クマに襲われる被害 目撃情報相次ぐ 各地の状況まとめ(24日)

東北地方を中心にクマによる被害が相次いでいます。

秋田県内では24日もクマに人が襲われる被害が相次ぎ、羽後町のゴルフ練習場では70代の女性がクマに襲われ、顔にけがをしたほか、仙北市や鹿角市でも合わせて3人の男性がけがをしました。

クマに襲われ被害 全国で過去最悪167人に(24日正午時点)

クマに襲われてけがをするなど被害にあった人の数をNHKがまとめたところ、今年度はこれまでに17の道府県で少なくとも167人にのぼり、国が統計を取り始めて以降、最も多かった3年前の158人をすでに上回り、過去最悪の被害となっています。

また、特に10月に入ってから各地で被害が増えていて、10月はこれまでに58人と、1か月の被害としてはこれまでで最も多かった49人をすでに大きく上回っています。

例年、クマが冬眠に入る前のこの時期、被害が増える傾向があることから国や自治体などが被害を防ぐ対策の徹底を呼びかけています。

【秋田】県内各地でクマに襲われる被害 4人けが

警察によりますと、24日午前7時ごろ、羽後町足田のゴルフ練習場でボールを回収していた70代の女性がクマに襲われ、顔にけがをしました。

当時、練習場の敷地内ではこの女性を含めて4人がボールの回収作業を行っていて、200ヤード付近で女性が襲われていることに気付いた1人がカートでクマに近づいたところ、クマは南側の林に逃げていったということです。

また、24日午前7時半前には仙北市田沢湖田沢で70代の男性が自宅の敷地内の小屋から出たところで、クマに襲われて頭や顔にけがをしました。

さらに、午前11時前には鹿角市十和田山根でりんご園にいた70代の男性がクマに襲われて腕や背中にけがをしたほか、この近くで別の70代の男性も腕や胸などにけがをしたということです。

けがをした4人は、いずれも意識はあるということです。

秋田県警察本部によりますと、ことし、秋田県内でクマに襲われるなどしてけがをした人はこれで57人になり、過去最多を更新しています。

県と警察は「ことしは特に、『いつでも・どこでも・誰でも』クマに遭遇するリスクがある」として、やぶなどの見通しの悪い場所には近づかず、鈴やラジオなどで音を出して人の存在をアピールするよう警戒を呼びかけています。

ゴルフ練習場の男性「あっという間に襲ってきた」

羽後町のゴルフ練習場で、当時、けがをした女性と一緒にボールを回収していた男性は「クマは練習場のフェンスの外に出ようとしていたが、ネットに引っ掛かって出られなかったようで、あっという間に襲ってきた。近くにゴルフボールを入れるカートがあったのでつかんで身構えるような感じで前に出るとクマが逃げ出した。クマが向かってきたときは怖かった」と話していました。

【秋田】秋田市中心部の住宅街でもクマが目撃

ことし、クマによる過去最悪の被害が続く秋田県では、24日、秋田市中心部の住宅街でもクマが目撃され、警察が注意を呼びかけています。

警察によりますと、午前8時すぎ、秋田市中心部の手形地区の住宅街で体長50センチほどのクマ1頭が目撃されました。

この近くでは午後にもクマの目撃情報が相次ぎ、同じクマとみられるということです。

警察は、近くにクマがとどまっている可能性があることから、周辺をパトロールするとともに、住民に注意を呼びかけています。

現場はJR秋田駅から歩いて15分ほどのところで、近くには秋田大学手形キャンパスもあります。

秋田大学では、キャンパスにいる学生に対してクマが目撃されたことを伝えるとともに、注意を呼びかけました。

大学1年生の女子学生は、「大学には人が多くいるので、人への被害が発生したら怖いと思い、どこにいても気が抜けないと感じました。暗い道や山に近いところは通らないようにしたいと思います」と話していました。

【富山】ことしは平野部でクマ出没が急増 周辺で警戒続く

今月、富山市でクマに襲われたとみられる高齢の女性が死亡した現場付近では23日も男性がクマに襲われ、大人のクマ1頭が駆除されました。ことしは平野部での出没が急増していることから周辺では警戒が続いています。

富山県によりますと今月17日富山市江本の住宅の敷地内で、クマに襲われて79歳の女性が死亡し、23日午後には、そこからおよそ2.5キロ離れた富山市安養寺でも72歳の男性がクマに襲われて大けがをしました。

男性を襲ったクマはその場で駆除されましたが、周辺では24日も警戒が続いていて、23日の現場から東に4キロメートルほど離れた月岡地区では、市が防災無線や広報車を使って住民に不要不急の外出を控えることや厳重に戸締まりをするように呼びかけていました。

また、月岡小学校では、保護者が子どもを車で送り届ける姿が見られました。

この小学校の近くでも先週、クマが目撃されたということで、学校では、運動場での体育の授業をとりやめているほか、休み時間も児童たちに校舎から出ないよう呼びかける対策をとっているということです。

児童を送りに来た70代の祖母は「家の隣の柿の木にクマの爪痕があったので朝は周囲をよく確認しています。クマに襲われると怖いのでできるだけ送迎したいです」と話していました。

また、別の児童を送りに来た60代の祖父は「子どもたちにはクマに遭遇した時の対応のしかたを家で練習させています。子どもたちが心配です」と話していました。

【富山】県内でのクマ出没情報 7割余が「市街地」など

富山県内でクマによる人への被害が相次ぐなか、ことし、23日までに寄せられた出没情報の7割余りが、クマが本来生息していない市街地などで確認されたことが富山県のまとめで分かりました。

富山県内のクマの出没件数は、今月は23日までに165件と去年10月の1か月分の7倍余りに急増しています。

ことしは、23日までに5人がクマに襲われ、このうち今月17日には富山市の住宅の敷地内で79歳の女性が死亡しました。

富山県はクマが出没した地域について、
▽クマが生息する「奥山」、
▽人間の活動があり、クマが生息する「山間地の集落周辺」など、
そして、
▽人間の活動が活発で、クマが本来生息していない「市街地」などの3つのゾーンで区分して分析しています。

その結果、23日までに寄せられたおよそ360件の出没情報のうち、74%がクマが本来生息していない「市街地」などで確認されたことが分かりました。

また富山市によりますと、市内では同じ期間の出没情報の79%が「市街地」などで確認され、今月襲われた3人が被害にあったのはいずれも「市街地」などだったということです。

ことしはブナの実などが不作となり、冬眠を前にしたクマがエサを求めて平野部に出没するケースが相次いでいます。

富山県は「川沿いの地域を中心にクマの行動範囲が市街地まで広がっていて、危険な状況だ。どこで出没してもおかしくないという意識を持って警戒してほしい」と話しています。

【東京】多摩地域で“クマ”目撃情報相次ぐ 都が注意呼びかけ

各地でクマによる被害が相次ぐ中、東京都では、町田市の山中にある宿泊施設の敷地内など多摩地域で目撃情報が相次いでおり、都は注意を呼びかけています。

東京都によりますと、都内では今年度、これまでにクマによる被害の報告はありませんが、多摩地域で、クマとみられる動物の目撃やふんの発見のほか、捕獲されたといった情報が相次いで寄せられており、今月20日までに合わせて111件に上っています。

住宅地での目撃はなく、多くが登山道や林道ですが、町田市では、今月18日に、山の中にありテントなどを利用できる宿泊施設の敷地内でクマが出没したということです。

都内では去年、奥多摩町の山中で、猟友会の男性がクマに襲われてけがをするなどしており、都の担当者は「目撃などの件数は昨年度の同じ時期より減っているが、情報があった場所に行く際は、鈴を付けて鳴らすなど、被害に遭わないための対策をとってほしい」と注意を呼びかけています。

環境省 相次ぐクマ被害受け 捕獲費用補助など緊急支援へ

クマによる被害の報告が東北地方を中心に相次いでいることを受け、伊藤環境大臣は24日の閣議後の会見で、自治体がクマの捕獲や調査を実施する際にかかる費用を補助するなどの緊急支援を実施する方針を示しました。

環境省はクマが冬眠する12月まで被害が続くおそれがあるとして、農林水産省や警察庁など関係する省庁による緊急の連絡会議も近く開催し、クマ被害への対策を強化することにしています。

伊藤大臣は「市街地でのクマの出没が多くなっている。森林などクマの生息地域の対応とは異なるため、効果的な対策を行っていきたい」と話しています。