イスラエルの情報機関元高官「ガザ地区北部が地上戦の中心か」

イスラエル軍がガザ地区への地上侵攻に向けた準備を進めるなか、イスラエルの情報機関の元高官が25日、NHKのインタビューに応じ、イスラエル軍の地上侵攻はまず、ガザ地区を南北に分断したうえでハマスの本部があるとみられるガザ地区北部を中心に地上戦を展開し、地下トンネルへの対応を専門とする特殊部隊も投入されるだろうという見方を示しました。

“イスラエル軍は北部中心に激しい攻撃加えるか”

NHKのインタビューに応じたのは、イスラエルの情報機関の元高官デイビッド・シモニ氏です。

シモニ氏は、イスラエル軍の地上部隊は侵攻を開始したあと、まずガザ地区の南北を結ぶ道路を封鎖して南部と北部を分断した上で、ハマスの本部があるとみられる北部を中心に激しい攻撃を加えるという見方を示しました。

特殊部隊ヤハロム投入 “軍のなかでもエリート部隊”

シモニ氏はハマスの本部はガザ地区北部の市街地の地下に張り巡らされた「メトロ」とも呼ばれる要塞都市のような地下トンネルの中にあるとみています。

この地下トンネルに対し、イスラエル軍は「バンカーバスター」と呼ばれる厚いコンクリートなどを突き破ったあとで爆発する特殊な爆弾が使うことが予想され、シモニ氏はここ数週間でアメリカからイスラエルに「バンカーバスター」が供与されたという情報があることを明らかにしました。

そのうえでイスラエル軍は地下トンネルへの対応を専門とする「ヤハロム」という特殊部隊を投入し、トンネルやトンネル内に隠された武器などの破壊にあたるという見方を示しました。

シモニ氏は特殊部隊「ヤハロム」について「ヘブライ語でダイヤモンドを意味し、工兵部隊に所属している。軍のなかでもエリート部隊だ」としています。

“ガザ地区は燃料不足 イスラエル軍にとって好機”

ハマスはトンネルへの侵入を防ぐために激しく抵抗することが予想されますが、シモニ氏はガザ地区は現在、燃料不足に陥り発電機を動かすことができないため、トンネル内の換気を行ったり、通信機能を維持したりすることが難しくなっていてイスラエル軍にとっては攻撃を仕掛ける好機になっていると分析します。

またシモニ氏は市街地での地上戦についてハマス側が空爆で建物や住宅が壊れたがれきに隠れながらゲリラ戦術を展開することが予想されるのに対して、イスラエル軍は空軍や海軍の支援を受けながら戦車などの地上部隊を進めることになるという見方を示しました。

さらにシモニ氏はイスラエル軍がハマス側の裏をかいて“奇策”を用いる可能性もあるとします。

シモニ氏は「少数の特殊部隊をガザ市に潜入させハマスの幹部を殺害することなどが考えられる」と話しますが、「サプライズを台無しにしたくはない。サプライズはサプライズだ」と述べ詳細は言及しませんでした。

“ヒズボラの軍事的脅威で地上侵攻限定的に 空爆続くか”

一方、イスラエルにとって地上侵攻を実施する判断を難しくさせている最大の要因として、人質の存在に加え隣国レバノンのシーア派組織ヒズボラの軍事的な脅威をあげます。

シモニ氏はヒズボラの軍事力はハマスを上回り、「イスラエル全土で多大な被害と犠牲者を出すような極めて破壊的な能力を備えたロケット弾を保有している」と指摘します。

そのうえでガザ地区に全面的に地上侵攻すればヒズボラが北から本格的に参戦し、イスラエルは2正面での戦いを強いられるおそれがあり、それは避けるべきだと強調します。

このためシモニ氏はガザ地区への地上侵攻の見通しについて「動員した36万人の予備役全員を投入した総力をあげた侵攻ではなく、より限定的で、制限されたものになるだろう」と見ています。

当面は「より多くの空爆を毎日繰り返しハマスの軍事力と戦闘意欲を削っていくことのほうがよりよい選択肢だ」として、場合によっては大規模な空爆が続く可能性も示唆しました。