まずはトビの映像を撮影しようと鴨川周辺に行ってみると…
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鴨川でトビに食べ物さらわれるの なんでなん?
半年ほど前のこと。
鴨川の河川敷を鳥の唐揚げを食べながら歩いていた時でした。
最後の一口…と思ったその瞬間。
「ビュッ」という鋭い音とともに、手元にあった唐揚げが消えていました。
私の唐揚げをさらっていったのは「トビ」でした。
あのときの悔しさと悲しみを胸に、トビがなぜ食べ物をさらうのか、その謎を調べました。
(京都放送局 カメラマン 中嶋路央 大阪放送局 ディレクター 吉岡芙由紀)
目の前で被害が…
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目の前で被害者が続々と。
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「トビにシュークリームを取られました」
「パン食べていたら、『バサッ』という音とともに、持って行かれました」
「食べようと思ったら、『えっ?ない!あれ!?』って。まいりました、という感じでした」
商店街で聞いてみると
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私と同じ思いをした人たちがこれほどいたとは!
続いて訪れたのが鴨川近くの商店街。
ここで何か、ヒントを得られるでしょうか。
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(鮮魚店)
「おいしいから取られるでって言いたいんやけど」
(豆腐店)
「コロッケでもよう取られたって言わはる。おいしそうに見えるんやろうね」
皆さん、味に自信はあるようですが、謎は解けず。
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私が唐揚げを買った店でも、なぜ取られるのかを聞いてみると。
(妻)
「トビが上からこう見てんのちゃうかな?」
(夫)
「誰かが先にエサとしてな、与えたりするから、それで味をしめたんちゃうかな」
トビが増えた要因、実は…
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取材を進めていくと、心強い存在に行き着きました。
半世紀近くにわたって鴨川周辺でトビの調査を続ける、日本鳥学会の西台律子さん。
西台さんが口にしたのは意外なことばでした。
(日本鳥学会 西台律子さん)
「もともとのきっかけは、ユリカモメへの餌付けです。トビからすれば、おこぼれをもらうという感じですね」
ん!?
いきなり出てきたユリカモメ。
いったいどういう関係なのでしょうか。
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ユリカモメは渡り鳥。
西台さんによると、1980年代から90年代にかけて、冬になると、鴨川周辺には数多く飛来するようになったといいます。
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その姿をカメラに収めようと、愛鳥家や地元の人たちのあいだでは、餌付けがブームになったのです。
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しかし、2000年代に入ると、鳥インフルエンザの流行などを背景に、鴨川にやってくるユリカモメの数は減少。
一方で、増えていったのがユリカモメへのエサを目当てにやって来るトビだったというのです。
トビは、ワシなどと同じ猛きん類ですが、臆病な性格で、本来は、ほかの鳥が食べ残した魚やカエルなどを食べています。
そんなトビがエサをもらえると分かって、鴨川に多く出るようになったと西台さんは分析しています。
(日本鳥学会 西台律子さん)
「ユリカモメにエサをあげようとエサを持ってきてもいない。じゃあ、せっかく持ってきたものはほかの鳥にあげましょうということで、トビにエサをあげる人もいた。トビは猛きん類ですけど、プライドがないのでね(笑)。人が持ってるお弁当とかパンとか、そういうものも取っていくようになった」
鴨川周辺の環境も影響?
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エサだけでなく、鴨川周辺の環境を指摘する専門家もいます。
日本野鳥の会京都支部の船瀬茂信さんです。
船瀬さんが案内してくれたのは、京都市内の植物園。
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すると、木の上にトビの巣のあとが見つかりました。
船瀬さんによると、トビは山間部で繁殖活動を行い、街中にも姿を見せていましたが、ここ数年は街中でも繁殖を行うようになりました。
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案内してくれた植物園のほかにも、京都御苑や下鴨神社などでも、トビの巣が相次いで発見されているというのです。
船瀬さんは、子育てのために多くのエサを必要としていたトビが、人間から食べ物を取るようになったのではないかと指摘します。
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(日本野鳥の会 京都支部 船瀬茂信さん)
「子育ての条件として、本来の生息している場所と同じような環境がこの辺りにたまたまあったということになります。ひなが育つまでは、必死になってエサ取りをして、子育てをするので、自分で食べる量の何倍かのエサを確保せなあかん。どうしても足らない部分はやっぱり人間から奪うという行動に出てしまう」
“映え”に気を取られていると
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ユリカモメへの餌付けや繁殖に適した京都市内の環境が、トビによる「被害」が増えている理由と考えられますが、実は人間の側にも要因があるといいます。
それがSNS。
“映える写真”を撮るために、腕を伸ばして食べ物などを撮影するこうした行為。
実はトビにとっては格好のターゲットなのだそうです。
(日本鳥学会 西台律子さん)
「じっと食べ物を持つっていうのは、トビにエサをあげてるのと一緒ですから。手を前や上に伸ばしている人もいますから、トビからすると、それと間違えますよね。食べ物をこうじっとするのはダメですね」
鴨川の夏の風物詩 「納涼床」では
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しかし、取材の途中、新たな疑問にぶつかりました。
鴨川といえば、京都の夏の風物詩「納涼床」。
川べりに床を組み、食事や酒を楽しむ場所ですが、川のすぐそばで食事をしていれば、被害が多いのではないか、と思いきや、お店の方に聞くと…
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(飲食店マネージャー)
「鴨川沿いには、飲食店がもちろん多いので、そういう被害はあってもおかしくないのかなと思うんですけれども、一切聞いたことがないですね」
このお店のマネージャーはプライベートではトビに食べ物をさらわれたことがあるようですが、お店では被害の報告はないそうです。
この謎を解き明かしてもらうために、日本野鳥の会の船瀬さんに話を聞くと、納涼床には被害が出にくい要素があるといいます。
ポイント1
人が向かい合って食べていること。
トビは警戒心が強く人の目を気にするため、向かい合って食べている納涼床は狙いにくいそう。
ポイント2
屋根や柵・壁があるとトビは小回りが効かないため、屋根や柵・壁があると、近づきにくいそう。
屋根がないところでは、傘をさすことなども対策として有効だそうです。
唐揚げをさらわれた経験から始まったトビを巡る謎解き。
その悔しさは簡単には忘れられませんが、人間の側にも要因があると聞くと、トビとうまく付き合っていくためのポイントも見えてきました。
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