【解説】ガザ地区に支援物資入るも 人道状況は? 地上侵攻は?

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突でガザ地区が深刻な人道危機に陥る中、エジプトとの境界の検問所が21日、開放され、人道支援物資を載せたトラックが入りました。

支援物資が困窮する住民に滞りなく届けられ、人道状況の改善につながるのか、イスラエルの地上侵攻に影響はあるのか、エルサレム支局の田村佑輔支局長の解説です。

Q. 物資搬入になぜ時間がかかったのか?

イスラエル側がガザ地区に運び込まれる物資についてかなり警戒していたため実現するまでに時間がかかりました。

バイデン大統領の訪問時に食料や医薬品については搬入を認める姿勢を示していました。

ただ、ガソリンなど燃料の搬入についてはハマス側に渡り、ロケット弾の発射に使われるのではと懸念を示していました。

このため積み荷の検査方法などを巡って調整が続いていたとされています。

今回の積み荷に燃料が含まれているかはまだ分かりませんが、今後の焦点のひとつになります。

また、イスラエル軍による空爆で検問所付近の道路が被害を受けていて、道路の復旧を進めていたのも搬入が遅れる一因となりました。

Q. 人道状況はこの先 改善するのか?

一時的なしのぎにはなるかもしれませんが、人道状況の改善にはほど遠いと思います。

国連は人道危機を食い止めるためには「トラックを1日100台まで増やす必要がある」としています。

ガザ地区ではイスラエル軍の完全な封鎖により飲み水、食料、医薬品とあらゆる生活必需品が足りない状況です。

ラファでは20日夜も激しい空爆が行われたという情報があり、今後も安全に、そして継続して人道支援物資の搬入を行うことができるのか注視していく必要があると思います。

Q. イスラエルの地上侵攻に影響は?

イスラエル側としては、ガザ地区の人道状況に配慮する姿勢をアピールしつつも着々と地上侵攻の準備を進めています。

20日夜はアメリカ人の人質2人が解放されましたが、その後、21日朝にかけてはハマスによるロケット弾の発射とイスラエル軍による空爆は依然として激しく続いています。

人質の解放に向けた動きや人道支援物資の搬入開始で国際社会からは地上侵攻を一時的に踏みとどまらせることを期待する声も聞かれます。

ただ、一部のイスラエルメディアは政府高官の話しとして「人質の交換は地上作戦の計画には影響しない」と報じていて、人質解放と地上侵攻は別物だとしています。

イスラエル側としてはあくまでも地上侵攻の構えを崩さず、そのタイミングをはかっているものとみられます。