双方の死者5100人超 ガザへの人道支援物資いまだ届かず

イスラエル政府はネタニヤフ首相とアメリカのバイデン大統領との会談を受けて、ガザ地区への水や食料の搬入を条件付きで認める考えを示しました。イスラエル軍による空爆が続き、人道状況が悪化する中、支援物資が滞りなく住民のもとに届けられるかが焦点です。

パレスチナのガザ地区をめぐる情勢です。

※19日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

目次

《イスラエル・パレスチナの動き》

ガザ地区で複数回の空爆 いまだ支援物資搬入されず

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突でガザ地区の人道危機が深まり、境界を接するエジプトからの支援物資の搬入が焦点となるなか、検問所のあるラファでは18日もイスラエル軍による空爆が行われ、物資の搬入は予断を許さない情勢が続いています。

10月7日以降の一連の衝突では、イスラエル側で少なくとも1400人が死亡した一方、ガザ地区では少なくとも3785人が死亡し、双方の死者は5100人を超えています。

ガザ地区では、イスラエル軍による封鎖で水や食料が不足するなど人道危機が深まる中、アメリカのバイデン大統領は18日、人道支援のためトラック20台をガザ地区に通過させることで、エジプトのシシ大統領と合意したと明らかにしています。

また、イスラエルのネタニヤフ首相は、人道支援物資について、「食料と水、医薬品に限りエジプトから運び込むことを妨害しない」としていますが、ハマスの手に物資が渡ることは阻止するとしています。

エジプトとの境界にあるラファ検問所には、トラックによる長い列ができています。

この検問所はガザ地区の南部で、人、物資ともに行き来ができる唯一の場所ですが、現在は原則、通行できなくなっています。

これまでのところ、ガザ地区に到着したトラックは確認されておらず、最終的な調整が続いているとみられます。

一方、ガザ地区では18日から19日にかけても空爆が続き、検問所のあるラファに避難しているNHKの現地スタッフによりますと、複数回にわたる空爆でラファで数十人が死亡したということです。

イスラエル軍の報道官は、ラファでの空爆について、ハマスとは別の武装組織の軍事部門の幹部を戦闘機による空爆で殺害したと明らかにしています。

イスラエル軍による大規模な地上侵攻の可能性も高まる中、人道状況の改善に向けた物資の搬入は予断を許さない情勢が続いています。

イスラエル軍 “人質は203人”

イスラエル軍の報道官は19日、これまでにガザ地区でイスラム組織ハマスにとらわれていることが確認された人質は、203人にのぼると発表しました。

その上で、ガザ地区からイスラエル側に越境した武装勢力の捜索について、「作戦はまだ終わっておらず、ガザ周辺の地域で依然として現場を捜索している」とした上で、18日、武装勢力の1人を拘束し尋問を行っていると明らかにしました。

また、隣国レバノンからイスラエル側にロケット弾などによる攻撃を続けているイスラム教シーア派組織、ヒズボラについては、「ヒズボラがイスラエルを攻撃するたびに、われわれは重大な反応を示すだろう」と述べました。

イスラエル首相府 「戦争管理内閣」の映像公開

イスラエル首相府は、ネタニヤフ首相が18日、「戦争管理内閣」のメンバーとテルアビブにある軍の施設で安全保障情勢を話し合っている様子だとする写真と動画を発表しました。

写真ではネタニヤフ首相が、テーブルの真ん中に置かれたモザイクがかけられた地図のようなものを指さしています。

また動画では、内閣のメンバーが話し合っている様子が写っていますが、音声は消されています。

大規模な地上侵攻の可能性が高まるなか、会議の映像を公開することで、イスラム組織ハマスに圧力をかけるねらいがあるものとみられます。

WHO事務局長 “支援物資に多くの命がかかっている”

ガザ地区での人道状況が深刻化する中、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は18日、「医療物資が届くのを待っている間、人々の命が失われている。WHOの物資は、4日間、境界で滞っている」と自身のSNSに投稿し、危機感を訴えました。

さらに、イスラエル政府が18日、ネタニヤフ首相とアメリカのバイデン大統領との会談を受けて、ガザ地区にエジプトから人道支援物資が入ることを条件付きで認めると発表したことについて、「エジプトを経由してガザ地区に食料や水、医療物資を届けるというアメリカとイスラエルの合意を歓迎する。多くの命がかかっている」と述べ、今後、物資の搬入が進むことへの期待を示しました。

エジプト政府 ガザ地区からの住民受け入れは否定的

エジプト政府は境界を接するガザ地区に人道支援物資を運び入れる準備ができているとする一方で、ガザ地区からの住民を受け入れない考えを示しています。

その理由についてエジプト政府としては、住民がパレスチナの地を離れることはパレスチナ問題を風化させるほか、自国の治安悪化にもつながると説明しています。

エジプトのシシ大統領は、18日、ガザ地区の住民の受け入れは、イスラエルと敵対する武装勢力の流入につながると主張した上で「いま行われているイスラエルとの戦いが、エジプトから行われるようになってしまう」と述べ、エジプトとイスラエルとの衝突に発展するおそれがあると指摘しました。

また「イスラエルは戦闘が終わるまでガザの住民の避難が必要と主張するのであれば、イスラエルのネゲブ砂漠に住民を避難させればいい」として、攻撃を行っているイスラエルみずからが対応すべきだと主張しました。

エジプト政府としては国内ではすでに内戦が続くシリアやスーダンなどから多くの人を受け入れていて、ガザ地区からの住民の受け入れは財政的な負担につながることも背景にあるとみられます。

WHO「ガザ地区 26の医療機関が被害」

イスラエル軍による空爆でガザ地区での人道状況が深刻化する中、WHO=世界保健機関はこれまでにガザ地区の26の医療機関が被害を受けたと明らかにしました。

こうした中、UNFPA=国連人口基金はガザ地区では5万人の女性が現在妊娠中で、そのうちの5500人が来月出産を予定しているものの、安全な出産をするための環境が整っていないとしています。

UNICEF=国連児童基金もすでに数百人の子どもが死亡し、30万人以上が家を追われているとして民間人や病院などをねらった攻撃の中止を求めました。

一方、イスラエル政府はガザ地区に隣国エジプトから人道支援物資が入ることを条件付きで認めると18日、発表していて、エジプトからガザ地区への物資の搬入が滞りなく進み、住民のもとに届けられるかが焦点となっています。

双方の死者は4800人超に

今月7日以降の一連の衝突でイスラエル側では少なくとも1400人が死亡した一方、ガザ地区では少なくとも3400人が死亡し、双方の死者は4800人を超えています。

ガザ地区では18日もイスラエル軍による激しい空爆が続き、さらにガザ地区の保健当局は、地区内で子ども600人を含む1300人ががれきに閉じ込められて行方不明になっているとしています。

また、ガザ地区北部の病院で17日に起きた爆発についてガザ地区の保健当局はこれまでに471人の死亡が確認されたとしています。

これについてハマス側はイスラエル軍の攻撃による被害だと主張していますが、イスラエル側はガザ地区にいるハマスとは別の武装組織が発射したロケット弾が落下したものだと主張し、互いを非難し合っています。

ハマス イスラエル側の主張に反論 「病院攻撃は戦争犯罪」

多くの犠牲者を出したガザ地区の病院の爆発をめぐり、ハマス側はイスラエル軍の攻撃による被害だと主張していますが、イスラエル側は上空からの映像やレーダーシステムの記録などを分析した結果、ガザ地区にいるハマスとは別の武装組織「イスラム聖戦」が発射したロケット弾が落下したものだと主張しています。

これに対してハマスは18日、イスラエル側の主張に反論する新たな声明を出しました。

この中でハマスは
▽イスラエル軍が攻撃を行う前の警告として病院に向けて砲弾を放ち、あらかじめ避難するよう求めていたこと
▽爆発の瞬間を記録した映像から、炎と爆発音の特徴がこれまでに行われたイスラエルの攻撃によるものと一致するなどとして、イスラエルが意図的に病院を攻撃したと改めて主張しています。

ハマスは声明で「占領軍は病院への攻撃という犯罪の責任から逃れようとしている。病院への意図的な攻撃はICC=国際刑事裁判所の規程で定められている戦争犯罪だ。このような行為は、世界の良心に衝撃を与える」としてICCに対して、戦争犯罪としての調査を開始するよう求めると主張しています。

一連の衝突で19人のジャーナリストが死亡

イスラム組織ハマスとイスラエル軍との一連の衝突では今月7日以降、これまでに少なくとも19人のジャーナリストが死亡しています。これはニューヨークに本部があり、報道の自由を守る活動をしている国際的なNPO「CPJ=ジャーナリスト保護委員会」が18日、発表しました。

それによりますと19人のうち15人がパレスチナ人、3人がイスラエル人、1人がレバノン人で、ガザ地区の地元メディアのジャーナリストや、レバノン南部の国境付近で取材中だったロイター通信のカメラマンなどが含まれるということです。また、8人のジャーナリストが負傷し、3人が行方不明、または拘束されたという報告を受けているということです。

CPJはこのほかにもジャーナリストの被害について多くの情報があり、調査を進めているとして「ジャーナリストは危機の時に重要な仕事をしている民間人であり、標的になるようなことはあってはならない。この悲痛な紛争を取材するために大きな犠牲を払っていて、すべての当事者は彼らの安全を確保するための措置を講じる必要がある」と訴えています。

イスラエル ガザ地区に支援物資 条件付きで認める声明

イスラエル政府は18日、ネタニヤフ首相とアメリカのバイデン大統領との会談を受けて、ガザ地区に隣国エジプトから人道支援物資が入ることを条件付きで認めるとする声明を発表しました。

声明では「ガザ地区南部にいる民間人のために、食料と水、それに医薬品に限りエジプトから運び込むことを妨害しない」としたうえで、ハマスの手に物資が渡ることは阻止するとしています。

また、バイデン大統領は帰国途中の機内で記者団に対し、エジプトのシシ大統領が電話会談の中で、ガザ地区との境界にある検問所から人道支援のためにトラック20台を通過させることで合意したと明らかにしました。

ガザ地区ではイスラエル軍による空爆が続き、これまでにおよそ100万人の住民が家を追われていて、人道状況が悪化しています。

イスラエルとエジプトが合意したとされるなか、エジプトからガザ地区への物資の搬入が滞りなく進み、住民のもとに届けられるかが焦点です。

《各国の反応》

上川外相 “オーストラリアと連携して対応”

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり、上川外務大臣は19日、オーストラリアのウォン外相と電話で会談しました。

この中で、上川大臣は、「ハマスなどのパレスチナ武装勢力によるテロ攻撃で犠牲となったオーストラリア国民とその遺族に哀悼の意を表す」と伝えました。

その上で、両外相は、ガザ地区の人道状況を改善することが重要だという認識で一致するとともに、自国民の安全確保のため連携して対応していくことを確認しました。

英 スナク首相 イスラエル到着

イスラエルによるガザ地区への地上侵攻の可能性が高まるなか、イギリスのスナク首相が19日、イスラエルに到着しました。

スナク首相は到着後、記者団に対し、「イスラエルの人々は言い表せないほどの恐ろしいテロ行為に苦しんでいる。イギリスは共にあることを知ってもらいたい」と述べました。

スナク首相はネタニヤフ首相と戦闘の拡大防止などに向けて話し合うとしています。

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突を受けて、G7=主要7か国の首脳がイスラエルを訪れるのは、17日のドイツ・ショルツ首相、18日のアメリカ・バイデン大統領に続いて3人目です。

英 スナク首相 イスラエルへの支持表明

スナク首相は19日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談しました。

ハマスによる大規模な攻撃以降、G7=主要7か国の首脳が現地を訪れるのはドイツとアメリカに続いて3か国目です。

イギリス政府によりますと、会談のなかでスナク首相は、イスラエルの自衛権を支持する一方で、ガザ地区への継続的な人道支援の重要性を強調したということです。

会談後の共同会見でネタニヤフ首相は「今はイスラエルと世界にとって最も苦しい時期だ。長い戦争になるが、勝利のために各国の連帯と継続的な支援が必要だ」と述べました。

スナク首相は「イスラエルによる人質の奪還や長期的に安全を強化することを支持する。ガザ地区への人道支援も増やしなるべく早く届くようにしたい」と述べました。

イスラエルとガザ地区には、イギリス国籍を持つ人が合わせて5万から6万人いるということです。

スナク首相は、子どもを人質にとられたという女性と抱擁している写真とともに「人質の解放を実現する決意だ」とSNSに投稿しました。

スナク首相は、このあとサウジアラビアなどを訪れるほかクレバリー外相もエジプトを訪問していて、イギリスは、戦闘の拡大を防ぐため周辺国への働きかけを強めるとしています。

シリア駐留の米軍基地に無人機攻撃

中東シリアの情報を集めているシリア人権監視団によりますと、19日、シリア北東部に駐留しているアメリカ軍などの基地に対して、無人機による攻撃があったということです。

アメリカ軍は過激派組織IS=イスラミックステートへの対応のために現地に駐留していますが、今のところ人的被害は確認されていないということです。

どこからの攻撃かは明らかになっていません。

シリアでは、イランの精鋭部隊・革命防衛隊と関係の深い組織などが、アメリカ軍の施設を標的としてたびたび攻撃を行っています。

日本在住のパレスチナ人 “ガザの家族は…”

パレスチナ出身で京都市に住む女性は、ガザ地区に住む親戚の安否がわからず心配だと話したうえで、一刻も早い停戦の実現に向け、日本をはじめ国際社会の行動を訴えました。

パレスチナ出身のジュマーナ・カリルさん(31)は、9年前に来日し、現在は京都大学で免疫学を研究しています。

イスラエル軍による空爆が続くガザ地区には、おじとその家族が住んでいるということです。

1週間前に連絡を取った時には、おじは住む場所を失ったおよそ80人を自宅で受け入れていることや、水や電力などのライフラインが止まり、不自由な生活を強いられていることを話していたということです。

しかし、これを最後におじとは連絡がとれなくなっていて、カリルさんは、「今も生きているのか、これから生き残れるのかも分からない」とことばをつまらせながら話していました。

また、カリルさんの両親が暮らすヨルダン川西岸地区でもイスラエル側とパレスチナ住民の衝突が激しくなっていてカリルさんの父親は通勤の途中、身の危険を感じると話しているということです。

イスラエルがガザ地区への地上侵攻の可能性を示唆していることについて、カリルさんは「地上侵攻が始まれば、もっとおそろしい光景を目にすることになってしまう。これ以上の痛ましい死はもうやめてほしい」と話し、一刻も早い停戦の実現に向けて、日本を含む国際社会が行動するよう訴えました。

米連邦議会の建物内で停戦求めるデモ 逮捕者も

アラブ諸国など中東各地でイスラエルやアメリカに対する抗議デモが相次ぐ中、アメリカの連邦議会の建物で18日、抗議デモが行われ、逮捕者も出ました。

アメリカメディアによりますと、18日、数百人のデモ隊が首都ワシントンのアメリカ連邦議会の建物内に侵入し、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦を求め、抗議デモを行いました。

デモに参加した人たちは横断幕を掲げながら、「いますぐ停戦を」などと訴えていました。

連邦議会の警備にあたる議会警察は、建物内でのデモは認められていないとしていて、アメリカメディアによりますと参加者、およそ300人が逮捕されたということです。

また、デモは連邦議会議事堂の周辺でも行われ、参加者たちは停戦や平和を訴えるメッセージが書かれたプラカードを掲げて抗議をし、周辺の道路が一時、閉鎖されました。

英 スナク首相 19日にイスラエル訪問へ

イスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘が続く中、イギリス政府はスナク首相がイスラエルを19日訪問し、ネタニヤフ首相と戦闘の拡大防止などに向けて会談することを明らかにしました。

イスラエルとガザ地区にはイギリス国籍を持つ人が合わせて5万から6万人います。

イギリスのスナク首相は20日にかけてイスラエルや周辺国を訪れ、戦闘の拡大防止やガザ地区への人道支援の早期実現に向けて話し合うとしています。

スナク首相は声明で、大勢の民間人が犠牲になったガザ地区の病院の爆発について「世界中の指導者が戦闘の拡大を防ぐため、結束する分岐点にするべきだ」と強調しました。

G7=主要7か国の首脳がイスラエルを訪れるのは17日のドイツ・ショルツ首相、18日のアメリカ・バイデン大統領に続いて3人目です。

また、イギリス政府はクレバリー外相も18日からエジプトとトルコとカタールを相次いで訪れ、事態の解決に向けて各国の指導者と協議するとしています。

国連安保理 人道支援の戦闘一時停止など 米の拒否権で否決

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐり、国連安全保障理事会では人道支援のための戦闘の一時的な停止などを求める決議案の採決が行われ、15か国のうち日本を含む12か国が賛成しましたが、アメリカが拒否権を行使して否決されました。

アメリカは、イスラエルの自衛権に言及がないなどと主張しましたが、各国からは遺憾の意が表明されました。

イスラエルとハマスの衝突をめぐっては、国連安保理に議長国のブラジルが▽ハマスによる攻撃や誘拐を非難し人質の解放を求める一方で
▽人道支援のための戦闘の一時的な停止や
▽イスラエルがガザ地区北部の住民に出した退避通告を撤回するよう求める決議案を、提出していました。

採決は18日午前、日本時間の18日夜行われ、理事国15か国のうち
▽日本やフランスなど12か国が賛成し
▽ロシアとイギリスが棄権しましたが
▽常任理事国のアメリカが拒否権を行使し、決議案は否決されました。

アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「決議案にはイスラエルの自衛権が言及されておらず失望している」と述べた上で、バイデン大統領によるイスラエル訪問などの外交努力の成果を待つべきだと主張しました。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は「われわれはアメリカの偽善とダブルスタンダードを目の当たりにした。アメリカは解決策を見つけることを望んでいなかった」と述べ、アメリカを強く非難しました。

このほか各国からも、決議案が否決されたことに相次いで遺憾の意が表明されました。安保理でアメリカが拒否権を行使したのはおよそ3年ぶりで、アメリカのイスラエルを擁護する姿勢が改めて浮き彫りになりました。

国連安保理 ガザ地区で起きた病院爆発も協議

国連安保理では、決議案の採決に続いて、ガザ地区の病院で起きた爆発をめぐって、対応を協議する緊急会合が開かれました。

各国からは、病院への攻撃を非難するとともに、客観的な調査を求める意見が相次ぎ、このうち日本の石兼国連大使は「罪のない人たちが犠牲になったことに強い憤りを感じる。いかなる理由でも病院や市民に対する攻撃は正当化できない」と非難した上で、ガザ地区に人道支援物資を届けなければならないと訴えました。

一方、ロシアのネベンジャ国連大使は「アメリカは人道的で道義的な義務である決断ができなかった」と述べたほか、中国の張軍国連大使は「差し迫った人道危機を前に、安保理が沈黙する理由も決定を遅らせる口実もない」と述べ、戦闘の一時的な停止などを求める決議案に拒否権を行使したアメリカを非難しました。

これに対してアメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「アメリカは一般市民の死傷者を最小限に抑えるため、イスラエルや地域の国々、そして国連などと引き続き協力していく」と強調しました。

岸田首相 サウジアラビア皇太子と電話会談 テロへの憤り伝える

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり、岸田総理大臣は18日夜、サウジアラビアのムハンマド皇太子と電話で会談し、ガザ地区の病院への攻撃に対する強い憤りを伝え、人道状況の改善や事態の沈静化に向けて協力していくことを確認しました。

この中で岸田総理大臣は、イスラエル・パレスチナ情勢への深刻な懸念とともに、ハマスなどのパレスチナ武装勢力による「テロ攻撃」を断固として非難する日本の立場を示しました。

そして、多くの犠牲者が出たガザ地区の病院への攻撃に対する強い憤りを伝えるとともに、日本としてガザ地区の市民に総額1000万ドル規模の緊急人道支援を実施する方針を示し、連携を呼びかけました。

これに対しムハンマド皇太子からは、現地情勢への深刻な懸念を共有する立場が示され、両者はガザ地区の人道状況の改善や事態の沈静化に向けて協力していくことを確認しました。

また岸田総理大臣は、ヨルダンのアブドラ国王やカタールのタミム首長、UAE=アラブ首長国連邦のムハンマド大統領とも相次いで電話で会談し、同様に協力を申し合わせました。

このうちヨルダンのアブドラ国王との会談では、岸田総理大臣がイスラエルからの日本人の出国支援をめぐり、ヨルダンが自衛隊機の派遣を受け入れたことに深い感謝の意を伝えたのに対し、アブドラ国王は引き続き協力する考えを示しました。

イラン大統領「アメリカはイスラエルの共犯者」

ガザ地区の病院での爆発を受け、イランでは18日、首都テヘラン中心部の広場に大勢の市民が集まってイスラエルに抗議するとともに、ライシ大統領が演説しました。

この中で、ライシ大統領は爆発についてイスラエルによる攻撃だと改めて主張し「誰がこんな恐ろしい犯罪を受け入れられるだろうか」と強く非難しました。その上で各国に対し「イスラエルとの関係を断ち、その大使を追放するとともに大使館を閉鎖することを期待する」と述べ、国交のある国にイスラエルと断交するよう呼びかけました。さらに、イスラエルへの連帯を示し、軍事支援を行うアメリカに対しては「世界の人々があなたたちをイスラエルの共犯者だとみなしており、その憎しみを目の当たりにするだろう」と警告しました。

イスラム協力機構「残忍な軍事侵攻」 イスラエル非難

イスラム圏の国や地域でつくるOIC=イスラム協力機構は、本部のあるサウジアラビア西部のジッダで18日、緊急の外相級会合を開き、ガザ地区の情勢などについて意見を交わしたあと、共同声明を出しました。

OICには中東やアフリカ、それにアジアなどのイスラム圏の57の国や地域が加盟していて、声明ではハマスの大規模な攻撃に対するイスラエルの報復作戦を「残忍な軍事侵攻」と位置づけて強く非難した上で、直ちに中止するよう求めています。

また、ガザ地区の病院での爆発についても「あからさまにイスラエル軍がねらったもので、国際人道法に違反する戦争犯罪であり、強く非難する」とした上で、国際社会に対し、イスラエルに責任を取らせるよう呼びかけています。

さらに国連の安全保障理事会について「イスラエルの戦争犯罪をとめるための決断をし責任を果たす能力がなく、失敗している」として、遺憾の意を表しています。

一方で、ハマスについては言及していません。

一連の衝突が始まった当初は、OICの加盟国の中でも、イスラエルとハマスの双方に自制を求める国が多くありましたが、多くの犠牲者を出したガザ地区の病院の爆発を受けてイスラム圏で反イスラエル感情が高まる中、イスラエルを非難する形でまとまったものとみられます。