【27日詳細】イスラエル軍 ガザ地区へ戦車などで限定的攻撃

イスラエル軍はイスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区への空爆とともに、前日に続いて、戦車などを入れて限定的な攻撃を行いました。
一方、ガザ地区の保健当局はアメリカのバイデン大統領がガザ地区での死者の数を疑問視したことを受けて、6700人以上の名前などを公開し、市民の犠牲は無視できるものではないと強く反発しています。

目次

イスラエル軍は前日に引き続き、ガザ地区の中に戦車などを入れてハマスの拠点などに対する限定的な攻撃を行ったと27日、発表しました。

公開した映像では、少なくとも8台の戦車など軍用車両が移動している様子や建物への空爆の様子、そして軍の幹部らが作戦を指揮する様子が映っています。

部隊は作戦の終了後、ガザ地区の外に撤収したということです。

“地上侵攻 半数近く待った方が良い” イスラエルメディア

焦点となっている大規模な地上侵攻について、イスラエルの地元メディアが26日に行った最新の世論調査では、即時に始めるべきという人は29パーセントにとどまり、半数近い49パーセントの人が待った方が良いと答えていることがわかりました。

イスラエル政府はカタールなどが仲介する人質解放の動きや国内世論の動向もにらみながら、地上侵攻の開始時期を慎重に探っているものとみられます。

ガザ地区保健当局 死者数疑問視のバイデン大統領に反発

一方、ガザ地区の保健当局は26日、イスラエル軍による空爆などで死亡が確認されたとする人のうち6747人の名前や年齢、性別などをまとめた資料を公表しました。

これはアメリカのバイデン大統領が死者の数を疑問視した発言を受けたもので、ガザの保健当局はSNSに、「われわれの市民は無視できる存在ではない」と投稿するなど強く反発しています。

また、ヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区のジェニンなどの都市でもイスラエルの治安部隊との衝突が続いていて、26から27日にかけては少なくとも4人が死亡しました。

27日は金曜日に行われるイスラム教の集団礼拝にあわせて、ハマスがヨルダン川西岸やイスラム諸国などでデモを呼びかけていて、衝突の拡大も懸念されます。

今月7日からの一連の衝突ではガザ地区で7028人が死亡し、イスラエル側では少なくとも1400人が死亡したほか、外国人を含む220人以上がガザ地区で人質となっています。

ガザ地区への支援物資 燃料搬入認められず

深刻な人道危機に陥っているガザ地区への支援物資の搬入について、OCHA=国連人道問題調整事務所は26日、エジプトとの境界にあるラファ検問所から12台のトラックがガザ地区に入ったと発表しました。

物資の搬入が始まった今月21日からの6日間でガザ地区に入った支援物資を積んだトラックはあわせて74台となりましたが、OCHAは「一連の衝突の前には1日あたり平均500台のトラックがガザに入っていた」としています。

また、水や食料、医薬品などは運び込まれている一方、燃料の搬入はイスラエル側によって依然として認められていないということです。

燃料不足で医療が危機的状況

一方、ガザ地区の医療状況について、全体のおよそ3割にあたる12の病院とおよそ6割にあたる46の診療所が攻撃による損傷や燃料不足によって閉鎖され、医療が危機的な状況にあるということです。

また、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関によりますと、ガザ地区で4600人を超える妊婦とおよそ380人の新生児が住まいを追われ、医療を必要としているということです。

国連でパレスチナを担当する人道調整官は26日、声明で、「退避ルートが空爆され、ガザ地区の北部でも南部でも人々が巻き込まれている。生存に必要な物資も不足し、ガザに安全な場所はない」として、国際人道法にのっとって民間人は保護されなければならないと訴えています。

UNRWA事務局長 “これまでに57人の職員などが死亡”

パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のフィリップ・ラザリーニ事務局長は27日、エルサレムで会見し、これまでに少なくとも57人の職員などが亡くなったと明らかにしました。

ラザリーニ事務局長は亡くなった職員などに哀悼の意を示したうえで、「私たちの援助活動は崩壊しつつあり、ガザの人々は飢えている。秩序が崩壊し、数日ももたないだろう」と述べ、人道危機への対応に一刻の猶予もないと強調しました。

さらに、ハマスとガザの人々を同列に扱うことは「非常に危険で誤解を招くことだ」と指摘し、「ガザの人々はこの地獄に終止符を打つため、なぜ世界は行動しないのかと問いかけている」と訴えました。

“イラン外務次官がハマス幹部と会談” イラン国営通信

イランの国営通信はイランのバゲリ外務次官が27日、ハマスの幹部、アブマルズーク氏と訪問先のロシアで会談し、ガザ地区の情勢について協議したと伝えました。

この中でバゲリ外務次官はガザ地区の情勢について、「即時停戦と人々に援助物資を届けること、それにイスラエルによるガザ地区の封鎖を解除させることだ」と述べて、即時停戦などを求めていく考えを示しました。

これに対してアブマルズーク氏はこれまでのイランの支援に謝意を示した上で、「イスラエルの野蛮な作戦でもたらされた痛みと苦しみにも関わらず、ガザ地区の子どもたちは命がけであらゆる軍事力に立ち向かっている」と述べ、徹底抗戦を続ける考えを強調したということです。

上川外相 “人道目的の一時的な戦闘休止が重要”

上川外務大臣は閣議のあとの記者会見で、「ガザ地区の一般市民に必要な支援が行き届くよう、支援活動が可能な環境確保が急務だ。人道目的の一時的な戦闘休止が重要だと考えており、イスラエル側に対しても働きかけている」と述べました。

その一方で、「イスラエルが主権国家として自国や自国民を守る権利を有することは当然だが、一般論として、こうした権利は国際法に従って行使されるべきことは言うまでもない」と述べました。

また、11月にG7=主要7か国の外相会合が東京で開かれることについて、「イスラエル・パレスチナ情勢について外相間で改めて突っ込んだ議論を行いたい」と述べました。

ロシア有力紙 “ハマス 停戦合意まで人質解放に応じず”

ロシアの有力紙「コメルサント」は27日、モスクワを訪問していたイスラム組織ハマスの代表団のメンバーが、イスラエル側と停戦が合意されるまでは拘束している人質の解放には応じないという考えを示したと報じました。

イスラエル側の空爆などによってガザ地区で死亡した人質がおよそ50人にのぼると主張したうえで、「解放するためには静かな環境が必要だ」と述べたとしています。

ロシア外務省は26日、中東問題を担当するボグダノフ外務次官がモスクワを訪問したハマスの代表団と会談し、人質の解放を求めたとしています。

一方、ハマスのロシア訪問について、イスラエル外務省の報道官は「イスラエルはロシアがハマスの高官をモスクワに招待したことを非難する。これはテロを支援する行為であり、ハマスのテロリストの残虐行為を正当化するものだ」などと反発しています。

米でユダヤ系住民やイスラム教徒への嫌がらせ急増

イスラエルとイスラム組織ハマスの一連の衝突が始まって以降、アメリカ国内ではユダヤ系住民やイスラム教徒への嫌がらせなどが急増しているとして、双方の団体が警鐘を鳴らしています。

このうち、アメリカのユダヤ人団体「ADL」は一連の衝突が始まった今月7日から23日までに報告された反ユダヤ主義的な嫌がらせなどは312件にのぼり、前の年の同じ時期の64件から5倍近くに増えたということです。

また、このうち190件についてはイスラエルとハマスの衝突に直接関連していたということで、団体は「すべての代表者は反ユダヤ主義とテロを力強く、明確に非難する義務がある」と訴えています。

一方、イスラム教の団体「アメリカ・イスラム関係評議会」も今月7日以降、イスラム教徒に対する嫌がらせなどの報告は774件にのぼり、ことし8月・1か月の63件とくらべて急増していると指摘しています。

団体は「反イスラム、反パレスチナへの憎しみの波が制御不能にならないよう、当局はできるかぎりのことをすべきだ」としています。

エジプト東部 ミサイルによる爆発 6人がけが

エジプトメディアはエジプト東部のイスラエルとの国境の町ターバで27日、ミサイルによる爆発があり、これまでに6人がけがをしたと伝えています。

ミサイルによる爆発はターバの医療施設や医療従事者の宿泊施設などで起きたとしていて、エジプト当局が現場の詳しい状況を調べています。

どこから発射されたミサイルかについては明らかになっていません。エジプトとイスラエルの国境付近では22日、イスラエル軍の戦車がエジプト側の監視塔を誤って砲撃し、兵士数人がけがをしています。

バイデン大統領 イランに米軍への攻撃をやめさせるよう警告

パレスチナのガザ地区をめぐる情勢が緊迫する中、アメリカ・ホワイトハウスの高官は、イランが支援する勢力が中東に駐留するアメリカ軍への攻撃を繰り返しているとして、バイデン大統領がイランに直接、警告したと明らかにしました。

アメリカとしてはイスラエルと衝突しているイスラム組織ハマスなどをイランが支援していることから、緊張が中東全体に拡大するのを防ぎたい狙いがあるとみられます。

イスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区では26日もイスラエル軍による空爆が続き、地元の保健当局によりますと、これまでの死者が子ども2900人余りを含む7028人に上り、イスラエル側でも少なくとも1400人が死亡し、224人が人質になっています。

こうした中、アメリカ国防総省は、今月17日からの10日間で、シリアとイラクに駐留するアメリカ軍の部隊に対するイランが支援する勢力からの無人機などでの攻撃はあわせて16回に上り、少なくとも20人以上がけがをしたと発表しました。

ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は26日の記者会見で、「直接、メッセージを送った」と述べ、バイデン大統領がイランに対し攻撃をやめさせるよう直接、警告したと明らかにしました。

バイデン大統領は前日、25日の記者会見で、「攻撃を続ければわれわれはやり返すので覚悟しておくべきだとアヤトラに警告した」と述べていて、アヤトラはイスラム教シーア派の高位の聖職者を意味することから、アメリカのメディアはイランの最高指導者ハメネイ師への警告だったと報じています。

米オースティン国防長官 シリア東部2つの施設 自衛のため攻撃

アメリカのオースティン国防長官は26日、声明を発表し、イランの精鋭部隊、革命防衛隊やイランが支援する勢力が使用しているシリア東部の2つの施設を攻撃したと明らかにしました。

イランが支援する勢力からのシリアとイラクに駐留するアメリカ軍の部隊に対する攻撃が続いていることへの対応だとし、自衛のためだと強調しています。

声明の中でオースティン長官は「イランの支援を受けたこれらの攻撃は容認できず、止めなければならない。攻撃が続くようであれば、われわれは自国民を防衛するため、さらに必要な措置をとることをいとわない」とイランを強くけん制しました。

パレスチナのガザ地区をめぐる情勢が緊迫する中、アメリカはイスラエルと敵対するイランが支援する勢力が緊張を高める可能性があるとして警戒を強めています。

イスラエル軍の空爆などの死者7000人超 パレスチナ当局発表

ガザ地区では26日もイスラエル軍による空爆が続き、地元の保健当局は今月7日からの衝突による死者が7028人に上り、このうち2913人が18歳未満のこどもだと発表しました。

さらに、がれきの下敷きになっている人も多く、1650人の行方がわかっていないとしています。

ガザ地区ではイスラエルによる封鎖で燃料や食料、それに水などの不足が深刻化していて、26日にはエジプト側からトラック12台分の人道支援物資が入りましたが、220万人の住民に対してまったく足りない状況が続いています。

一方、イスラエル側ではこれまでに少なくとも1400人が死亡し、220人以上がガザ地区で人質になっているほか、ロケット弾による攻撃も続いています。

こうした中、イスラエルのガラント国防相が26日夜、演説し、「軍事作戦を続けるための基盤を固めている」と述べ、地上侵攻に向けた準備を進めていると強調しました。

イスラエル軍もハマスの襲撃によって破壊されたガザ地区との境界線の壁やフェンスを修復する様子を公開し、監視カメラなどの情報を収集するシステムはほぼ復旧したと発表しました。

ガザ地区の保健当局が死者約6800人分の名簿公表

ガザ地区の保健当局は26日、これまでにイスラエル軍による空爆などで死亡が確認されたとする人のうち、およそ6800人分の名前や年齢、性別などをまとめた資料を公表しました。

保健当局は今月7日からの衝突による死者が7028人に上り、このうち2913人が18歳未満の子どもだとしていて、今回、公表されたのは身元が確認できていない人を除く6747人です。

資料は遺体が病院に到着した際に記録される個人情報などのデータをもとに作成したとしています。

日ごとの死者数をまとめたデータも公表されました。

それによりますと、今月7日以降、ガザ地区の死者数は毎日200人から300人ほどで推移していますが、▽ガザ市の病院で爆発があった今月17日には678人、▽イスラエル軍がガザ地区の400か所以上を空爆したと発表した23日から24日にかけては2日間であわせて1460人と、特に多くの死者数が記録されています。

保健当局は今もがれきの下に多くの人がいるなどとして、実際の死者数はさらに増えると指摘しています。

バイデン大統領は数字を疑問視

パレスチナ側の犠牲者数についてアメリカのバイデン大統領は25日、記者会見で、「本当のことを言っているとは思えない」と述べ、公表される数字を疑問視する姿勢を示しています。

イスラエル軍 特殊部隊「ヤハロム」の映像公開

さらに、ハマスが司令部などを置いているとみられる地下トンネルへの対応を専門とする「ヤハロム」という特殊部隊の映像も公開し、ハマスに圧力をかけています。

地下トンネルは地上侵攻の際、ハマスが中に潜んでゲリラ戦を仕掛けるおそれもあるとしてイスラエル側は警戒しています。

この特殊部隊について、イスラエルの情報機関の元高官はNHKの取材に対し、「イスラエル軍のなかでもエリート部隊で、トンネルの中に入り、武器を破壊したりトンネルそのものを破壊したりするだろう」と述べました。

また、この元高官は隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが本格的に参戦し、2正面作戦となる事態を避けるため、イスラエル軍による地上侵攻は限定的なものになり、当面は大規模な空爆が続く可能性もあるとの見方を示しました。

イスラエル軍「ハマスの情報部門ナンバー2を空爆で殺害」発表

イスラエル軍は26日、ハマスの情報部門ナンバー2のシャディ・バルード氏を戦闘機による空爆で殺害したと発表しました。

イスラエル軍はバルード氏がガザ地区のハマスのトップ、ヤヒヤ・シンワル氏とともに、今月7日のイスラエルへの大規模襲撃の計画に関わったとしています。

イスラエル軍があわせてSNSに投稿した空爆時の映像では、複数の炎があがったあと巨大な黒煙とともに高層の建物が崩れていく様子が映り、攻撃の激しさが伝わってきます。

また、ガザ地区で拘束されている人質の人数について、合わせて224人が確認されていると発表しています。

ハマス「イスラエル側の空爆で死亡の人質は約50人と推定」投稿

一方で、ハマスの軍事部門カッサム旅団は26日、SNSを通じて、「イスラエル側の空爆などの影響でガザ地区で死亡した人質はおよそ50人にのぼると推定される」と投稿しました。

ハマス ガザ地区の人々への連帯呼びかけるデモ呼びかけ

さらに、ガザ地区でラファ検問所を経由した支援物資の搬入が進まず、人道危機が深まる中、ハマスはイスラム教の集団礼拝が行われる27日の金曜日と29日の日曜日に、あわせてイスラム諸国や世界各国に対し、ガザ地区の人々への連帯を呼びかけるデモを呼びかけています。

SNSを通じて、「ラファ検問所を開けろ。ガザを破壊しようとする戦争を止めろ」ということばをスローガンに掲げています。

今月7日にイスラエルとハマスの間で大規模な戦闘が始まって以降、イスラム諸国や世界各国の間ではパレスチナとの連帯を掲げてイスラエルへの抗議デモが行われています。

ハマス幹部がモスクワ訪問 中東問題担当の外務次官と会談

ロシア外務省は26日、ハマスの幹部、アブマルズーク氏が率いる代表団がモスクワを訪問し、中東問題を担当するボグダノフ外務次官と会談したと明らかにしました。

会談ではボグダノフ外務次官がハマスに拘束されているロシア人などの人質の解放を求めるとともに、ロシアとしてはイスラエルとパレスチナの共存を求めていく立場に変わりはないと伝えたとしています。

ボグダノフ次官はこれに先立ち、中東のカタールを訪問してハマスの政治部門の指導部と会談したほか、この日、モスクワで、ハマスを支援しているイランのバゲリ外務次官とも会談し、ガザ地区の情勢について協議したとしています。

ロシアはこれまでイスラエルだけでなく、ハマスを含むパレスチナ側とも一定の関係を築き、仲介役を果たそうとしてきました。

しかし、ウクライナへの軍事侵攻でアメリカとの対立が深まる中、プーチン政権はイスラエルを支援するアメリカへの批判を前面に押し出し、イスラエル軍が続ける攻撃にも懸念を示しています。

一方、ハマスも26日、SNSを通じて、代表団がモスクワを訪問したと発表し、ボグダノフ次官との会談では、「イスラエルによるガザ地区への攻撃や、アメリカや西側諸国が支援しているイスラエルの犯罪を阻止するための戦略に焦点が当てられた」としています。

その上で、「代表団はプーチン大統領の姿勢を評価し、ロシア外交の積極的な役割を確認した」としています。

これに対し、ボグダノフ次官からは、ロシアがパレスチナの人々の権利を支持することや、停戦を実現し、ガザ地区への人道支援などを容易にするための努力を行っていることが表明されたということです。

これについてイスラエル外務省の報道官はSNSに投稿し、「イスラエルはロシアがハマスの高官をモスクワに招待したことを非難する。これはテロを支援する行為であり、ハマスのテロリストの残虐行為を正当化するものだ。ロシア政府に対し、ハマスのテロリストを直ちに追放するよう求める」と反発しています。

イラン 米から自制促すメッセージ受け取る 国営通信伝える

イランの国営通信は26日、関係者の話として、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が始まって以降、イランは複数回にわたってアメリカからメッセージを受け取ったと伝えました。

この中でアメリカはイランに自制を促し、アメリカも地域に争いが広がることを望んでいないと伝えてきたということです。

また、イランが支援し、イスラエル北部への攻撃を繰り返しているレバノンのシーア派組織ヒズボラも、アメリカやヨーロッパの国々から同様のメッセージをたびたび受け取っているとしています。

これに対するイラン側の受け止めとして国営通信は、「イランはイスラエルの戦争犯罪が地域の国々の怒りを招き、新たな戦端を開くと警告してきた。イラクやシリア、レバノン、イエメンで起きていることがそれを示している。戦争の拡大を望まないというアメリカの主張が本当なら、ガザ地区で人々を殺すのを止めるべきだ」とする関係者のコメントを紹介しています。

イスラエルとハマスの一連の衝突が始まって以降、アメリカ軍が駐留する中東の基地などが、イランの支援を受ける勢力から攻撃を受ける事態がたびたび起きています。

イランは関与を否定していますが、中東全域で緊張が高まることが懸念されます。

米紙 “ハマス戦闘員がイランで訓練” イランメディア「否定」

一方で、アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは25日、関係者の話として、ハマスの戦闘員らがイスラエルへの大規模な奇襲攻撃を前にイランで訓練を受けていたと伝えました。

それによりますと、ハマスやハマスと連携する武装組織「イスラム聖戦」の戦闘員およそ500人が9月、イランで特別な戦闘訓練を受けていたということです。

訓練はイランの最高指導者直轄の精鋭部隊「革命防衛隊」の中でも、主に国外での特殊任務を担う「コッズ部隊」によって行われたとしています。

ただ、イランがこの訓練を今月7日の奇襲攻撃に向けた準備として行ったことを示す情報は今のところないということです。

これに対し、イランの体制寄りのメディアは「アメリカの新聞の主張を否定する」とした見出しの記事を掲載し、「このニュースの目的はイスラエルの取り返しのつかない敗北から目をそらすことだ」と主張しています。

これまでイラン政府はハマスによるイスラエルへの攻撃を支持する一方で、自らの関与については一貫して否定しています。

国連総会で緊急特別会合始まる

国連総会の緊急特別会合は26日、ニューヨークの国連本部で始まりました。

会合ではイスラエルとパレスチナの双方の代表が激しく非難しあうなど、各国がそれぞれの意見を表明する演説を行っていて、会合の最後に即時停戦などを求める決議案の採決が行われます。

パレスチナ情勢をめぐって緊急特別会合が開かれるのは2018年以来、およそ5年ぶりです。

各国の演説でははじめに、パレスチナのマンスール国連大使が、ガザ地区での犠牲者の多くが一般市民だとして、「この戦争を擁護できるだろうか。これは犯罪だ」と訴えた上で、「復しゅうは何も生まない。すべての命は平等だ。命を救ってほしい」と述べ、即時停戦を呼びかけました。

これに対してイスラエルのエルダン国連大使は「イスラエルはパレスチナの人たちではなくテロ組織のハマスと戦争をしている。われわれの目標はハマスの能力を完全に根絶することであり、そのためにあらゆる手段を使う」と述べ、攻撃を続ける考えを強調しました。

イラン 米を強くけん制 ハマス擁護の姿勢鮮明に

一方でイランは、アブドラヒアン外相が演説し、「パレスチナは武力を含む利用可能なすべての方法で占領に抵抗する権利を持つ。占領者に対する闘争をテロ行為だと非難しても世界を欺くことはできない」と述べ、ハマスを擁護する姿勢を鮮明にしました。

さらに、「アメリカは財政支援や軍事支援でこの戦争に直接的に参加していて、国際法の義務に違反している」と述べて、イスラエルとともにアメリカを非難し、「ガザ地区での大量虐殺が続くならば、アメリカはこの惨事から免れることはできない」と述べ、イスラエルを擁護するアメリカを強くけん制しました。

あす 即時停戦などの決議案の採決行われる

緊急特別会合は27日も行われ、あわせて100か国以上の代表が演説したあと、ヨルダンが提出した決議案の採決が行われます。

決議案は、▽即時停戦や▽一般市民の保護、それに▽人道支援物資のガザ地区への搬入などを求める一方、▽ハマスによる攻撃を非難する内容は含まれていません。

総会の決議に法的拘束力はありませんが、193すべての国連加盟国が参加できるため、国際社会の総意を示すものとされ、採決の結果が注目されています。

ガザ地区の保健当局は猛反発

これに対してガザ地区の保健当局は26日、「アメリカ政府は何の根拠も無く、保健当局が発表する数の妥当性を疑問視している。そこで、われわれはイスラエルが行った虐殺の実態を、世界の人々の前で詳細に発表することを決めた。すべての数字の裏には1人1人の物語がある。われわれの市民は無視できる存在ではない」とSNSに投稿して猛反発しました。