臓器移植法に基づいて行われた脳死判定 1000件に

「日本臓器移植ネットワーク」は臓器移植法に基づいて行われた脳死判定が1000件になったと28日、発表しました。

臓器移植法の施行からことしで26年となります。

日本臓器移植ネットワークによりますと26日、中国四国地方の病院に入院していた60代の男性に対し、家族の承諾のもと脳死判定が行われ、脳死と判定されたことから、28日、臓器の提供が行われたということです。

26年前、1997年に脳死からの臓器提供を定めた臓器移植法が施行されてから1000件目となります。

日本臓器移植ネットワークによりますと、これまでに脳死からの臓器提供により移植を受けた患者はおよそ4300人だということです。

臓器移植法に基づく脳死からの臓器提供が初めて行われたのは1999年で、当時は本人が書面で意思表示をする必要がありましたが、2010年の法改正により、家族の承諾で提供できるようになって件数が増加し、現在はおよそ8割が家族の承諾によるものとなっています。

提供件数は新型コロナの影響で一時減少していましたが、去年は93件、ことしはこれまでに100件を超えていて、過去最多となっています。

一方、臓器移植を待つ人はおよそ1万6000人に上るのに対し、実際に提供を受けられた患者は年間およそ400人にとどまるということで、移植を希望する患者の待機期間の長期化が課題となっています。

専門家「法律施行から26年で1000件 遅すぎる」

臓器移植法に基づく脳死判定が1000件となったことについて、臓器移植に詳しい国立病院機構水戸医療センターの湯沢賢治移植医療研究特任部長は、「関連の法律が施行されて26年がたつが、あまりにも遅すぎるというのが正直な感想だ。臓器提供者の数を人口当たりでみても、日本は欧米と比べて50分の1ほどで、海外では救える患者を救えていないのが現状だ」と指摘しています。

その上で、「これまでの調査で、自分が脳死と判定されたとき、臓器を提供してもいいと考える人が一定の割合でいることが分かっているが、その意思をくみ取り、提供に結び付ける仕組みが整っていないことが最大の問題だ。救急の現場では脳死状態の患者の家族に対し、臓器提供を希望するかどうかの意思決定を支える専門職を配置する取り組みが始まっているが、国を挙げたさらなる対策が求められる」と話していました。