岸田首相 税収増の国民への還元策検討指示 政府与党政策懇談会

新たな経済対策をめぐり、岸田総理大臣はきょうの政府与党政策懇談会で、所得税などを1人当たり4万円差し引く定額減税を行い住民税の非課税世帯に7万円を給付する案などをもとに具体的な制度設計を検討するよう指示しました。

この中で岸田総理大臣は「30年来続いてきたデフレから脱却できるチャンスを迎えているが、賃金上昇が物価高に追いついていない。放置すれば再びデフレに戻りかねず、政府として支えることが肝要だ」と述べました。

そのうえで税収増の一部を国民に還元するため、所得税と住民税の定額減税とともに給付を行う意向を明らかにし、与党の税制調査会を中心に具体的な制度設計を検討するよう指示しました。

政府側から示された案では、過去2年間の税収増をもとに
◇納税者本人と扶養家族を対象に1人当たり所得税3万円と、住民税1万円の合わせて4万円を差し引く定額減税を行うとしています。

また
◇所得の低い人への支援として住民税の非課税世帯に7万円を給付し、これまでの物価対策ですでに決定した3万円と合わせて10万円になるとしています。

さらに
◇住民税は納めているものの所得税を納めていない人にも同じ程度の給付を行うほか
◇低所得の子育て世帯には追加の支援を講じるとしていて
この案をもとに与党での議論が進められます。

政府としては来月2日に経済対策を決定したうえで、非課税世帯への給付は補正予算案の成立後速やかに行うとともに、減税は必要な法改正を経て来年6月に実施したい考えです。

一方、岸田総理大臣は少子化対策の一環として行う所得制限の撤廃をはじめとした児童手当の拡充をめぐり、当初、再来年2月からとしていた振込の開始時期を前倒しして来年12月からとする方針を明らかにしました。

税収還元が不十分な層にも支援

税収増の還元策について、政府が示した案では、納税者本人とその扶養家族を対象に1人当たり所得税3万円と住民税1万円の合わせて4万円の定額減税を行うとしています。

この場合、対象となるのはおよそ9000万人となる見込みです。

ただ、所得が低い個人や世帯は、所得税などの減税では十分な還元を受けられないことからその支援策も検討します。

▽このうちおよそ1500万世帯あるとみられる住民税の非課税世帯は、減税による還元を受けられないことから、政府はこうした世帯に対し、7万円を給付する方針です。

住民税の非課税世帯にはことし春の物価高対策でも3万円の給付が盛り込まれ、この夏から給付が始まっています。

さらに、非課税世帯への給付について、子育て世帯には上乗せする方針です。

▽また、住民税と所得税は課税の基準が異なるため、住民税は納めていても、所得税は納めていないという人も500万人程度いるとみられています。

政府は、こうした人たちの世帯にも住民税の非課税世帯と同じ水準の給付を行う方向で検討します。

▽さらに、収入が低くて年間の納税額が4万円に満たない人も400万人程度いるとみられます。

こうした人たちも減税だけでは十分に還元を受けられないことから、なんらかの仕組みで補うことを検討する方針です。

岸田首相「子育て世帯の分断を招くことがあってはならない」

岸田総理大臣は、26日夜、総理大臣官邸で記者団に対し、減税を行う際に所得制限を設けるかどうかについて「きょうの会議では定額減税が子育て世帯の支援の意味合いを 持つことも申し上げた。子育て世帯の分断を招くことがあってはならないという考え方で、与党の税制調査会で制度を具体化していくことになると考えている」と述べました。

また所得が低い世帯に対する給付の実施時期については「地方の実情に応じて行われる仕組みだが、来月2日にまとめる経済対策に盛り込んで、補正予算案の成立後、できるだけ早く支援がなされるよう働きかけを行っていきたい」と述べました。

減税の背景に過去2年間の税収増加

岸田総理大臣は、今回、検討を指示した減税について過去2年間の税収の増加を国民に分かりやすく還元するためだとしています。

国の税収は、新型コロナウイルスによる打撃から景気が回復に向かう中、2020年度の60兆8216億円から昨年度・2022年度は71兆1374億円と2年間で10兆3000億円余り増えました。

このうち減税が検討されている所得税は、2020年度の19兆1898億円から昨年度の22兆5217億円と3兆3000億円余り増えました。

また、所得税と同様に減税が検討される住民税もこの2年間で2000億円程度の増収が見込まれていて、この2つの税目を合わせると3兆5000億円程度の増収となります。

政府はこの税収の増加分を念頭に1人当たり4万円という減税を検討しているとみられ、今後、与党の税制調査会で具体的な制度設計が進められることになります。

公明 山口代表「金額もおおむね妥当な水準」

公明党の山口代表は記者団に対し「減税と給付を組み合わせて物価高に対応できるようにするという考え方は首肯できる。減税や給付の金額もおおむね妥当な水準だ。与党として合意し、できるだけ早く必要な人々に支援の手が届くよう全力を尽くしたい」と述べました。

一方、与党が議論する前に減税額などの案が示されたことについては「政府・与党で最終的な合意を目指すにあたり、合意形成をしやすいプロセスになっていると思う。ある意味で妥当で、やむをえない部分がある」と述べました。