処理水放出開始から2か月 香港の輸入規制で一部事業者に影響

東京電力福島第一原発にたまる処理水の海への放出が始まって24日で2か月です。
放出後に茨城県沖で採取された海水や魚のトリチウムの濃度は検出できる下限を下回っているものの、香港側の規制に伴い、一部の事業者で影響が出ているということです。

福島第一原発では、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水が発生し続け、東京電力は、基準を下回る濃度に薄めたうえで、ことし8月から海への放出を始めています。

茨城 水産物事業者 一部に影響も 宿泊予約キャンセル確認されず

環境省は処理水の放出後、3週間に1度の頻度で茨城県北茨城市の沿岸で海水のモニタリングを行っていますが、先月6日と26日に採取した海水を分析した結果、トリチウムの濃度はいずれも1リットル当たり7ベクレル未満で、検出できる下限を下回ったということです。

また、水産庁は先月5日に那珂湊沖でとれたヒラメと鹿嶋市沖でとれたシラスのトリチウムの濃度を分析し、いずれも検出できる下限を下回ったということです。

また、県によりますと処理水の放出後、県内で水揚げされた水産物の価格に目立った影響は確認されていないということです。

一方で、香港が茨城県を含む10の都県の水産物の輸入を禁止した影響により、水産物を扱う一部の事業者の取り引きに影響が出ているということです。

県によりますと、観光業では、処理水放出によるものと見られる宿泊施設の予約のキャンセルなどは確認されていないということで、県では今後も、水産業や観光業などへの影響が出ていないか、調査することにしています。

千葉 アワビ価格 3割程下落もほとんどの魚種で大きな影響なし

千葉県が水産物の取引価格などへの影響を調査したところ、アワビの価格が3割ほど下落した一方、ほとんどの魚種では大きな影響は出ていないとしています。

千葉県は、県内の漁協や水産加工業者など33の事業者を対象に、処理水の海洋放出を受けて水産物の取引価格や操業、流通に影響がないか、毎週聞き取り調査を続けています。

それによりますと、春から秋にかけて各地で水揚げされ、多くが輸出されている「クロアワビ」の取引価格は、ことし5月時点で1キロ当たり2万円を超えていましたが、先月中旬には3割ほど安い1万円台まで落ち込んだということです。

香港が処理水の放出に伴って、千葉県を含む10都県の水産物の輸入を禁止した影響とみられ、さらに、輸出が中心の「ナマコ」は漁業者の間で水揚げを見合わせる動きも出ているということです。

一方で、ほかに水揚げされているほとんどの魚種については、これまでのところ価格や流通などへの大きな影響は出ていないということで、千葉県漁業資源課は「引き続き状況を注視していきたい」としています。

茨城 北茨城市内の宿泊施設 風評被害確認されず 聞き取り調査

東京電力福島第一原発にたまる処理水の海への放出が始まってから2か月がたつ中、福島県に隣接する茨城県北茨城市では、市内の宿泊施設に対して処理水放出の前後の予約状況やキャンセルの有無などについて聞き取り調査を行った結果、風評被害は確認されていないということです。

北茨城市商工観光課の鈴木崇係長は「風評被害を起こさせないための私たちの最大限の努力は安全性のPRに尽きると思う。北茨城のおいしい食べ物を知ってもらうことも重要な取り組みなので、PRしていきたい」と話していました。