イスラエル ネタニヤフ首相「戦争の第2段階だ」攻撃強化の考え

イスラエル軍がパレスチナのガザ地区で戦車などによる地上での軍事行動を拡大する中、イスラエルのネタニヤフ首相は「これは戦争の第2段階だ」と述べ、攻撃をさらに強化していく考えを示しました。

イスラエルのネタニヤフ首相は28日、現地時間の午後8時半すぎに記者会見し「昨夜、さらに多くの地上部隊がガザ地区に入った。これは戦争の第2段階だ」と述べ、ガザ地区への攻撃を強化する考えを示しました。

さらに「われわれはまだ戦いの始まりにいる。ガザ地区での戦いは困難で長いものになる。これはわれわれにとって第2の独立戦争だ」と述べ、イスラエルにとっては国家の存亡をかけた戦いだという認識を示しました。

イスラエル軍は27日夜からガザ地区の北部を中心に激しい空爆を続けるとともに戦車などによる地上での軍事行動を拡大しています。

ネタニヤフ首相はこれが大規模な地上侵攻の始まりかどうかの明言は避けたものの、軍事作戦が新たな段階に入ったことを強調しました。

こうしたなかイスラエル最大の商業都市テルアビブでは28日、ハマスに人質にとられている人たちの家族や支援者が集会を開きました。

参加者からはイスラエル軍がガザ地区での空爆や地上での軍事行動を強化するなか人質の無事を祈るとともに一刻も早い人質の解放や停戦を求める声が聞かれました。

友人が人質にとられているという女性は「きょうは無事でもあすはどうなるか分かりません。人質全員がいますぐ無事に帰ってこられるよう政府にはできることをすべてしてほしい」と訴えていました。

一連の衝突ではイスラエル側で少なくとも1400人が死亡したほか、外国人を含むおよそ230人が人質にとられていて、カタールの仲介による解放交渉が続いていますが、難航も伝えられています。

一方、ガザ地区の保健当局は28日、前日までの発表より377人多い7703人が今月7日からの一連の衝突で死亡したと発表しましたが、電話などの連絡手段が途絶えた状況が続いているため被害の全容は把握できていません。

「戦争 第2段階」何を意味する 現地記者の解説

Q.
ネタニヤフ首相の「戦争が第2段階に入った」との発言は大規模地上侵攻を意味するのか。

A.
現時点では、そうとは言い切れないのが現状です。イスラエル側には事態を一気にエスカレートさせたという印象をもたせたくないという事情があるからです。

そのひとつは、人質交渉への配慮です。人質の家族からは大規模攻撃が人質の命を危険にさらすという批判の声があがっています。世論調査でも半数近くが地上侵攻を待った方がよいと答えています。

また、地上侵攻による市民の犠牲拡大に懸念を示す、アメリカや国際社会の声もあります。

そして、大規模な戦力を地上侵攻に投入することで、隣国レバノンのヒズボラなどの勢力が、イスラエルへの攻撃を強めることへの懸念もあります。

とはいえガザ地区に入った部隊が、そのまま残っているということですので、事実上、地上侵攻は始まっていたという見方もあります。

Q.
大規模な地上侵攻とは言い切れないということだが、第2段階には入ったことで、今後、どうなるのか。

A.
注目されるのは人質解放をめぐる交渉にどう影響するのかということです。

イスラエルのネタニヤフ首相は「ハマスに圧力をかければ人質解放のチャンスは高まる」と発言していて、今回まさに大きな圧力がかかった形と言えます。

ただ、イスラエルにとっては、人質の解放と並んで、今回の地上侵攻の最大の目的は、ハマスの壊滅です。イスラエルは人質交渉とハマスのせん滅という難しいバランスのかじ取りをしながら、軍事作戦を強化していくものとみられます。