“被害の映像 見るのがつらい” 対策は… 専門家に聞く

イスラエル軍とイスラム組織ハマスによる大規模な衝突をめぐっては連日、壊れた建物や傷ついた人たちなどの映像が発信され、ネット上では「見るのがつらい」という声もみられます。これらの情報に触れて「見ていてつらい」と感じる人や子どもがいる家庭などではどのように向き合えばよいのか、専門家に聞きました。

映像見るだけでもつらい…なぜ?

イスラエル軍とハマスによる大規模衝突が始まって以来、SNS上では「爆撃のニュース見る度に涙出てくる」とか「子供達の苦しむ姿がTLに流れてくるのがつらい」などといった投稿も目にします。

災害や戦争などによる心の影響について詳しい精神科医
目白大学保健医療学部 重村淳教授
「ニュースを知ることはとても大切で、その前提は間違いない。ただ、情報をどう得るのか工夫が必要だ」

重村教授によると、テレビやSNSで流れてくる映像が以前と比べてリアル(鮮明)なため、映っている人の体験を追体験しやすくなっているということです。

例えば▽衝撃的な映像を見たり、▽同じ報道を繰り返し見たりすることで現地の人に共感してしまい、見ている自分までつらくなってしまうことがあるとしています。

特に、紛争の背景や状況などを理解することが難しい幼い子供は映像や音だけを受け止めることになるうえ、外国で起きていることと自分の身近で起きていることの区別がつきづらく「自分は今、安全ではない」と捉えてしまうため、必要以上におびえたり恐怖を感じたりしやすいそうです。

感情移入しやすい人は特に注意が必要

重村教授
「自分が意識しないタイミングで映像に触れる“不意打ち”にも注意しておく必要」

テレビなどを「ながら見」していて、ふいにニュースを目にしたりSNSで突然流れてくる動画に接したりするときには、心の準備ができていないため、精神的な負担が大きくなってしまうおそれがあるそうです。

さらに、見る人の環境などによっては映像に感情移入しすぎてしまうこともあります。

例えば、小さな子どもや孫などがいる人が、子どもが傷ついていたり泣き叫んでいたりする動画を目にすると「我が子に同じようなことがあったらどうしよう」などと感じてしまい、つらい気持ちがさらに大きくなりやすいので注意が必要です。

ニュースどのように知るか自分で工夫を

私たちが触れる映像にはつらくなるような内容も含まれる中で、どのように情報と接するのがよいのでしょうか。

重村教授
「ニュースをどのように知るかを自分で工夫することが重要だ」

具体的な対策として以下のポイントを教えてくれました。

▽テレビだけでなく、新聞など文章からも情報を得る
▽SNSやテレビなどに関わる時間を決めて必要最小限にする
▽音量を下げる
特に子どもに対しては、親が知らないうちに衝撃的な映像を見てしまうのを防ぐため、
▽ニュースなどは決められた時間にリビングで一緒に見る
▽SNSに制限をかけるなどと家庭でのルールを定める
ことも有効だとしています。

“子どもは影響を受けやすい”家庭での注意点は?

重村教授は、衝撃的な映像などに接したとしても子どもたちなりに考えたり感じたりすることはあり、出来事の背景や意味を理解することで受け止め方も変わるといいます。

そのため、子どもと向き合い、しっかり対話することが大切だと指摘します。

伝えるのが難しい話題だからと大人が避けてしまうと、子どもはつらい気持ちがどんどん膨らんでしまい、親が気付けないおそれがあります。

そのうえで、親子で積極的に話をする機会を設け「どのように感じたか」や「どこまで理解できているか」などをよく聞いて、子どもの気持ちを受け止めることが重要だとしています。

その際には、親が子どもの考えを決めつけず「そういうことで悩んでいたんだね」などと共感していることを伝え、さらに必要な情報を補足してあげるのがよいということです。

一方、「生」や「死」の概念や複雑な問題の背景を子どもにどのように説明すればよいかについては、簡単なことばに置き換えて伝えるのがよいとアドバイスしています。

重村教授
「子どもは“生きる”“死ぬ”概念を理解できない場合があります。『2つのグループの人たちがけんかしているんだよ』とか『けんかしているとそれがひどくなっちゃうんだよ』とか、死という言葉を使わないでも概略を伝えることはできる」

周りに“つらさ”を感じている人がいたら…

もし自分たちの周りに「つらい」と感じている人がいたら、私たちはどのようなことができるのでしょうか。

重村教授
「『ここは安全な場所だよ』とか『あなたの周りには支えてくれる人がいるよ』などとメッセージを伝えて、安心させることが大切だということです」