ウクライナ提唱の和平案を各国代表など協議も共同声明見送りに

ウクライナが提唱するロシアとの和平案について話し合う協議が、66の国や国際機関の代表らが参加して地中海の島国マルタで開かれ、原子力と放射線の安全や食料の安全保障などの分野で連携強化を進めていくことを確認しました。

一方、今回の協議で、当初、ウクライナが目指した共同声明の発表が見送られたことがわかりました。

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐる各国の立場の違いが表面化したことが理由で、緊迫する情勢がウクライナ支援に向けた議論に影響を及ぼしていることが浮き彫りになりました。

この協議は、ウクライナが提唱するロシアとの和平案について話し合うもので、ことし6月と8月に続いて3回目です。

28日から地中海の島国マルタで開かれた協議には、G7=主要7か国や新興国など、過去2回を上回る66の国や国際機関の代表らが参加しました。

ただ、前回参加した中国や中東のエジプト、UAE=アラブ首長国連邦などは欠席しました。

28日の協議ではゼレンスキー大統領がメッセージを寄せ、「私たちが提唱する『平和の公式』は普遍的なものであるべきだし、そうなれる」と述べ、ウクライナが提唱する10項目の和平案への賛同を求めました。

10項目の和平案には、ロシア軍の全面撤退などが含まれていますが、今回の協議では、原子力と放射線の安全や食料の安全保障など、各国が一致しやすい5つの分野で連携強化を進めていくことを確認しました。

イスラエル・パレスチナ情勢影響「共同声明」は見送りに

一方、外交筋によりますと、協議では、当初、ウクライナは共同声明の発表を目指し、調整を進めてきました。

しかし、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐる各国の立場の違いが表面化し、インドやトルコの代表は「ガザ地区でも国際法を順守すべきだ」と述べ、ウクライナ侵攻を続けるロシアを非難する一方でイスラエルの立場を擁護するのは欧米側の二重基準だとする趣旨の意見を表明したということです。

こうしたことから各国の合意が必要な共同声明の発表は見送られ、共同議長をつとめたウクライナとマルタによる議長声明にとどまったことがわかりました。

イスラエル・パレスチナ情勢に関心が集まる中でウクライナ側は、60を超える国などの代表が一堂に会したことには意義があると強調するものの、緊迫する情勢がウクライナ支援に向けた議論に影響を及ぼしていることが浮き彫りになりました。