ガザ地区に支援物資載せたトラック入る 人道状況 改善は不透明

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突でガザ地区が深刻な人道危機に陥る中、エジプトとの境界の検問所が開放され、人道支援物資を載せたトラックが入りました。

支援物資が困窮する住民に滞りなく届けられ、人道状況の改善につながるかが焦点です。

日本時間の午後4時半ごろ トラックがガザ地区に入る

アメリカやエジプトの複数のメディアは、現地時間の21日午前10時半ごろ、日本時間の午後4時半ごろ、ガザ地区とエジプトとの境界にあるラファ検問所が開放され、人道支援物資を載せたトラックがガザ地区に入ったと伝えました。

ガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所の映像では、エジプト国旗をつけたトラックが検問所にとまっている様子が確認できました。

そして、日本時間の午後5時前に荷物を積んだ白いトラックがエジプト側からガザ地区側へと入っていく様子が確認されました。

また、検問所の周辺では、エジプト側から来たトラックから荷物をおろして、ガザ側から来たトラックの荷台にフォークリフトで積み替えている様子が確認できました。

次の物資到着のめどは立たず

ガザ地区ではイスラエル軍による激しい空爆が続く中、住民の生活に必要な水や食料などが不足し人道状況が日々悪化していて、アメリカのバイデン大統領は18日、エジプトのシシ大統領との電話会談後、ラファ検問所から人道支援物資を積んだトラック20台をガザ地区に入れることで合意したと発表していました。

人道支援物資の搬入が伝えられたあと、ハマスが実効支配するガザ地区の当局は声明を発表し、「限られた数のトラックではガザ地区の人道危機は変えられない」と主張し、不足している燃料を含むすべての必要な物資の持ち込みを可能にするよう要求しています。

ただ、イスラエル政府の高官はNHKの取材に対して、燃料の持ち込みを認めればハマス側に渡ってロケット弾の発射などに利用されるおそれがあると懸念を示しています。

ガザ地区の人口は220万人に上り、今回の人道支援物資がどれだけの人々に行き渡り、危機的な状況を改善できるかは不透明なうえ、次の人道支援物資が到着するめども現時点では立っていません。

イスラエル軍は大規模な地上戦の準備進める

一方、イスラエル軍は21日、前日の夜から朝にかけて、ガザ地区でハマスの作戦本部や対戦車ミサイルの発射装置など多数の拠点を空爆したと明らかにし、大規模な地上作戦に向けた準備を進めています。

こうした中、ハマスは20日、人質としていたアメリカ国籍を持つ母親と娘の2人を解放し、ハマスの政治部門のメンバーは中東のアルジャジーラテレビのインタビューに対し、「イスラエル軍が攻撃をやめれば民間人を解放する用意がある」と主張しました。

イスラエルの地元メディアは、欧米諸国からイスラエル政府に対して、人質解放に向けた動きを妨げないため、地上侵攻を遅らせるよう求める声があがっていると伝えています。

今月7日からの一連の衝突ではイスラエル側で少なくとも1400人が死亡し、外国人を含むおよそ200人が人質にとられている一方、ガザ地区では少なくとも4385人が死亡し、双方の死者は5700人を超えています。

ラファ検問所 支援物資搬入はなぜ遅れた?

ガザ地区は北と東側をイスラエルに囲まれていますが、南部のラファ検問所はエジプトとの境界線にあります。

ハマスによる大規模な襲撃後、イスラエルはガザ地区を完全に封鎖し、水や燃料、食料などの供給を止めているため、ラファ検問所が物資の搬入が可能な唯一の出入り口となっています。

こうした中、アメリカのバイデン大統領は18日、エジプトのシシ大統領との電話会談後、ラファ検問所から人道支援物資を積んだトラック20台をガザ地区に入れることで合意したと発表しました。

ただ、この際、「トラックを通すためには道路にあいた穴などを補修する必要がある」と述べ、支援物資の通過はイスラエル軍の空爆による検問所周辺の被害を修復したあとになるだろうという見通しを示していました。

その後、ラファ検問所付近では20日、重機をつかって道路を整備する様子も映像で確認されましたが、この日もトラックが通過することはありませんでした。

こうした中、エジプト外務省の報道官は「検問所を4回も攻撃し、物資の搬入を拒んでいるのはイスラエルだ」と批判しました。

イスラエル軍はガザ地区とエジプトとの境界線を厳重に管理していて、これまでも境界線の地下に掘られた密輸用のトンネルを空爆で破壊するなど、武器などの持ち込みを徹底的に阻止してきました。

今回もトラックに武器がつまれていないか検査する方法について、イスラエルとエジプトとの間で意見の隔たりがあるとする報道がありました。

また、ガソリンなど燃料の扱いも焦点になっていたとみられます。

ガザ地区では電力の供給がとだえるなか、自家用の発電機が頼りになっていて、発電機を動かすガソリンの不足が深刻になっています。

しかし、イスラエル政府の高官はNHKの取材に対して、燃料の持ち込みを認めればハマス側にわたってロケット弾の発射などに利用されるおそれがあると懸念を示していました。

また、ネタニヤフ首相も「食料と水、医薬品にかぎり、エジプトから持ち込むことを妨害しない」としていて、燃料は含まれないとする立場を示していました。

ガザ地区の住民の生活が困窮の度合いを深めるなか、人道危機への懸念が深まっています。