IAEA 原発処理水 放出後初調査前に継続的な検証に取り組む考え

東京電力福島第一原子力発電所でたまる処理水の海洋放出をめぐって、計画の安全性を検証しているIAEA=国際原子力機関は、放出の開始後初めてとなる調査を24日から行うのを前に会見し、継続的な検証に取り組む考えを改めて示しました。

福島第一原子力発電所でたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐって、IAEAは、去年から各国の専門家でつくる調査団を派遣し、安全性の検証を続けています。

ことし8月に放出が始まって以降初めてとなる調査を24日から始めるのを前に23日、リディ・エブラール次長などが東京で記者会見を開きました。

この中で、エブラール次長は、今回の調査の目的について、「継続的な安全性の検証には段階にあわせた情報の更新が重要だ。実際に放出が始まってからのデータも得られているので、それらをもとに独立した客観性ある評価を行い安全で透明性のある計画の実行を担保していく」と述べました。

また、これまでに完了した2回の放出の状況については、IAEAで独自に得ているモニタリング結果も踏まえて、「得られている数字はいずれも問題なく基準を下回っている」と述べ、問題は起きていないという認識を示しました。

一方、今も中国が放出に反発していることについては、「中国政府とはコミュニケーションを継続している」と述べるにとどまりました。

IAEAの処理水検証とは

IAEA=国際原子力機関による処理水の放出計画の検証は、おととし、安全性などに懸念を示す周辺国の理解を得ようと日本政府が実施を要請し実現しました。

IAEAは、中国や韓国といった周辺国やアメリカなど11か国の専門家が参加する調査団を作り、去年からことしにかけ合わせて5回来日して安全性を確保するための取り組みを検証してきました。

具体的には経済産業省や原子力規制委員会、東京電力への聞き取りのほか、福島第一原発の視察や、各国の研究機関に持ち帰った処理水の分析などを通じて取り組み状況を確認し、ことし7月、日本の放出計画について「国際的な安全基準に合致している」とする包括的な報告書を公表しています。

IAEAは、処理水の海洋放出が30年程度の長期間に渡ることを踏まえ、放出が始まったあとについても「中立的で独立した、客観的な安全性の評価を続けていく」としていて、福島第一原発に専門家を駐在させているほか、調査団を派遣するなどして検証を継続するとしています。