パ・リーグCS オリックスがロッテに逆転勝利 山本由伸5失点も

プロ野球はクライマックスシリーズのファイナルステージが18日から始まり、パ・リーグはリーグ3連覇のオリックスがロッテに8対5で勝ち、初戦を取りました。
オリックスのエース、山本由伸投手が5失点を喫しながらもチームは逆転勝ちしました。

オリックス 逆転でロッテに先勝

パ・リーグのクライマックスシリーズのファイナルステージは、18日から京セラドーム大阪で始まり、リーグ3連覇のオリックスとファーストステージ第3戦で逆転サヨナラ勝ちしてファイナルステージに勝ち上がったレギュラーシーズン2位のロッテが対戦しました。

オリックスは最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振の先発投手の4つの主要タイトルを3年連続で獲得した絶対的エースの山本由伸投手が先発しました。

しかし立ち上がりに1アウト二塁三塁のピンチでリーグホームラン王のロッテの4番・ポランコ選手に2点タイムリーを打たれ、このあともう1点失って3点を先制されました。

追う打線は4回、2アウト一塁二塁のチャンスで7番の紅林弘太郎選手のタイムリーで2点を返し、続く宗佑磨選手もタイムリーヒットを打ち同点に追いつきました。

宗佑磨選手がタイムリー

6回には再びロッテに1点を勝ち越されましたが、そのウラ、オリックスは杉本裕太郎選手や紅林選手のこの試合2本目のタイムリーなどで一挙4点を奪い勝ち越しました。

オリックスは山本投手が、7回116球を投げヒット10本を浴び5失点と本来のピッチングはできなかったものの、打線が援護して8対5で勝ち、初戦を取りました。

ファイナルステージは、リーグ優勝のチームに1勝のアドバンテージが与えられ先に4勝したほうが日本シリーズに進みます。

オリックスは1勝のアドバンテージを含めて対戦成績を2勝0敗としました。

ロッテは、打線が山本投手から得点を重ねたものの先発したベテランの美馬学投手が4回で3失点と粘れず、リリーフ陣も失点し初戦を落としました。

第2戦の予告先発(19日)

▽オリックス:田嶋大樹投手
▽ロッテ:メルセデス投手

《オリックス 監督・選手》

中嶋監督「しんどい試合でした」

オリックスの中嶋聡監督は18日夜の試合について、開口一番「しんどい試合でした」と振り返りました。

山本由伸投手が1回に3点を失ったことについては「この3点はかなり重かった。由伸も苦しんでいたのかなと思う」とエースをかばいました。

また、同点に追いついた4回を振り返って「一気に3点差を追いついたので、これは行けるかなと思った」と話し、試合のポイントになったことを明かしました。

19日以降に向けては「もっと楽な試合をしたい」と淡々と話していました。

山本由伸「野手が逆転してくれたことには感謝」

オリックスの山本由伸投手は「体の調子はよかったのに、1回はボール球が多く苦労した。調子を戻せるように試行錯誤をしながらの投球だった。ゲームを作り直していこうと必死に投げていたが、最後まで修正することができなかった。その中で、野手が逆転してくれたことには感謝しかない」とみずからのピッチングを振り返るとともに感謝の気持ちを表していました。

紅林弘太郎「追い込まれてからも食らいついた」

2本のタイムリーを含む2安打3打点と活躍したオリックスの紅林弘太郎選手は「珍しく由伸さんがあんな感じだったので、いつも助けてもらっている分、僕たち野手が助けないといけないと思った。追い込まれてからも食らいついていった結果のタイムリーだと思う」と話していました。

宗佑磨「打球見失いどこに飛んだか分からなかった」

4回に同点に追いつくタイムリーを打った宗佑磨選手は「打った瞬間に打球を見失い、どこに飛んだか分からなかったが、歓声でいい感じなんじゃないかと走り出した」と話していました。

杉本裕太郎「手応えはいい感じだった」

1点を勝ち越された6回に再び同点に追いつくタイムリーを打った杉本裕太郎選手は、「手応えはいい感じだったし、セデーニョがナイスランだった。とても大きい声援が聞こえているのであしたもお願いします」と話していました。

若月健矢「あしたからも精いっぱい頑張る」

8回にリードを広げるタイムリーを打った若月健矢選手は「打った瞬間はホームランだと思った。3点取られてもしっかりと跳ね返せるオリックス打線はすばらしいと思う。あしたからも精いっぱい頑張ります」と話していました。

《ロッテ 監督・選手談話》

吉井監督「次も打てるように対策を練っていきたい」

ロッテの吉井理人監督は、オリックスの山本由伸投手からヒット10本、5点を奪った打線について「きょうはみんないろいろ工夫してしっかり山本投手を攻略してくれたと思う」と振り返りました。

そのうえで、4点を奪われて逆転された6回の継投について、「右バッターではあるが対戦成績で左ピッチャーに弱いバッターが続いていたので左の中村稔弥投手でいけると思った。かなり緊張していつもの球を投げられていなかったが、あの場面は選択したこちらのミスだ」と話しました。

そのうえで、あすの試合に向けて「ピッチャーが違うのでどうなるか分からないが、次も打てるように対策を練っていきたい」と意気込んでいました。

ポランコ「アグレッシブに振りに行った」

オリックス先発の山本由伸投手から先制の2点タイムリーツーベースを含む3打点の活躍だったポランコ選手は「いい投手でどんどんストライクゾーンに投げ込んでくると思ったのでアグレッシブに振りに行った。それがチームのためになったことはうれしい」と話していました。

そのうえで、「アドバンテージを含めて2敗という状況になったがこのチームのみんなを信じてやっている。明日は勝つことだけを目的に球場に来ようと思う」と敗戦にも前を向いていました。

【解説】オリックス“エースを助けたい”

不動のエースが打ち込まれながらも逆転勝ちしたオリックスから見えたのは“エースを助けたい”というチームの一体感でした。

オリックスは、最多勝や最優秀防御率など、先発投手の主なタイトル4冠を3年連続で成し遂げた山本由伸投手に支えられてきました。さらに今シーズンはロッテと好相性で、9月の前回の登板ではノーヒットノーランを達成するなど、防御率0.64、3勝1敗と抑えていました。ところが、この試合は、1回にヒット5本を打たれていきなり3失点するなど、7回を投げて5点を奪われました。1試合での失点は今シーズン最多でした。

中嶋聡監督も「1回の3点はかなり重かった」と振り返るほど苦しい展開となっていました。

ここで、エースを助けたいと奮起したのが打線でした。4回、紅林弘太郎選手と宗佑磨選手の連続タイムリーヒットで一気に3点を取って同点に追いつきました。

紅林選手は「シーズン中はいつも助けてもらっていた。ここは野手全員で助けなきゃと思った」と話せば、宗選手は「由伸が粘り強く投げていたので、何とか同点に追いつけてよかった」と振り返りました。

この回について中嶋監督も「早いうちに1点でもいいから返したいと思っていたら追いついてくれた。これは行けるかなと思った」と試合のポイントになったことを明かしました。

オリックスがシーズンの終盤から掲げているスローガンは「全員で勝つ!」。

たとえ、絶対的なエースが崩れたとしてもほかの選手でカバーし合いながら勝利を手にしていくチームの一体感。3連覇を果たした王者の強さを示した試合でした。

【解説】ロッテ 山本由伸から5点奪うも勝利にはつながらず

ロッテは史上初めて3年連続での▽最多勝▽最優秀防御率▽最高勝率▽最多奪三振の“4冠”を達成したオリックス・山本由伸投手から5点を奪いましたが勝利にはつながりませんでした。

ロッテはシーズン中、山本投手と対戦した4試合で1勝3敗、28イニングで2点しか奪えず防御率0.64、前回の対戦ではノーヒットノーランを達成されるなどことごとく抑え込まれてきました。

これまでは早いイニングで交代させようと、できるだけ球数を投げさせるなどの対策をとりながらも功を奏することはなく、短期決戦の初戦にこれまでとは違う作戦で臨みました。

18日の試合で吉井監督は、150キロ台後半のストレートやフォークボールなど質の高い決め球を持つ山本投手に対して、狙い球を絞ったうえで早いカウントから積極的に打ちに行くことを指示しました。

この作戦どおり、1回、先頭の荻野貴司選手が2球目をピッチャー返しで内野安打にすると、その後1アウト二塁三塁とチャンスを広げて迎えた4番のポランコ選手は「まっすぐを狙っていた」と初球の158キロのストレートを右中間に運び先制の2点タイムリーツーベースに。この回、いきなり3点を奪いました。

その後も積極的なバッティングを続け、6回の荻野選手のタイムリーヒットと、7回のポランコ選手の犠牲フライは、いずれも初球をとらえたもので、山本投手から打った10安打の内、3球以内でしとめたものが実に7本に上りました。

シーズン中、5失点以上がなかった難攻不落の大エースから7イニングで5点を奪い、苦戦が予想される中で見事に攻略に成功しました。

しかし、投手陣がオリックス打線につかまって逆転負けを喫し、この「山本対策」が勝利という形で報われることはありませんでした。

村田修一打撃コーチは「山本投手のボールが荒れていたのもあったが、まさかこんな風に点がとれるとは思わなかった。策がうまくはまったと思うが、負けたら意味がないので残念だ。なんとか食い下がっていきたい」と話していました。