【24日詳細】ハマス さらに人質2人を解放 死者は7100人超えに

イスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区で激しい空爆が続くなか、ハマスは23日、人質としてきたイスラエル人2人を解放しました。
外国人も含め200人以上の人質が残るなか、イスラエル政府が今後大規模な地上侵攻に踏み切るか、人質解放の交渉により時間をかけるかが焦点となっています。

※24日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

人質だった女性「トンネルは巨大でくもの巣のよう」

イスラム組織ハマスの人質だったイスラエル人の85歳の女性が24日、イスラエル最大の商業都市テルアビブの病院で解放後はじめて報道陣の取材に応じました。

このなかで、女性はハマスの戦闘員によって、イスラエル側からガザ地区にバイクで連れ去られ、境界線のフェンスを越えたあと地下トンネルに連れて行かれたと明らかにしました。

そのうえで拘束されていた状況について「トンネルは巨大でくもの巣のように張りめぐらされていて、しばらく歩くと大きなホールに25人が集められていた。2、3時間して複数のグループに分けられた」と話しました。

また、数日おきに医師や看護師が健康状態を確認しにきたほか、チーズやキュウリなどの食事も与えられ拘束中は危害を加えられなかったと説明しています。

イスラエル軍 ガザ地区の上空から人質情報呼びかけるチラシ

ロイター通信は24日、イスラエル軍が人質について情報提供を呼びかけるチラシをガザ地区の上空からまいていると伝えました。

ガザ地区南部のハンユニスで撮影された映像では上空からまかれたとされるチラシの周りに、多くの人が集まっている様子がうつっています。

チラシには「あなたとあなたの子どものためにより良い未来を望むのであれば、連れ去られた人たちに関する有益な情報をわれわれに送って下さい」と書かれています。

また、情報提供の見返りとして「イスラエル軍はあなたと、あなたの家の安全を確保するためにあらゆる努力を行い、金銭的な報酬を約束します。また、完全な機密保持を保証します」と書かれていて、情報提供のための電話番号も記されているとしています。

《軍事的な動き》

イスラエル軍“政治的決定に従う 指示を待っている段階”

イスラエル軍の報道官は24日に発表した声明で、「われわれの兵士は準備を整え、決意を固くして訓練を続けている。数週間に及ぶ戦闘が控えており、われわれは政治的決定に従い、最も適切なタイミングで行動を起こす」と述べ、地上侵攻に向けた準備はすでに整い、指示を待っている段階だと強調しました。

また、イスラエル軍は現在、ガザ地区北部にあるガザ市とその周辺に集中的に攻撃を行っているとして、住民には南部に退避するよう改めて呼びかけ、すでに退避した住民には南部にとどまり続けるよう求めました。

一方、ハマスが23日、人質となっていたイスラエル人女性2人を新たに解放したことについては、「エジプトが重要な役割を果たし、この件に関する努力が成果を挙げており、歓迎している」と述べ、仲介役を務めたエジプトなどに謝意を示しました。

人質全員の早期解放を呼びかける活動も

イスラム組織ハマスが新たに人質2人を解放したことついて、いまも家族が人質にとられている人からは、一刻も早く全員を解放してほしいという声が聞かれました。

イスラエル最大の商業都市テルアビブでは24日も、いまも家族を人質にとられている人やその支援者たちが全員の早期解放を呼びかける活動を行いました。

いとこが人質となっているヤリット・シャイビさんは「解放された2人とその家族にとって喜ばしいことです。ただ、全ての人質が解放され、いますぐ家族のもとに帰されるべきです」と話していました。

また、妹を人質にとられているリオン・ヤナイさんは「解放された2人のように、妹を一刻も早く帰してほしいです。国際社会には人質全員の解放に向けて一致して取り組んでもらいたいです」と話していました。

“ハマス戦闘員や幹部の殺害目的の新部隊設立”報道

イスラエルの複数のメディアは、イスラエルの情報機関のうち国内の治安維持を担当する「シンベト」が、イスラム組織ハマスの戦闘員や幹部の殺害を目的とした新たな部隊を設立したと報じました。

新たな組織は第1次世界大戦中に活動したユダヤ人の地下組織の名前をとって「ニリ」と名付けられたということです。

主な標的は今月7日のイスラエルに対する大規模襲撃で中心的な役割をはたしたハマスのエリート部隊とされる「ヌフバ部隊」のメンバーや、ガザ地区の責任者のヤヒヤ・シンワール氏らとみられます。

イスラエルの情報機関は、第2次世界大戦後、ナチスの戦犯の行方を追跡し続けたことや、1972年にドイツで開かれたミュンヘンオリンピックでイスラエルの選手団の11人が殺害された事件のあとパレスチナの武装組織のメンバーを追跡して殺害したことなどで知られています。

イスラエル軍“ガザ地区を空爆し複数幹部を殺害”

イスラエル軍は23日から24日にかけてガザ地区の400か所以上を空爆し、ハマスの部隊が移動に使う地下トンネルなどを破壊したほか、複数の幹部を殺害したと発表しました。

ガザ地区の医療関係者によると一連の空爆で多数の死傷者が出ているということです。

激しい空爆が続くなか、ハマスは23日、外国人を含む200人以上の人質のうち高齢のイスラエル人女性2人をエジプトによる仲介をうけて解放しました。

ハマスによる人質の解放は今月20日に続き2回目で、アメリカやイスラエルの一部メディアはさらにおよそ50人の解放に向けた交渉も行われていたと伝えています。

今月18日から19日にかけて行われた世論調査では、人質の解放のためにハマスと交渉すべきという人が49.5パーセントで、そのためには戦闘の停止もやむを得ないという人は17.5パーセントにとどまっていましたが、相次ぐ人質解放の動きを受けて交渉に時間をかけるべきだという世論が高まる可能性があります。

地上侵攻の開始時期 政権内の意見の相違巡る報道も

こうした中、地元メディアは匿名の政府閣僚が「ネタニヤフ首相はあらゆる攻撃計画に反対していて臆病だ」と批判したとし、地上侵攻にいつ踏み切るかで政権内でも意見が割れていると伝えました。

これに対しイスラエル首相府は23日、「首相と国防相と参謀総長は明確な目標のもと互いに完全な信頼関係で結ばれている」として、政権内の不和を否定する異例の声明を発表しました。

人質解放の動きで大規模な地上侵攻を始める時期が焦点となる中、政権内の意見の相違を巡る報道に神経をとがらせています。

イスラエル“人質の数は約220人にのぼる”

イスラエル側の発表では、人質の数はおよそ220人にのぼるということです。

23日に2人の人質が新たに解放されたのに先立ち、イスラエル軍はこれまでに222人が人質となっていることが確認されたと明らかにしています。

イスラエル政府は、人質について国籍や性別など詳しい内訳は明らかにしていませんが、子どもや高齢者、兵士、障害がある人のほか、1歳に満たない乳児も含まれていると伝えられています。

アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは、23日、人質の中にはイスラエルとの二重国籍を持つ人も含め、およそ30か国の市民が含まれていると指摘しています。

このうちアメリカ国務省は、人質となっていたアメリカ国籍の2人が解放された20日、行方がわからないままの10人のうち数人はハマス側に拘束されていることが確認されたとしています。

またAFP通信が23日までに国別でまとめたところ、タイ国籍19人が人質になっているとみられるほか、ロシア、メキシコがそれぞれ2人、フランス、ルーマニア、スペイン、オランダがそれぞれ1人、人質となっていることが確認されているとしています。

また、ほかの複数の国で行方がわかっていない人も多くいるということです。

多くの外国国籍の人たちはイスラエルとの二重国籍を持つ人たちとみられ、ガザ地区との境界に近い地域に住む人や、ハマスの大規模襲撃の際に開かれていた音楽イベントの会場にいた人たちなどが連れ去られたとみられています。

イスラエル軍 大規模な地上侵攻へ準備

イスラエル軍はガザ地区への空爆を続けるとともに周辺に戦車部隊などを集結させ大規模な地上侵攻への準備を進めています。

イスラエル軍の報道官は23日「ガザ地区に深く入って夜間に戦車と歩兵部隊が襲撃を行い、テロリストの部隊を殺害した」と述べ、ガザ地区内で限定的な軍事作戦を行ったことを明らかにしました。

そのうえで「襲撃は行方がわからない人質についての情報を集め、居場所を突き止めることも目的だった」と述べ、人質についての情報収集も狙いだったと説明しました。

これに対しイスラム組織ハマスも23日、ガザ地区南部のハンユニスの付近で、境界線をこえて侵入してきたイスラエル軍の戦車1台とブルドーザー2台を破壊したとSNSで主張していて現地では緊張が高まっています。

死者は7100人超え

今月7日以降のイスラエルとハマスとの一連の衝突では、イスラエル側で少なくとも1400人が、ガザ地区では5791人が死亡し、双方の死者は7100人を超えています。

ガザ地区とヨルダン川西岸地区 子どもの死者1903人に

パレスチナの保健省は23日、今月7日にイスラエルとハマスの一連の衝突がはじまってからのガザ地区とヨルダン川西岸地区での死者や医療状況について発表しました。

それによりますと、これまでに死亡したのは、ガザ地区で5087人、ヨルダン川西岸で95人だということで、このうち、双方あわせて子どもの死者は1903人にのぼっているということです。

そして空爆などにより全壊した住宅があわせて2万6684棟に上っているほか、イスラエル軍がガザ地区北部の住民に対し南部への退避を通告する中、これまでに140万人が住まいを追われたということです。

このうち68万人以上は親戚などのもとに身を寄せていて、7万人近くがおよそ150か所ある国連機関の学校に、10万人余りがモスクや教会などに避難しているということです。

医療体制のひっぱくや避難生活によって衛生環境が悪化するなか、皮膚病や下痢などの症状も確認されているとして、戦闘が長引くなか住民の健康状況のさらなる悪化が懸念されます。

ハマス さらに人質2人を解放

こうした中、ハマスは23日、エジプトによる仲介を受けて、ガザ地区で拘束している外国人を含む200人以上の人質のうち2人を解放したと発表しました。

2人はともにイスラエル国籍を持つ、80歳代などの高齢の女性で、ICRC=赤十字国際委員会も解放を手助けして23日の夜にもガザ地区から出られることになったとSNSで発表しました。

人質が解放されるのは今月20日の、アメリカ国籍を持つ親子2人に続いて2回目です。

この2人についてハマスはこれまでに先に解放された女性2人と同じ手順で解放する用意が出来ているにもかかわらず、イスラエル側が受け入れを拒否したとSNSで主張し、イスラエル側が否定していました。

ハマスは「敵が受け入れを拒否しているのは承知しているが、差し迫った人道上の理由により解放した」としています。そのうえで「引き渡しを終えるために調停国との間で合意した手続きのうちイスラエルは8つ以上を違反している」と主張しています。

解放された2人は医療機関に搬送

解放されたイスラエル国籍の85歳と79歳の高齢女性は、ガザ地区のラファ検問所を経由してエジプト側に退避したあと、健康状態を確認するためテルアビブの医療機関に搬送されました。

ロイター通信の映像では、ヘリコプターで搬送された女性が担架に載せられ、病院に運び込まれています。

イスラエルメディアなどによりますと、2人はいずれもハマスによる襲撃を受けたイスラエル南部に住んでいて、このうち85歳の女性は病気のパレスチナ人をガザ地区からイスラエルの病院に連れて行く活動を夫とともに10年に以上にわたって続けてきた、人権活動家だということです。

一緒に連れ去られた女性2人のそれぞれの夫は、ハマス側に拘束されたままだと伝えられています。

解放された女性「地獄を経験した」

解放された女性の1人が24日、イスラエル最大の商業都市テルアビブの病院で報道各社の取材に応じ、「地獄を経験した」と振り返りました。

女性はハマスの戦闘員によって、イスラエル側からガザ地区にバイクで連れ去られたとした上でくもの巣のような地下トンネルを歩かされ、拘束されていた場所では医師から必要な医薬品を与えられていたなどと話しています。

人質50人解放は合意いたらず

イスラム組織ハマスが2人の人質を解放したことをめぐり、アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは、交渉に詳しい関係者の話として人質50人の解放について協議が行われたものの、ハマス側が燃料の提供を要求したことで合意にいたらず交渉が暗礁に乗り上げたと伝えました。

それによりますとハマス、カタール、エジプト、そしてイスラエルの間で、ここ数日、燃料を含む人道支援を安定的にガザ地区に供給する見返りに、多くの人質を解放するという提案について協議が行われてきたということです。

ただイスラエル側は燃料の輸送を許可する前に人質全員の解放を求めているほか、ハマスが燃料を軍事目的に流用する可能性があると懸念しているということです。

このためイスラエル側はエジプトから燃料をガザ地区に搬入することを承認せず、交渉がつまずいたと伝えています。

ガラント国防相 海軍基地で激励

イスラエルのガラント国防相はガザ地区に近いイスラエルのアシュドッドにある海軍基地を訪れ、「まもなく始まる作戦に備えを続けよ。我々は次の段階への準備が完全に出来ている。作戦は陸海空の多面的な作戦になる。君たちが必要だ」と激励しました。

ガラント国防相をめぐっては、このところ地上侵攻の開始時期などをめぐってネタニヤフ首相との不協和音がメディアで報じられていて、イスラエル首相府は23日、国防省と連名で2人の不和を否定する異例の声明を発表しました。

声明は「首相と国防相と参謀総長は明確な目標のもと互いに完全な信頼関係で結ばれている」としたうえで、「メディアは軍と我々の一体性を損なうような誤った報道を控え責任ある態度を示すべきだ」としてイスラエル政府内の意見の相違をめぐる報道に神経をとがらせています。

《ガザ地区の現状》

ガザ地区へ支援物資が搬入 3日連続

OCHA=国連人道問題調整事務所の発表によりますと、23日、水や食料、それに医薬品などの物資を積んだトラック20台がガザ地区に入ったということです。

支援物資には燃料は含まれず、パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関では、今後2日以内に燃料が尽き、水や食料の供給、医療にも影響が出るおそれがあるとしています。

支援物資が搬入されたのは3日連続で、人道状況の改善に向けて今後も継続的に行えるかが焦点です。

ガザ地区では、イスラエル軍の空爆により推定でおよそ140万人が家を追われ、このうちおよそ58万人が国連が指定した150の緊急避難所に避難しているということです。

避難所1か所あたりの平均の避難者の数はすでに収容基準の2.5倍以上に達し、支援関係者から過密状態だと報告されているということです。

ガザ地区 医療状況は悪化

双方の緊張が高まるなかパレスチナの保健省は、23日、一連の衝突が始まってからの深刻な医療状況の悪化を発表しました。

それによりますとガザ地区とヨルダン川西岸では、あわせて54人の医療関係者が死亡したほか、50台の救急車が攻撃をうけおよそ半数が使えなくなったということです。

またガザ地区では35か所の病院のうち10か所が空爆や燃料不足で機能停止に陥っているということです。

中には外科手術が麻酔無しで行われたり、携帯電話の明かりを頼りに行われたりしている例もあるとしていて人道状況の悪化に歯止めがかからない状態が続いています。

「寝る布団もない状態」

NHKのスタッフが23日南部ラファで取材した国連が運営する学校には、およそ3500人が避難していて35ある教室だけでは避難者を受け入れることができず、校庭にテントを張ったり階段の踊り場にマットレスをしいたりして過ごしている人もいます。

校庭では1日1人あたり1枚だけ配給されるパンを運ぶ子どもや水をペットボトルにくんでいる子どもたちの姿も見られました。

学校に避難している女性は「イスラエル軍はすべてを破壊していて、もうどこにも安全な場所はありません。ここに避難したあとも寝る布団もない状態です」と窮状を訴えていました。

《外交関連の動き》

仏大統領 人質の家族らと面会 ネタニヤフ首相と共同会見へ

フランスのマクロン大統領は、24日朝、イスラエルの空港に到着し、イスラム組織ハマスにとらえられている人質の家族らと面会しました。

そして、イスラエルのヘルツォグ大統領と会談し、冒頭、マクロン大統領は「まずはフランスとして支援と連帯を示したい。私たちが最初に目指すべきなのはすべての人質の解放だ」と強調しました。

このあとネタニヤフ首相と会談を行い、現地時間の午後1時ごろ、日本時間の午後7時ごろから、ネタニヤフ首相とそろって共同会見を行う予定です。

フランス大統領府によりますと、今回の訪問でマクロン大統領は、イスラエルに対して連帯を示し、自衛権を支持する一方で、ガザ地区の支援や人質の解放のために人道目的の一時的な停戦の必要性を訴えるということです。

また、フランスのメディアは、マクロン大統領はヨルダン川西岸地区を訪れ、パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長とも会談する予定だと伝えています。

マクロン大統領「イスラエルには自国を守る正当な権利がある」

イスラエルを訪問したフランスのマクロン大統領は24日、ネタニヤフ首相と記者会見を行い、「イスラエルは自国を守る正当な権利がある」と述べ、イスラム組織ハマスに対する軍事作戦を支持しました。

一方で、「テロとの戦いで容赦はしないが、ルールはある。我々は国際法を順守し、人道支援を保障する民主主義国家だ」と述べ、ガザ地区での人道状況の改善のため、イスラエルや周辺国と協力していく考えを示しました。

また、紛争の火種が地域全体に広がってはならないとしてイランや、イスラエル軍との散発的な戦闘を続けているイスラム教シーア派組織のヒズボラを強くけん制しました。

これに対しネタニヤフ首相は、「ハマスは西欧諸国と文明にとっての試金石だ。もしハマスが勝利することがあれば、ヨーロッパも危険にさらされる」と訴えました。

EU 人道支援のための一時的な停戦を協議

EU=ヨーロッパ連合は23日、外相会議を開き、ガザ地区で人道支援を行うための一時的な停戦について協議しました。

会議のあとの記者会見でEUの外相にあたるボレル上級代表は「人道支援を届けるためには敵対的な行為が中断されなければならない。各国外相はその必要性を理解していると思う」と述べた上で、今月26日と27日に開かれる首脳会議でも協議が行われるとの見通しを示しました。

人道支援のための停戦は、国連のグテーレス事務総長がイスラエルとイスラム組織ハマスの双方に呼びかけています。

EU各国はハマスから大規模攻撃を受けたイスラエルに自衛する権利があるとする一方、ガザ地区の人道状況が悪化するなかで、民間人への人道支援の重要性も訴えるようになっています。

“イスラエルに米海兵隊の幹部派遣”米複数メディア

アメリカの複数のメディアは23日、バイデン政権がイスラエル軍の指導部に対し、ガザ地区での作戦について助言するため、アメリカ海兵隊の幹部を派遣したと報じました。

このうち、ニュースサイト、アクシオスは、アメリカとイスラエルの政府当局者の話として、イラクで過激派組織IS=イスラミックステートに対する作戦を指揮したアメリカ海兵隊のグリン中将などを派遣したと報じました。

グリン氏らは、イスラエル軍が準備を進めるガザ地区への地上侵攻をはじめとする作戦計画について助言していると伝えています。

ただ、指示はしていないとしています。

また、関係者の話としてもし、地上侵攻が始まれば、グリン氏がイスラエルにとどまって作戦に関わることはないと報じています。

一方、アメリカ国防総省のライダー報道官は23日、記者団に対し、オースティン国防長官がイスラエルのガラント国防相と頻繁に連絡を取り合っているとした上で、「イスラエルの作戦はイスラエルが決めることだ」とするとともに「オースティン長官はガラント国防相に対し作戦を進める上での民間人の保護の重要性を伝えている」と強調しました。

上川外相 “国連 緊急特別会合は重要 積極的に対応”

上川外務大臣は閣議の後の記者会見で26日に国連総会で緊急特別会合が開かれることについて「世界各国が集まって開催される今回の会合は重要なものだ。事態の沈静化につながるものとなるよう、わが国としても積極的に対応していく」と述べました。

またハマスが23日、2人の人質を解放したと発表したことには「イスラエル軍の発表などによると、依然多くの方が人質とされている。日本としても改めて人質の即時解放を求めていく」と述べました。

一方、日本がガザ地区の一般市民に対して行う総額1000万ドル規模の緊急人道支援について、▽700万ドルはUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関を通じて、▽300万ドルはICRC=赤十字国際委員会を通じて、食料や水、医療などの分野で実施すると説明しました。

中国 王毅外相 地上侵攻準備のイスラエル側をけん制

中国の王毅外相は23日、イスラエルのコーヘン外相、パレスチナ暫定自治政府のマリキ外相と相次いで電話で会談しました。

このうち、イスラエルのコーヘン外相との電話会談で、王毅外相は「衝突により多数の民間人に死傷者が出ていることに心を痛めている。各国はみな自衛権を持っているが国際人道法を順守し、民間人の安全を守るべきだ」と述べ、地上侵攻を準備するイスラエル側をけん制しました。

また、パレスチナ暫定自治政府のマリキ外相との電話会談では「即時停戦と紛争の終結を求める。国連安全保障理事会はその責任を負うべきであり、国際社会は早急に行動しなければならない。特に大国は客観性と公平性を守り、危機的な事態の鎮静化に建設的な役割を果たすべきだ」と述べ、名指しは避けながらも、戦闘の一時的な停止などを求める安保理での決議案に拒否権を行使したアメリカを批判しました。

中国はイスラエル・パレスチナ情勢でアメリカとは異なる立場を強調することで、中東での存在感を高めるねらいもあるとみられます。

バイデン大統領がネタニヤフ首相と電話会談 2人の人質解放を歓迎

アメリカ・ホワイトハウスは23日、バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談したと発表しました。

それによりますとバイデン大統領はイスラム組織ハマスに拘束されていた2人の人質が新たに解放されたことを歓迎した上で、残りの人質全員の解放と、ガザ地区にいるアメリカ国民の安全な移動に向けた取り組みへの関与を再確認したということです。

また深刻な人道危機に陥っているガザ地区に、緊急に必要な人道支援を継続的に提供する必要性を強調したとしています。

さらにバイデン大統領はネタニヤフ首相に対し、イスラエルに対する支援や、アメリカ軍の新たな展開を含む地域の抑止力を高めるための取り組みについて説明したということです。

国連 緊急特別会合を26日に開催へ

イスラエル軍とハマスの大規模な軍事衝突をめぐって国連の安全保障理事会では今月18日、人道支援のための戦闘の一時的な停止などを求める決議案の採決が行われ、12か国が賛成しましたが、常任理事国のアメリカが拒否権を行使して否決されました。

アメリカは決議案にイスラエルの自衛権が言及されていないことなどを理由としてあげ、アメリカのイスラエル擁護の姿勢が浮き彫りになりました。

これを受けてヨルダンなどアラブ諸国が国連総会の緊急特別会合を開くよう要請し、ニューヨークの国連本部で26日午前から、日本時間の26日夜から開催されることが決まりました。

緊急特別会合は193すべての国連加盟国が参加できるため、多くの国が意見を表明する見通しです。

アラブ諸国としては地上侵攻への準備を進めるイスラエルに対して圧力をかける狙いがあるものとみられます。

国連総会の緊急特別会合はロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて去年からたびたび開催されましたが、パレスチナ情勢をめぐって緊急特別会合が開かれるのは2018年以来、およそ5年ぶりです。

露ラブロフ外相とイラン大統領が会談 アメリカをけん制

ロシアのラブロフ外相は23日、イランの首都テヘランで開かれた会議の出席にあわせてライシ大統領と会談しました。

イラン大統領府によりますと、会談ではイスラエル・パレスチナ情勢についても意見が交わされ、ライシ大統領は「ガザで起きていることは無防備で罪のない女性や子どもたちに対するひどい犯罪だ。これは欧米の国々による直接的な支援によって行われている」と述べ、イスラエルを支持するアメリカなどを非難しました。

一方、会談の後、記者会見を行ったラブロフ外相は「アメリカは空母や兵士をこの地域に派遣するなど最前線で介入しようとしている。紛争が拡大する危険性が高まる」と述べ、中東でのアメリカ軍の動きを批判しました。

ロシアとイランはともに激しく対立するアメリカへの対抗軸として最近、関係を強化していて、イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫化する中、アメリカへのけん制も強めています。

英スナク首相 病院の爆発 “ガザから発射の物体の可能性高い”

今月17日にガザ地区北部の病院で発生し、多くの犠牲者が出た爆発について、イギリスのスナク首相は23日、議会で情報機関や兵器の専門家による分析結果として「ガザ地区内からイスラエルに向けて発射された物体、またはその一部によってもたらされた可能性が高い」という見方を明らかにしました。

爆発をめぐって、これまでイスラエル側は関与を否定し、ハマスとは別の武装組織「イスラム聖戦」が発射したロケット弾によるものだと主張しているほか、アメリカやカナダもこれを支持する分析結果を発表しています。

一方、ハマスのほか、エジプト、ヨルダン、サウジアラビアなどのアラブ諸国はイスラエルによる攻撃だとして非難していました。

スナク首相は「物事がとても繊細なときは、使うことばに特に注意し、事実のみに基づいて行動する責任がある。この事件についての誤報は地域に悪影響を及ぼした」と述べ、発生当初の報道でハマス側の主張が大きく取り上げられたことを批判しました。

またスナク首相は、ガザ地区の民間人に水、食料、医薬品、それに燃料を届けるため、2000万ポンド、日本円でおよそ36億6000万円の追加支援を発表しました。