パキスタン 不法移民の強制送還 アフガニスタン人の安全に懸念

イスラム主義勢力タリバンから逃れたアフガニスタン人が多く暮らすパキスタンの政府は、すべての不法移民を来月から強制送還する方針を示しました。国際的な人権団体などからは、本国に送還されるアフガニスタン人の安全への懸念が強まっています。

パキスタンにはおよそ40年前の旧ソビエトのアフガニスタン侵攻以降、戦禍を逃れた多くのアフガニスタン人が暮らしていて、おととしのタリバンの復権以降は、弾圧を恐れた前政権の関係者や人権活動家などが移り住みました。

こうしたなか、パキスタン政府はビザの取得や更新などの手続きを経ずに滞在しているすべての不法移民について、今月中に国外に退去するように求め、従わない場合は、来月から強制送還する方針を示しました。

パキスタン政府は、アフガニスタンからの不法移民は170万人に上るとしていて、今回の決定について、国内で発生するテロにアフガニスタン人が関わっている疑いがあるためだなどと主張しています。

首都イスラマバードでは地元当局がアフガニスタン人が暮らす一部の家を「不法な占拠を解消するため」などとして取り壊し、住民から非難の声が上がっています。

国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が強制送還の方針について「アフガニスタン人を迫害の危険にさらす」として中止を求めるなど、本国に送還されるアフガニスタン人の安全が脅かされることに懸念が強まっています。