関係者は「日銀が長期金利の運用を見直すという見方が強まり、長期金利の上昇圧力が一段と高まっている。日銀がどの程度まで長期金利の上昇を容認するのか、きょうの金融政策決定会合や植田総裁の会見の内容に注目が集まっている」と話しています。

【専門家の見方は】

日銀の金融政策決定会合が開かれた31日、長期金利は一時、0.955%と10年5か月ぶりの高い水準となり、国債の取り引きを手がける証券会社のディーリングルームでは、担当者が顧客からの売買の注文や問い合わせなどの電話対応に追われていました。

東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、日銀が長期金利の上限を「1%」に厳格に抑えるとしてきたこれまでの運用を改めて上限を「1%をめど」に見直すことについて「現実問題として上限の1%が近づいていた。アメリカの長期金利が5%を超えれば、日本の長期金利も1%に接し、日銀の国債の買い入れが一段と増え、市場の流動性を奪うなどの副作用、弊害が出てくるため、日銀は、予防的に動いたのではないか。今回、運用のさらなる柔軟化で、ある意味、技術的な修正をしたのではないか」と分析しています。

そのうえで「YCC=イールドカーブコントロールは短期金利がマイナス0.1%、長期金利が0%程度がターゲットだが、1%が上限のめどとなると、1%超えを許容することとなり政策金利の0%程度と整合的なのか、大きな疑問もある。YCCの導入時から、日銀の政策は専門家であってもすべて説明することが難しいくらい複雑化している。国民に分かりやすい政策を中央銀行はすべきではないかという印象も持っている」と指摘しました。

「1%をめど」としたことを市場がどう受け止めるか

また、「1%をめど」としたことを市場がどう受け止めるかについては「市場も日銀が1%超えをどこまで許容するのかは、ある意味全くわかってないかなと思う。1%、もしくは1%を超えるところで日銀が国債買い入れを増やしたり、指値オペをオファーしたりするのかを確かめたいのではないか。一方、日銀としては1%を超える際に、急な上昇であれば機動的に対応するし、例えば1.1%や1.2%などと、目安になりやすい水準でも機動的に対応する可能性はあると思う」と述べました。

日本の長期金利の見通しについて

また、日本の長期金利の見通しについては「日銀が物価だけではなく、賃金上昇にも自信を持って、正常化に進むのであれば金利上昇要因となる。ただ、市場ではFRB=連邦準備制度理事会が政策金利の引き上げを止めて、来年半ば以降は利下げに転じるという見方が多く、アメリカの金利上昇もそうは続かないのではないか。そうすると、日本の長期金利も1%をわずかに上回るくらいの上昇にとどまって、その後はゆっくり下がっていくのではないか」と述べました。