クマによる人的被害 統計開始以降最多に 今年度17道府県160人

日本各地で相次いで報告されているクマによる被害。22日は岐阜県や山形県でけが人が出ました。

クマに襲われてけがをするなど、被害にあった人の数をNHKがまとめたところ、今年度はこれまでに17の道府県で少なくとも160人にのぼり、国が統計を取り始めて以降、最も多かった3年前の158人を上回る被害となっていることがわかりました。

例年、クマが冬眠に入る12月ごろにかけて各地で被害が相次いでいることから、国や自治体などが対策の徹底を呼びかけています。

環境省によりますと、ことし4月から先月までにクマによる被害にあった人の数は合わせて109人に上っています。

その後、10月に入ってからの被害について、NHKが各地域局の取材をもとに集計したところ、被害にあった人は少なくとも51人で、環境省の9月までの集計とあわせると17の道府県で160人に上っています。

これは、環境省が統計を取り始めて以降、最も多い158人の被害が出た3年前・2020年度の1年間を上回り、過去最悪の被害となっています。

このうち、今月19日には岩手県で、70代の夫婦がクマに襲われて妻が死亡するなど、これまでに5人が亡くなっています。

道府県別では
▽秋田が最も多い52人で全体のおよそ3分の1を占めているほか、
▽岩手が38人、
▽福島が13人、
▽青森で11人と東北地方で被害が多くなっています。

このほか
▽長野で10人、
▽新潟で7人、
▽山形で5人、
▽岐阜で5人、
▽北海道で4人、
▽富山で4人、
▽群馬で3人、
▽宮城で2人、
▽石川で2人、
▽福井で1人、
▽三重で1人、
▽京都で1人、
▽島根で1人と、各地で被害が広がっています。

例年、クマが冬眠に入る12月ごろにかけて各地で被害が相次いでいることから国や自治体、専門家が被害を防ぐ対策の徹底を呼びかけています。

専門家「人里と隣り合った地域に暮らすクマも増えているか」

クマの生態に詳しい石川県立大学の大井徹特任教授は過去最悪の被害が出ていることについて、「もともと、餌となるドングリなどの不作の影響によってクマの出没や被害が多くなる年があるものの、近年はクマの生息範囲が広がっているほか、生息数自体も増えているという見方もある。狩猟をする人が減り、人里では耕作放棄地も増えてクマが生活しやすい環境に変わってきているうえ、山を下りて人里と隣り合った地域に暮らすクマも増えているとみられ、被害の増加を深刻に受け止めるべきだ」と指摘しています。

そのうえで、大井特任教授は、例年、クマが冬眠に入るまでの12月に入るころまでは被害が相次ぐ傾向があるとして、「クマの出没や被害が出ている地域を中心に、特に人とクマの活動が重なる早朝と夕方から夜間にかけての時間帯には警戒してほしい。栗や柿の実などクマを寄せつけるものは早めに取り除くことが必要で、自力で作業が難しいお年寄りなどには自治体の支援も必要だ」と述べています。

岐阜 飛騨 80代男性がクマに襲われけが ドクターヘリで搬送

クマによる人的被害は22日も各地で起きています。

22日正午前、岐阜県飛騨市神岡町船津でクマに襲われてけがをした人がいると近所の人から消防に通報がありました。

飛騨市によりますと、襲われたのは市内に住む80代の男性で、頭や足にけがをして富山県内の病院にドクターヘリで搬送されたということです。

警察や消防が駆けつけたところ、すでにクマはその場からいなくなっていたということです。

男性が襲われた現場の近くには小学校があり、飛騨市は23日からこの小学校の通学路を現場付近をう回する形で一部変更するほか、鈴などの鳴り物を持たせるよう保護者に呼びかけるということです。

男性がクマに襲われた現場近くにある飛騨市立神岡小学校の北平明美教頭は「あすはたくさんの児童が現場を通るので、保護者には可能なかぎり送っていただくとか、別の道にう回して登校するようにと連絡しています。今後も様子をみていきたい」と話していました。

警察や市は周辺をパトロールするとともに、無線などで住民に注意を呼びかけています。

山形 大石田町 キノコ採りの80代男性襲われ顔にけが

被害は山形県でも起きました。

22日午後3時ごろ、大石田町鷹巣の林で近くに住む80代の男性がクマに襲われてけがをしたと、この男性の家族から消防に通報がありました。

警察によりますと、男性は1人でキノコ採りをしていたところ、体長およそ1メートルのクマに突然襲われ、顔をひっかかれたということで、クマは男性を襲ったあと、逃げていったということです。

男性は病院に運ばれて治療を受けていますが、意識はあり、命に別状はないということです。

現場はJR北大石田駅から西におよそ1.3キロの林で、警察は周辺をパトロールするとともに、住民に注意を呼びかけています。

富山市でクマの目撃や痕跡の情報相次ぐ

富山市ではクマの目撃や痕跡の情報が相次いで寄せられています。

富山市によりますと、21日午前6時ごろ、富山市日俣にある藤ノ木中学校の近くで、「おとなのクマを目撃した」という通報があったほか、その4時間後には、中学校から南に300メートルほど離れた畑でクマのものとみられる足跡が見つかったということです。

また、22日午前10時ごろにも近くに住む人から、「柿の実が食べられた痕跡がある」という通報がありました。

通報を受けて、警察や市の職員などが警戒にあたっていますが、これまでのところクマは見つかっていないということです。

近くに住む男性は「きのうクマが出たと聞いて、家の柿の実を急いで収穫しました。30年以上住んでいますが、このあたりでクマが出るのは初めてです」と話していました。