ラグビーW杯 決勝 南アフリカが優勝 2大会連続 単独最多4回目

ラグビーワールドカップフランス大会は28日、決勝が行われ、南アフリカがニュージーランドに12対11で競り勝って2大会連続4回目の優勝を果たしました。4回目の優勝は単独最多です。

頂上決戦は1点差で決着 南アフリカが最多4度目の優勝

先月8日に始まったラグビーワールドカップフランス大会は28日、パリ近郊のサンドニで決勝を迎え、2大会連続の優勝を目指す世界ランキング1位の南アフリカと、2大会ぶりの優勝を目指す世界2位のニュージーランドが対戦しました。

ニュージーランド代表“ハカ”

南アフリカとニュージーランドはいずれも最多の3回の優勝を誇り、ワールドカップの決勝では1995年に南アフリカが延長戦を制して初優勝したとき以来の対戦です。

試合は立ち上がりの激しいぶつかり合いからニュージーランドのシャノン・フリゼル選手にイエローカードが出され、前半3分、今大会、ここまで1度もキックを外していない南アフリカのハンドレ・ポラード選手が左のゴールポストに当てながらもゴールを決めて3点を先制しました。

南アフリカ ハンドレ・ポラード選手

ポラード選手は、その後もペナルティーゴール3本を決め、前半は南アフリカが12対6とリードしました。

ニュージーランド ボーデン・バレット選手がトライ

後半は一進一退の攻防となり、18分にニュージーランドのボーデン・バレット選手にトライを奪われ1点差となりましたが、南アフリカが最後まで粘り強いタックルで守り抜き、12対11で競り勝って2大会連続の優勝を果たしました。

南アフリカは、今大会、準々決勝からの3試合をいずれも1点差で勝利し、ワールドカップ単独最多の4回目の優勝となりました。

会場となったスタジアム「スタッド・ド・フランス」には8万人を超える人が詰めかけ、最後まで目が離せない試合展開に大きな歓声が起きていました。

次のワールドカップは、4年後、2027年にオーストラリアで開催されます。

ニュージーランド 主将の退場で14人の戦いも…

一方、ニュージーランドは前半29分、キャプテンのサム・ケイン選手が危険なタックルをしたとしてイエローカードを出され、今大会から導入された映像などを検証する「バンカーシステム」の結果、レッドカードで退場となって、14人での戦いを強いられました。

ニュージーランド サム・ケイン主将

それでもボーデン・バレット選手のこの試合唯一のトライなどで追い上げましたが、あと一歩及ばず、2大会ぶり4回目の優勝はなりませんでした。

《南アフリカ HC・主将談話》

ジャック・ニーナバーHC「長い戦いの道のりだった」

南アフリカを4回目の優勝に導いたジャック・ニーナバーヘッドコーチは、試合直後のインタビューで「長い戦いの道のりだった。選手たちはこの瞬間を待っていた。選手の中には、2019年のワールドカップ決勝を経験している選手もいるし、3回目のワールドカップとなる選手もいる。経験豊富なすばらしい選手がそろっていることが勝因だった」と激戦を制した選手たちをたたえました。

シヤ・コリシ主将「やり遂げることができて感謝」

2大会連続優勝を果たした南アフリカのキャプテン、シヤ・コリシ選手は、試合直後のインタビューで「この優勝は仲間たちのおかげだ。やり遂げることができて感謝している。プレッシャーはかなりあったが、何とか勝つことができた。南アフリカの人たちにありがとうと言いたい。このチームは、国のために何ができるかを示したと思う。みんなで力を合わせれば、あらゆることが可能になる」と喜びを語りました。

《ニュージーランド HC・主将談話》

イアン・フォスターHC「すべて出し切った」

ニュージーランドのイアン・フォスターヘッドコーチは「レッドカードが出されたが、反撃して勝つチャンスはあった。われわれの戦いを誇りに思う。あとわずかのところで勝利できなかったことについては心が痛む。きょうの試合で選手たちが見せたプレー以上のことは望めない。すべてを出し切った」と話していました。

サム・ケイン主将「言いようがないほど打ちのめされている」

危険なタックルで退場したニュージーランドのキャプテン、サム・ケイン選手は「言いようがないほど打ちのめされているし、がっかりしている。われわれは51分間、14人で戦わなければならなかったが、信じられない勇気を示してくれた」と、ほかのメンバーの奮闘をたたえました。

そのうえで「南アフリカはすばらしいチームで、決勝まで厳しい試合を勝ち抜いてきた。南アフリカにおめでとうと言いたい」と連覇を成し遂げた南アフリカを称賛していました。

【解説】南アフリカ “選手起用の妙”で見せた勝負強さ

ワールドカップ2大会連続で単独最多の4回目の優勝を決めた南アフリカ。決勝トーナメントに入ってからの3試合はすべて1点差の接戦をものにし勝負強さを見せました。

コルビ選手(左)デクラーク選手(右)

勝負強さの要因のひとつに、控えメンバーを重要な時間帯に投入する「選手起用の妙」がありました。

今大会、南アフリカは1次リーグを3勝1敗とプール2位で突破すると、準々決勝は開催国のフランスを相手に後半逆転し、29対28で1点差で勝利しました。

準決勝のイングランド戦も後半にスクラムから主導権を握ると、終了間際にハンドレ・ポラード選手がペナルティーゴールを決めて16対15で逆転勝ちしました。

この2試合は、スクラムハーフのファフ・デクラーク選手らを後半途中から投入する戦術が功を奏し、1点差での逆転勝利につながりました。

決勝はそのデクラーク選手を先発メンバーに入れて、控え選手の8人のうち7人をフォワードにする大胆な戦術をとりました。

試合開始直後にフッカーのムボゲニ・ムボナンビ選手がけがで途中交代するアクシデントがありましたが、前半からフォワードのフィジカルの強さを前面に出すラグビーを展開。相手のペナルティーを誘うなどして主導権を握り、12対6で試合を折り返しました。

ニュージーランドの猛攻をしのぐ

後半はニュージーランドに押し込まれる展開が続き、この試合唯一のトライを決められましたが、フォワード中心の交代メンバーを次々投入してニュージーランドの攻撃をしのぎきりました。

ジャック・ニーナバーHC

試合後、ジャック・ニーナバーヘッドコーチは「3試合続けて1点差で勝利したが、私たちには勝つためのエネルギーが必要だった。このチームの33人の選手は完璧な選手ばかりではないが、彼らは戦術面で役割を果たす能力がある」と話しました。

試合展開を読んで重要な時間帯に交代の選手を投入し、1点差ゲームを次々とものにしてたどりついた4回目の優勝。選手個々のフィジカルの強さが注目される南アフリカですが、選手の起用を含めた首脳陣のマネージメント力も光りました。