【解説 ウクライナ情勢】ドニプロ川めぐる攻防 戦況への影響は

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍が東部で攻勢を強めているのに対して、ウクライナ軍は南部ヘルソン州を流れるドニプロ川を渡って大規模な作戦を展開しているとみられ、東部と南部で激しい攻防が続いています。

このドニプロ川をめぐる攻防、今後の戦況にどのような影響を与えるのでしょうか。
防衛省防衛研究所の兵頭慎治 研究幹事の解説です。

※動画は3分16秒 10月22日の「NHKニュース7」で放送しました。
 データ放送ではご覧になれません。

ボートに乗り込むウクライナ軍の兵士たち。

川をボートで進んでいきます。

(ウクライナ軍兵士)
「迷いなく敵と戦いに行く われわれの家族と国のためだ!」

反転攻勢を続けるウクライナ軍。

南部ヘルソン州を流れるドニプロ川を渡ってロシア側が占領を続ける東岸地域で大規模な作戦を展開し、一部の集落に部隊を前進させたという見方も出ています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「ウクライナ側は奪還した陣地で補給や部隊の補強を図ろうとしているが、ロシアも必死に阻もうとしている」と分析しています。

ウクライナ軍 ドニプロ川での作戦 その意味合いは?

激しい攻防が続くドニプロ川。

その流域ではことし6月に水力発電所のダムが決壊。

下流では広い範囲が浸水し、ウクライナ軍の反転攻勢への影響が指摘されていました。

今回のウクライナ軍によるドニプロ川での作戦。

その意味合いを兵頭さんは、こう分析します。

(防衛省防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事)
水没の影響が収まってきて、ウクライナ側も本格的な渡河作戦を再開する状況が整ってきた。
ドニプロ川というのは、渡河が成功して突破できればウクライナ軍はクリミア半島に最も近い場所になる。
ロシア軍の側も一定の兵力を別の前線から振り向けて、ここの守りを固めていかざるをえない可能性もある。

冬が近づく中 焦点は?

そのロシア軍は、東部で攻勢を強めています。

21日の夜、ハルキウ州の郵便施設に対してミサイルで攻撃を行い、ウクライナ側は6人が死亡したと発表しました。

冬も近づく中、どのようなことが焦点となるのか、兵頭さんに聞きました。

(防衛省防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事)
ウクライナ軍の反転攻勢の本命は引き続き南部ザポリージャ州、トクマクに向けてロシア軍の防衛線を突破できるか。
ロシア側の兵力の分散を図り、そしてこのザポリージャ州でのロシア軍の守りを弱めていきたい。
ロシア軍の戦力を分散させるという観点からドニプロ川をめぐる両者の攻防戦、これは引き続き続いていく。