新経済対策 立民 泉代表“給付を” 首相“所得税減税検討”

国会は、24日から衆議院本会議で、岸田総理大臣の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まりました。立憲民主党の泉代表が物価高を受けた新たな経済対策は所得税減税ではなく給付を中心にすべきだとただしたのに対し、岸田総理大臣は税収増を国民に還元するため、給付とともに所得税減税の検討を早急に進める考えを示しました。

立民 泉代表 新たな経済対策について

▽立憲民主党の泉代表は、物価高を受けた新たな経済対策について「あまりに遅すぎる。また、物価上昇局面で過度の財政出動を行えば、一層のインフレを招き、さらに物価が上がる。対策の重点化を図るべきだ。国民が望むのはことし中の『給付・給付・給付』だ。全体の6割の世帯に3万円の『インフレ手当』の給付を求める」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「国民への還元は所得税減税を含め早急に検討を進める。同時に供給力強化のための政策を車の両輪として行い、インフレが加速しないよう適切に対応する。物価高に最も切実に苦しんでいるのは低所得者で、『重点支援地方交付金』の支援枠を追加的に拡大する」と述べました。

立民 泉代表 旧統一教会の問題について

また泉氏は、旧統一教会の問題をめぐり「被害救済に必要な財産が散逸しないよう、教団の財産を保全する手だてが不可欠だ。財産保全を行う議員立法を超党派で議論し成立させようではないか」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「旧統一教会の資産状況を注視しつつ、速やかに被害者の救済が図られるよう、現行法上のあらゆる制度を活用し、被害者救済のために最大限取り組んでいく。議員立法の法案を含め、各党にさまざまな動きがあると承知しており、こうした動きも注視していく」と述べました。

自民 稲田幹事長代理 少子化対策の財源確保策について

▽自民党の稲田幹事長代理は、少子化対策の財源確保策について「実質的に追加負担を生じさせず、社会保障改革で保険料を抑制していく方針が示されている。保険料を改革によって抑制することで負担増はなくなるという理解でいいのか」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「徹底した歳出改革などを行い、その効果を活用するなどして国民に実質的な追加負担を生じさせないことを目指す。法制化が必要なものは次の通常国会への法案提出に向けて準備し、制度設計を含め速やかに具体化していく」と説明しました。

自民 稲田幹事長代理 外交・安全保障政策について

一方、稲田氏は、外交・安全保障政策をめぐり「ロシアがウクライナを侵略し、中東ではハマスによる残虐なテロ行為が発生するなど暴力で国際社会の秩序が壊される事態が相次いでいる。国際社会の分断が深まる中、積極的な外交を展開しなければ取り残されてしまう」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化すべく、同盟国や同志国との連携を推進しつつ、いわゆるグローバル・サウスと呼ばれる国々を含む国際社会の幅広い支持と関与を得るため、多角的な外交を推進していく」と強調しました。

また岸田総理大臣は、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり「刻々と動く現地情勢を踏まえ関係国との間で意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期の沈静化と人道状況の改善に向けた外交努力を積極的に続けていく」と述べました。

自民 稲田幹事長代理 憲法改正について

さらに稲田氏は、憲法改正をめぐり「自衛隊の明記は現在の厳しい安全保障環境と防衛力の抜本的強化の必要性に鑑み、各党との協議を加速化し、速やかな実現を図ったうえでさらに踏み込んで検討していく必要がある。憲法改正実現に向けた決意を示してほしい」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「国会の発議に向けた手続きを進めるためにも、国会でこれまで以上に積極的な議論が行われることを期待する。自民党総裁として、あえて申し上げれば、党内の議論を加速させるなど憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意だ」と述べました。

立民 吉田晴美氏 ジャニー喜多川氏の性加害問題について

▽立憲民主党の吉田晴美氏はジャニー喜多川氏の性加害の問題について「有効な再発防止策を講じるため、被害者に会ってヒアリングすべきではないか。児童虐待防止法の改正案について与野党協議に応じてもらいたい」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「当事者などの声を聞き、被害の実態把握に努めることは大切だ。これまでも関係府省で被害当事者や支援者などから直接、話をうかがい、子どもの性被害の特徴などを十分に踏まえたうえで緊急対策を立案し、実施してきた。改正案は議員立法として提出されたもので、取り扱いなどは今後、国会で議論いただくものだ」と述べました。

このほか岸田総理大臣は、今の健康保険証を来年秋に廃止してマイナンバーカードと一体化する方針について「ひも付けの総点検とその後の修正作業の状況も見定めた上で、さらなる期間が必要と判断された場合には必要な対応を行っていく」と述べ、総点検などの状況次第では廃止の延期も含め必要な対応を取る意向を示しました。

また岸田総理大臣は、少子化対策の一環としての児童手当の拡充に伴い、高校生の扶養控除を廃止するかどうかについて「今後、整理を進める必要があるとしても、高校生の扶養控除の廃止を前提とした議論や検討をしている事実はない」と述べました。

立民 泉代表「何も答えない答弁 政治家としてのことばを」

立憲民主党の泉代表は、記者団に対し「岸田総理大臣は所信表明演説で『経済、経済、経済』と言ったが中身はほとんど明らかになっておらず、きょうも検討や注視はするが、結局何も答えない答弁だった。答弁書を読んでおしまいでは役所に聞くのと同じで、政治家としてのことばを述べてもらわなければならない」と述べました。

そのうえで「所得税減税は自民党内にも賛否両論があり、岸田総理大臣が指示をしても、先行きは不透明だ。実施できるかわからないが、とにかく選挙の前に、ことばだけ先に出しておいたという段階ではないか」と批判しました。

ジャニーズ問題 当事者の会副代表「首相と面会し直接話したい」

「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の副代表を務める石丸志門さんは、衆議院本会議の代表質問を傍聴したあと記者団に対し「国会の議事録に残る場面で『ジャニーズ』ということばが出てきたのは、大きな一歩になる。ぜひ岸田総理大臣と面会し、被害者の窮状を直接話すことができればと思っている。政府・与党にも積極的にこの問題に取り組んでもらいたい」と述べました。