日本映画の巨匠 小津安二郎監督を語るシンポジウム

「東京物語」などの名作を手がけ、ことしで生誕120年となる日本映画の巨匠、小津安二郎監督の魅力を語るシンポジウムが都内で開かれました。

これは現在開催中の「東京国際映画祭」の企画として27日に行われ、映画ファンたちが参加しました。

はじめに、小津監督のファンと公言し、ドイツの世界的な映画監督として知られるヴィム・ヴェンダース監督があいさつし、「小津監督の生誕120年という特別な場に立ち会えて光栄です。いろんな作品を見てきましたが、映画祭でも上映されるので、ぜひ皆さんに見てほしい」と呼びかけました。

続いて、国内外の映画監督が登壇し、「スパイの妻」などで知られ、海外の映画祭でも高い評価を受けている黒沢清監督は、好きな小津監督の作品として「宗方姉妹」をあげ、「現代的な妹と古風な姉の話で、特に姉の夫婦関係はこの映画の暗黒部分を担い、ここまですさまじく断絶した夫婦関係はほとんど見たことがない。断絶した人間関係は、暴力沙汰に陥ってしまう瞬間を喜々として描いてみたかった小津のどすぐろい欲望がかいま見える」と指摘しました。

そのうえで、「『東京物語』など、特に戦後の小津の作品は日本の古い家族関係を描いている。崩れゆく家族関係をほほえましく貴重なものとして扱っている物語が小津の一環したテーマなどと言われるが、『宗方姉妹』のように矛盾した作品も撮っていて、それが小津という映画作家の豊かさなのだと思う」と指摘していました。

母親と訪れた19歳の女性は「人間関係がよく表れた作品が多く、自分の人生と重ね合わせながら見られるのが小津監督の魅力だと思います」と話していました。