中国 GDP7月~9月 去年比+4.9% 景気回復 力強さ欠く状況続く

中国のことし7月から先月までのGDP=国内総生産の伸び率は、去年の同じ時期と比べてプラス4.9%となりました。伸び率は前の3か月から縮小し、不動産市場の低迷などを背景に景気の回復は力強さを欠く状況が続いています。

去年比+4.9% 景気回復 力強さ欠く状況続く

中国の国家統計局が18日発表した、ことし7月から先月までのGDPの伸び率は、物価の変動を除いた実質で、去年の同じ時期と比べてプラス4.9%となりました。

前の3か月の伸び率は、去年、新型コロナの感染対策に伴い、各地で厳しい外出制限があった反動で、プラス6.3%と高めの伸びでしたが、そこからは縮小しました。

これは
▼「ゼロコロナ」政策の終了後、初めての夏休み期間と重なり、旅行需要が高まって飲食などのサービス業は回復が続いた一方
▼不動産市場の低迷の長期化で、家具や家電などの消費が低調だったほか
▼輸出の減少も続いたためです。

中国政府は内需の拡大を目指すとともに、不動産市場の改善をはかるため、住宅ローン関連の規制を緩和するなどの対策を進めていますが、景気の回復は力強さを欠く状況が続いています。

若い世代を中心に厳しい雇用情勢が続くなど、景気の先行きに不透明感が広がる中、中国政府がことし5%前後としている経済成長率の目標の達成に向け、効果的な政策を打ち出すことができるかが焦点となりそうです。

消費や生産は堅調 不動産の投資が依然落ち込み

中国の国家統計局がGDP=国内総生産とあわせて発表した主要な経済指標では、消費や生産は堅調な一方、不動産の投資が依然として落ち込んでいることが明らかになりました。

このうち、消費の動向を示す「小売業の売上高」は、9月は去年の同じ月と比べて5.5%の増加となりました。

家電など不動産関連の項目はマイナスですが、全体としての伸び率は前の月の4.6%から拡大しました。

また、9月の「工業生産」は去年の同じ月と比べて4.5%のプラスと、前の月と同じ水準となり、伸びを維持した形となりました。

国内でのEV=電気自動車などの需要拡大を背景に、自動車の生産が増えていることなどが主な要因です。

一方、不動産関連の開発投資は、ことし1月から9月までの期間の累計で、去年の同じ時期と比べてマイナス9.1%となりました。

下落幅はことし1月から8月までの累計のマイナス8.8%から拡大していて、不動産市場の低迷が続いていることが改めて示されました。

中国の国家統計局副局長「内需もいまだ不十分」

中国経済の現状について国家統計局の盛来雲副局長は、内需拡大などに向けた政策の効果が表れているとした上で、「今後も政策が段階的に実行されるにつれ、プラスの効果はさらに大きくなる」と述べ、中国政府が5%前後とする年間の経済成長率の目標達成は可能だという見通しを示しました。

一方で、先行きについては「外部環境は複雑で、厳しさを増している。内需もいまだ不十分であり、景気回復の基盤をさらに強固にする必要がある」と述べ、今後の国内外の動向を注視したいという考えを示しました。

《専門家に聞く「中国の景気 現状と先行きは」》

中国の景気の現状と先行きについて、みずほ銀行(中国)の伊藤秀樹主任エコノミストに聞きました。

Q.中国のことし7月から9月までのGDPの伸び率は前年同期比で4.9%となったが、この数字をどう見るか?

A.前年同期比の伸びは、前期から減速しているが、前期と比べた場合の伸び率はプラス1.3%と加速している。予想よりよい内容だったという認識だ。

Q.注目したのは具体的にどのような点か?

A.モノの消費と不動産が景気の足を引っ張っていたので、このあたりを注目していた。消費については、小売りは比較的良好な数字で、旅行をはじめとしたサービス分野も堅調さを維持していた印象だが、持続性がポイントだ。雇用と所得環境がきちんと回復してきた上での消費の回復であれば、持続性が担保されるが、実質可処分所得の伸びなどを見ると、本来の伸びには戻っていない。また、不動産については、政府が対策を打ち出しているが、数字の上では、効果はきちんと表れている状況ではない。一部で改善を示すデータも出ているが、投資の改善には時間がかかるとみられ、厳しい環境が続くと思っている。

Q.景気の先行きについては、どう見ているか?

A.劇的に変わるというよりは、緩慢なペースが来年も続くとみている。消費について、まだ慎重に見る必要があることに加え、不動産も在庫を抱えている状況などを踏まえれば、消費と不動産が景気の足かせになる状況は、大きく変わらないとみている。

Q.中国政府に求められる対応は?

A.なかなか対応策は難しいところがある。7月以降、いろいろな対策を打ってきたが、追加的な財政出動を伴わないような景気対策だった。今後、景気が失速するような状況があれば、弱い分野にポイントを合わせた対策が必要で、一時的な財政出動でマインドのてこ入れをはかる必要も出てくるのではないか。

Q.中国経済の停滞が続いた場合、日本経済や世界経済への影響は?

A.中国の消費や不動産といった内需がこれまで世界経済をけん引してきた。外国から見た中国への輸出、直接投資という形で経済の循環が表れていたが、中国が停滞することで、経済循環上の流れが滞るリスクがあるのではないか。